【書評】「やめたいのにやめられない!「仕事のムダ」の削り方」 上妻 周太郎
2026/07/23公開 更新
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【私の評価】★★★★★(90点)
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要約と感想レビュー
いい人はうつ病になってコンサルになった
ひとり社長で年商1億円、クライアント継続率ほぼ100%という業務効率化コンサルタントによる一冊です。
職場では仕事が早く、みんなの困りごとを拾ってしまう「いい人」には、仕事が集まります。著者自身もかつてはその一人でした。ところが著者は、仕事を拾いすぎた結果、眠りが浅くなり体調が悪化。ついには、うつ病の診断を受けて仕事を投げ出してしまったのです。
「いい人」は真面目すぎるのであり、あなただけが犠牲になることはないと、著者は断言します。では「いい人」はどうすればいいのでしょうか。
著者のアドバイスは「少しだけワガママに振る舞う」ことから始めることです。仕事を振られたとき「え、本気ですか?」と少し砕けた言葉で返す。
次は、上司を使って仕事から逃げましょう。「ひとまず上司と相談させてください」と言っておき、しばらくして「上司から別の案件を優先しろと言われちゃいまして」などと返すのです。
どんどん仕事が回ってくる・・・この問題の解決方法は、「タイムリーに上司に報告する」(p38)
それでも仕事がたまってしまったら
それでも仕事が積み上がってしまったら、素直に状況を打ち明けることを著者は勧めます。
具体的には、「本当に忙しくて手が回らず、ズルズルと遅らせてしまいました」と言う。あるいは「抱えている案件がかなりあって、取り掛かりそのものが遅くなってしまうかもしれません」と、本当のことを洗いざらい伝えてしまうのです。
社運を賭けた案件でなければ、締め切りをあきらめて定時で帰ってもいい。関係者に謝れば許してくれるものだ、という著者の言葉は、辛い体験を通してのアドバイスとして説得力があります。
「いい加減」とは、ちょうど良い加減のことです。著者はムダな真面目さを手放し、良い加減を身につけることを勧めているのです。
例えば、問い合わせが多い場合は、組織内での優先順位に従って対応のスピードや丁寧さに差をつける。
締め切り後にねじ込んでくる人には、先手を打ってリマインドし、効果がなければ証拠となるやり取りを上司に見せてクレームを言ってもらう。
こうした「上手な仕事のさばき方」は、真面目な人だけでなく、多くの会社員にとって有効なものでしょう。
締め切り後でも対応してあげてしまう・・・・「誰かが無理をして頑張る」というひずみが生まれてしまいます(p47)
DXやAIよりムダな業務を削る
著者が業務効率化コンサルの現場で実感したのが、IT・DX・AIの導入による効率化は期待ほど機能しないという事実です。ムダな業務をシステム化しても、ムダな業務が固定化されるだけだからです。
ところが、わかっているけど、なくせないのがムダな業務です。この本ではいくつかの事例が紹介されています。
引き継がれる際、なぜその分析や資料を作っているかの理由は伝わらず、作業手順だけが生き残っている場合は、業務の詳細を理解し、過去の経緯を調べるしかありません。
上司が読まない長い資料が延々と作られている場合は、「サマリーページ」を作って、簡略にまとめた資料への道筋をつけます。
上司の承認待ちが滞っている場合は、「始業5分前にチャットツールでリマインドを送る」という単純な手法が効果的だといいます。
カルビーの社長に就任した松本晃氏が「年に2回、現場の意見を吸い上げ、必ず何かは廃止するというルールを設けた」という事例も紹介されており、廃止をルール化するのもよいアイデアなのでしょう。
ムダだと思える。しかし、やめられない(p6)
新しい業務プロセスを作るコツ
ムダを削った先には、新しい業務プロセスを作るという難題が待っています。特に業務システム導入前に行われるプロセス改善プロジェクトでは、現場の個別事情と全体最適が対立し、たいてい全体最適が負けると著者は言います。
その壁を乗り越える方法として著者が示すのは二つです。一つは社長が前向きだったら、社長の権限を借りて個別事情側をねじ伏せること。もう一つは、両者の事情を丁寧に聞き取り「あなたが言うんだったら、みんなにとってベストな提案なんだろうな」と各方面に思わせることです。
時間を取って事情を聴くことで、「この人は、私の話をちゃんと聞いてくれる」「私の話を理解してくれる」という信頼関係を構築することでしか乗り越えられないというのです。
IT導入を検討する前に、まずムダな業務を見極めて削る。削るには現場の人と人との信頼が必要という現実的な内容でした。
コンサルティングの現場で実証してきたものとして説得力がありました。上妻さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「あの人にしかできない業務」・・・その人が作り上げたブラックボックス業務を誰かに引き継がせる・・・あなたが必要な作業をイチから作り直す(p180)
・バックオフィス部門では、どこの会社も、月末と月初めの負荷が高くなりがちです・・・1日あたりの依頼受けつけ数を制限してしまう(p191)
・揉めそうな案件に関しては、参加者の数は必要最小限に絞って、そこで落としどころを検討するほうが得策です(p85)
・上司の「自分がやったほうが早い」という行動は、チームのメンバーからすると「我々は、信用されていないんだな」と映ります(p119)
▼引用は、この本からです

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上妻 周太郎 (著)、すばる舎
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 忙しすぎる現場担当者のためのムダの削り方
第2章 終業時間まで手が空かない管理職のための仕事のムダの削り方
第3章 ムダを生んでいる業務プロセスやルールの削り方
第4章 業務プロセスを刷新するプロジェクトでの「削る技術」
著者経歴
上妻 周太郎(こうづま しゅうたろう)・・・業務効率化コンサルタント。株式会社ホライズンブルー 代表取締役。ひとり社長ながら、設立5年目で年商1億円を達成。
兵庫県生まれ。高校時代はバスケットボール県選抜に選ばれる。現役で東京大学に合格。大学院修士課程修了後、株式会社東芝を経て、スカイライトコンサルティング株式会社へ入社。バックオフィス(経理・人事・総務など)に従事。最短でシニアマネジャー、ビジネスユニット長にも歴任。
コンサルティングの現場で、IT導入で業務改善が必ずしも成功しないことを経験。「そもそも何を削るか」を見極めることで、手間もコストもかけずに、確実な業務改善を実現。2017年に独立し、株式会社ホライズンブルーを設立。「削る技術」を軸にし、企業の課題解決を支援している。クライアントの継続率はほぼ100%。
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