【書評】「【新版】中国に勝つ日本の大戦略」北野幸伯
2026/10/15公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(88点)
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要約と感想レビュー
中国の反日統一共同戦線による情報戦
2012年、中国が日本に対する「反日統一共同戦線」の構築を呼びかけ、情報戦を始めたと著者は説明しています。
「反日統一共同戦線」とは、中国と同様に日本と領土問題を抱えるロシア、韓国が協力し、日本に北方領土、竹島、尖閣諸島、沖縄に関する領有権の主張を撤回させようという構想です。
著者によれば、中国はこの戦略にアメリカを引き込もうとしてきました。そのために習近平は、「中国とアメリカは共に日本軍国主義と戦った。日本は再び軍国主義を復活させている」という主張を展開しているのです。
ただし、第二次世界大戦で対日戦争を主導した中国側の政府は、蒋介石の中国国民党でした。しかし、中国共産党は「ウソも100回いえば本当になる」のが当たり前。習近平は平気で、自信をもって、堂々とウソを主張しているのです。
2013年に大統領となった韓国の朴槿恵氏は、日本への批判を海外で繰り返し、「告げ口外交」と呼ばれました。著者は、これも中国の反日統一共同戦線戦略に沿ったものと説明しています。
同じ頃、アメリカ、カナダ、オーストラリア、欧州では、慰安婦問題への関心が高まっていました。著者は、これらの動きも「反日統一共同戦線戦略」の一環と分析しているです。
「統一戦線工作部」・・年間予算120億ドルということは、1ドル150円換算で1兆8000億円。中国は、こんな大金をプロパガンダに投じているのです(p44)
アメリカの没落と中国の台頭
毛沢東と周恩来の戦略は、「中国は超大国にならない」「平和的に発展する」というもので、アメリカを油断させ、アメリカから金と技術をもらい、経済発展を実現しました。
1989年の天安門事件で米中関係は悪化しましたが、中国はアメリカ国内の経済界や親中派が金儲けができるようにして、「親中派グループ」を組織し、反中政策を転換させたとしています。
ヘンリー・キッシンジャーは、「キッシンジャー回想録 中国」の中で、「太平洋共同体」を提唱しています。「太平洋共同体」とは、要するにアメリカと中国で世界を支配するということです。
つまり、アメリカは中国のウソを見抜けず、結果的に中国を大国へと成長させてしまったのです。
さらに、習近平が2013年に提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立では、同盟国がアメリカのいうことを聞かず、AIIBへ参加しました。実は、AIIBに参加しなかった先進国は日本だけだったのです。
アメリカの影響力が低下する一方、中国の国際的な存在感が高まっていることが明確になったのです。
2005年8月、ロシアと中国は、初の合同軍事演習を実施。プーチンは、中国と共に「上海協力機構」(SCO)を、「反米の砦」化する・・ロシア、中国、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシ(p135)
国際政治と情報戦に弱い日本
現代の「慰安婦問題」のように、日本は歴史的に、国際政治や情報戦に弱かったと著者は指摘しています。
例えば1930年代初め、日本と満州問題で対立していた中国は、「日本世界征服計画書」とされる「田中メモリアル」という「偽書」を全世界にばらまきました。
著者は、こうした情報戦が日本の国際的なイメージを悪化させ、その結果、日本は、国際連盟で「満洲国建国」を否定され、連盟を脱退。
1937年からの日中戦争では、中国がアメリカ、イギリス、ソ連などから支援を受け、日本は国際的に孤立していったのです。
しかし、かつて日本は、イギリスやアメリカと良好な関係にありました。では、どこで関係がおかしくなったのでしょうか。
まず、アメリカとの関係悪化の原因として著者が挙げるのが、1905年の「桂・ハリマン協定」です。満州の鉄道権益をアメリカと共有する構想でしたが、小村寿太郎の反対によって実現しませんでした。
また、日英同盟についても、第一次世界大戦中にイギリスが日本へ陸軍の派兵を求めたものの、日本は応じませんでした。その結果、イギリスは同盟国日本の冷淡さに失望し同盟解消へ向かい、イギリスを救ってくれたアメリカに接近していったのです。
