【書評】「心が動くマネジメント物語」前川孝雄
2026/06/03公開 更新
Tweet
【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
若くして管理職となった人の失敗パターン
リクルートで「就職ジャーナル」「リクナビ」などの編集長を歴任し、2008年に独立。500社以上の企業で「上司力研修」を行ってきた著者が、上司の仕事のコツとやりがいを18のストーリーで解説した一冊です。
著者がストーリーという形式を選んだのは、部下の心の動きは、論理や理屈で説明しきれない部分があるからです。なぜ部下がある日突然心を開いたのか、なぜ問題社員が変わったのか。そのプロセスは、理屈では説明しきれないものがあるのです。
よくある上司の失敗は、まじめで成績優秀だったがゆえに若くして管理職になった人が、自分の成功パターンを信頼関係ができていない部下に押しつけて、抵抗されてしまうパターンです。
部下に求められるのは実務遂行のための「テクニカルスキル」ですが、管理職に求められる中核スキルは部下を育て活かす「ヒューマンスキル」です。プレイングマネジャーから部下の心を動かすマネジャーになれるのかどうかが、新任上司の壁なのです。
職責意識が高い上司ほど、「正しいやり方を教えなければ」と経験則をもとにした指導に勤しみますが、部下には一方的な押しつけやマイクロ・マネジメントに映り、心の離反を招きます(p46)
部下とのラポールの深め方
著者は若手社員に向けて「勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい」と言っています。上司から部下を飲みに誘いにくい時代だからこそ、部下から上司を誘うという「逆の発想」です。
そして上司へのアドバイスは、部下とのラポール(信頼関係)を深めるために傾聴することです。
本書の「物語6」では、上司が反発するシニア部下の文句と罵倒を3時間聴き続けるという場面が描かれます。上司はそれを否定せず、解決策を提示せず、ただ聴き続けること3時間。それだけで、年上部下が味方に変わったというこの事例は、傾聴の力を説得力を持って伝えてくれるのです。
不満をすべて吐き出させ、それを否定せずに受容することで、部下の中に「この上司は自分の感情を受け容れてくれた」という実感が生まれ、ラポールの土台が作られたのです(p75)
上司として想いを伝える
「物語18」では、飲食店の副店長が率いる落ちこぼれチームの変革が描かれています。新店舗の立ち上げという大事な局面で、メンバーのほとんどがやる気がないのです。
副店長は毎朝出店準備の前に1時間の全員ミーティングを設けます。「せっかく自分たちの思い通りに新しい店舗をつくれるんだ。皆で力を出し合っていい店をつくっていこう」と言い続けることで、スタッフが一人、また一人と変わっていくのです。
情熱と期待を言葉と行動で示し続けること。それが落ちこぼれと呼ばれたチームを一つにまとめていく。ドラマのようですが、そうした体験をできる可能性があるのが上司という役割なのです。
上司の仕事にかける情熱と一人ひとりに期待し続ける姿勢が、どれほど人を前向きに変えるかを物語っています(p188)
人の心というのはわかるようでわからない
本書を読み終えて感じるのは、上司の仕事に「これが正解」という絶対的な答えはないということです。厳しく鍛えることで育つ部下もいれば、脱落する部下もいます。手取り足取り教えることで伸びる部下もいれば、甘やかしになる場合もあります。
著者が管理職に求めるのは、自ら動くプレイングマネジャーから人の心を動かすマネジャーへの脱皮であり、部下一人ひとりに合わせてやり方を柔軟に調整できることなのです。
それは理屈ではわかっていても、実際にはどうすればいいのかが見えないという人に、本書は18のストーリーで応えています。管理職になったばかりの人も、管理職として行き詰まりを感じている人も、どれかの物語に自分の姿を重ねることができるでしょう。
前川さん、良い本をありがとうございました。
| 無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい(p25)
・自ら動くプレイングマネジャーから人の心を動かすマネジャーへ脱皮しよう(p195)
・管理職の役割を再定義する動き・・・プレイングマネジャーからプレイヤー業務を除外してマネジャー業務に専念させたり、部下の人事評価における部長の第二考課を廃止し課長の考課に一元化するなど、現場管理職の裁量権限を拡大(p195)
▼引用は、この本からです

Amazon.co.jpで詳細を見る
前川孝雄 (著)、株式会社FeelWorks
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
はじめに:管理職は職業人生の中で〝最幸〟の仕事
第1章 STEP1 上司と部下の絶対的な信頼関係を育む
第2章 STEP2 アドバイスより傾聴を徹底する
第3章 STEP3 仕事の意義や目的を理解させる
第4章 STEP4 小さなキャリアの階段を作る
第5章 STEP5 「誰かの役に立っている」実感を演出する
第6章 STEP6 業務より一人ひとりを活かす組織を完成させる
おわりに:脱!管理職は罰ゲーム。マネジメントに喜びを
著者経歴
前川 孝雄(まえかわ たかお)・・・株式会社FeelWorks代表取締役。兵庫県明石市生まれ。大阪公立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「ケイコとマナブ」「就職ジャーナル」「リクナビ」などの編集長を経て、2008年に独立し、研修事業・出版事業を営む。研修「上司力研修」「上司力鍛錬ゼミ」などで500社以上を支援。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
![]()





















コメントする