ところが、現代の日本には、中国の反日統一共同戦線戦略を無力化した時期があったというのです。それが、安倍政権の外交です。
安倍首相は、アメリカとの同盟関係を強化し、ロシアとの友好関係を深め、韓国との関係改善を図りました。著者は、この外交によって中国の反日統一共同戦線戦略を無力化することに成功したと評価しています。
2012年11月15日「ロシアの声」に掲載された、「反日統一共同戦線を呼びかける中国」・・・中国の著名な専門家は、中国と同様、日本と領土問題を抱えるロシアと韓国に対し、反日統一共同戦線を組むことを呼びかけた・・・日本は南クリル諸島、トクト(竹島)、魚釣諸島(尖閣諸島)のみならず、沖縄をも要求してはならない(p8)
日本が負けないための戦略
著者は、世界の紛争にアメリカ一国では対処できなくなり、アメリカは「オフショア・バランサー」へと変化していると分析しています。
オフショア・バランサーとは、各地域の同盟国などに安全保障の役割を担わせ、アメリカは必要に応じて介入するという戦略です。
台湾・中国方面の「責任者」は日本ですが、日本が一国で中国に対抗し、台湾を守るのは不可能です。オフショア・バランサー・アメリカは、台湾・中国方面にもっとも注力せざるをえないのです。
かつて安倍首相は、対中包囲網にロシアを引き入れようとしました。ところが、ロシアのウクライナ侵攻によって、この戦略は困難になりました。
今後はロシア抜きで、アメリカ、欧州、インド、オーストラリア、韓国、東南アジア諸国との協力関係を強化する必要があるのです。
そして、将来アメリカがアジアから撤退する可能性も考えておかなければなりません。日本が取れる対策は二つあります。
一つは、自国の防衛力を強化すること。もう一つは、日米同盟を維持しながら、ほかの有力国との安全保障協力を強めることです。著者は、特にインドが重要な同盟国になると考えています。
安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」は、まさにこうした将来を見据えた構想だったのでしょう。中国に対抗するには、軍事力だけでなく、外交と情報戦によって味方を増やすことが重要なのです。安倍首相の死によって、日本が外交音痴に戻らないよう祈るのみです。
北野さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・2009年9月、鳩山内閣が誕生しました。同年12月、小沢一郎幹事長は、大使節団を率いて中国を訪問。小沢氏は、胡錦濤国家首席との会談時、「私は人民解放軍の野戦軍司令官です」といい、アメリカ政府と日本国民を仰天させました(p25)
・中国は尖閣諸島を実効支配していません。現状が不満なので、武力で現状変更する強い動機があるのです・・・ですから、日本最大の仮想敵国は中国なのです(p178)
・ソロスは、「オープン・ソサエティ財団」を所有、運営しています。この財団は、世界の多くの国々で「民主化」を支援しています。「民主化」といえば、聞こえはいいですが、独裁政権にとって「民主化」は「革命工作」と同じ意味になります(p132)
・1990年から2025年まで、35年間「増税路線」「緊縮財政路線」で「暗黒時代」がつづいてきました。ですから、正反対のことをすれば、経済成長が戻ってくるでしょう・・変わるときには「アッ」という間に変わります(p250)
▼引用は、この本からです

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北野幸伯、扶桑社、育鵬社
【私の評価】★★★★☆(88点)
目的
はじめに 日中戦争はもうはじまっている
第一章「反日統一共同戦線戦略」が生まれた背景
第二章「反日統一共同戦線戦略」を無効化させた安倍総理
第三章米中関係の真実
第四章中国に勝つ方法
第五章アマリカ、中国、ロシアの未来
おわりに 日本復活は、はじまっている!
著者経歴
北野幸伯(きたの よしのり)・・・国際関係アナリスト。1970年生まれ。ロシアの外交官とFSB(元KGB)を養成するロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業(日本人初)。ロシア・カルムイキヤ自治共和国大統領顧問、モスクワ滞在28年を経て帰国。1999年メールマガジン「RPE(ロシア政治経済ジャーナル)」を発刊。
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