【書評】「最後の停戦論 ウクライナとロシアを躍らせた黒幕の正体」 鈴木宗男, 佐藤優
2026/07/20公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
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要約と感想レビュー
ウクライナ戦争の即時停戦を主張
参議院議員の鈴木宗男氏と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談形式の一冊です。2人はともに北方領土交渉でロシア側の窓口でしたが、外務省に告発され有罪判決を受けています。
この本は3年前に発行されており、ウクライナ戦争の展開を踏まえて二人の主張を分析してみましょう。
佐藤氏はウクライナ戦争を「民主主義国家と独裁国家の対立」として定義したうえで、即時停戦を主張しています。
停戦の理由として挙げるのは、犠牲者を一人でも減らすため、当時の軍事的な力の差からウクライナが勝利する可能性は低いという判断、そして国境線は停戦後の交渉で決めるので固執するべきではないという主張の3点です。
第一の理由の「犠牲者を減らすべき」は当然の主張ですが、第二の力の差に関する判断については、現在はロシアが勝ちきれないように見えます。
国境戦については、ロシア側からすればウクライナ西部の一部を実効支配しているのですから、即時停戦はロシア側にとって有利な主張です。「現地に暮らしている人たちがどう考えるかが重要」と、ロシア側の主張も忘れず補足しています。
朝鮮戦争が停戦に至るまでを振り返っても、1年近くの膠着状態を経ています・・・停戦に至るきっかけは、ソ連の指導者スターリンの死でした(佐藤)(p60)
鈴木宗男氏は米国の衰退と中露の台頭を予想
鈴木宗男氏はアメリカが衰退しており、中国・ロシア・韓国と折り合いをつけていかなければ、日本は生きていけないと主張しています。
また中国が数年以内にGDPでアメリカを抜いて世界1位になるという予測も示しています。しかし現時点では、中国経済の減速が鮮明になっており、この主張の信憑性は低くなっています。
鈴木氏の発言からは、自由の欧米よりもカネが儲かりそうなロシアや中国との関係を優先していることがわかります。その選択は人それぞれですが、私なら自由のない中露より、自由な欧米を選びます。
また、鈴木氏はプーチン大統領がウクライナ国境に約10万人の兵を集結させたとき、バイデン大統領が「ロシアが攻めてくるぞ」と警告したことについて、「攻めろ」と言っているも同然と主張しています。
普通に考えれば、アメリカがロシアの侵攻を止めるために機密情報をリークしたと理解する人が多いと思うのですが、鈴木氏はバイデン大統領が徴発したと理解しているのです。こうした不思議な判断を声高に主張するのは、政治家としての適正に疑問を持たれるのではないでしょうか。
日本の中には隣国である中国や韓国に対して敵対を煽る発言をする人がいますけれど、それで日本が生きていけるのかと言えば、無理です。折り合いをつけていくしかない(鈴木)(p86)
佐藤優氏の主張は中露の主張と同じ
この本を読んで印象的だったのは、鈴木氏がロシアや中国寄りの立場を率直に語ると、すかさず佐藤氏が歴史や軍事情報などを解説し、もっともらしい説明を補足していくことです。
例えば、佐藤氏はウクライナ戦争でアメリカが武器だけを提供してウクライナ人に戦わせていると説明したうえで、台湾有事においてもアメリカは武器だけを日本に提供して日本人に戦わせるのではないかと問題提起します。
台湾有事は沖縄有事でもあり、沖縄県民がそれに同意するかという問いも投げかけています。その有事のとき国民を守るためにミサイル防衛を強化しているのですが、佐藤氏は「防衛力強化よりも先にやるべきことや改善すべきことがある。例えば、自衛隊の宿舎などだ」とそれらしい説明がスラスラ出てくるのです。
これらは一定の根拠を持つ説明ですが、同時にロシア・中国側の主張に寄り添っているように見えるのです。基礎知識のない読者が読めば、簡単に丸め込まれてしまうでしょう。
アメリカの力が弱くなっているがゆえに、アメリカは同盟国・・・ドイツと日本に対する締め付けを厳しくしています・・・シマが減った分を直参に対する上納金を増やして補填する(佐藤)(p24)
佐藤勝氏は諜報のプロ
この本で佐藤氏は、正確な情報を提供することを基本にしています。例えば、ウクライナ東部にロシア語話者が多いのに、ロシアのクリミア併合以降にウクライナ語教育が強制されてきたという指摘は事実でしょう。
また、ウクライナ南部4州をロシアが併合したのは、国際法違反で、独立国家のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国からの要請に応じて集団的自衛権を行使したという形のほうが理屈は通ったという指摘も事実なのでしょう。
このように佐藤勝元外務省職員は、基本的に正しい歴史や事実を説明して信頼を獲得しつつ、自分の目指す主張に読者を誘導しているのです。基礎知識がなければ、佐藤氏のロジックの破綻している点を指摘するのは難しいでしょう。
佐藤氏は諜報のプロなのだと思いました。ただ、鈴木宗男氏との対談では、あまりに鈴木氏の発言がひどすぎて、それを修正するので精一杯に見えました。
鈴木さん、佐藤さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ウクライナの子供たちを連れ去った・・・ウクライナ東部の住民はロシア語を使う、ロシア正教徒が多い地域です。ところが、クリミア併合の2014年以降は無理やりウクライナ後教育一本にしてしまっている(佐藤)(p106)
・バイデン大統領は経済制裁をすればロシアは2ヶ月でギブアップすると公言していました・・・それに引きずられた日本も喧嘩を売った側であり、ロシアからすれば売られた喧嘩だから、これはもう受けて立つしかない(鈴木)
・日本の対応でよくなかったのは、G7の国の中で一番最初に・・日本国内にあるプーチン大統領の個人資産を凍結させ、その後、プーチン大統領の娘ら400人の個人資産のほか、ロシア最大の金融機関ズベルバンクに対しても同様の措置を取りました(鈴木)(p81)
▼引用は、この本からです

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【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
第1章 ウクライナ戦争はどこで間違えたのか
第2章 覇権国家アメリカ、終わりの始まり
第3章 日本外交がうまくいっている奇跡
第4章 メディア戦争扇動で見えなくなるもの
第5章 ロシアを悪魔化させる情報戦争
第6章 私たちが対面したプーチン大統領の真実
第7章 私たちの「安倍晋三総理と日露」回顧録
第8章 ウクライナ戦争後の世界を生き残るには
著者経歴
鈴木宗男(すずき むねお)・・・政治家。参議院議員(日本維新の会、新党大地)。1948年北海道足寄町生まれ。拓殖大学在学中から中川一郎議員の秘書をつとめる。83年の衆院選で初当選。97年に第2次橋本内閣で国務大臣北海道・沖縄開発庁長官で初入閣、99年に自民党総務局長(小渕内閣、森内閣)。2002年6月、あっせん収賄他で逮捕。その後、05年に地域政党新党大地を結成し、同党代表に就任。09年には衆議院外務委員長。9月最高裁で上告棄却。12月収監。19年7月の参議院議員選挙で日本維新の会から出馬し当選(比例区)、9年ぶりに国政復帰。20年に参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員長に就任。22年には参議院懲罰委員会委員長に就任
佐藤優(さとう まさる)・・・作家・元外務省主任分析官。1960年東京生まれ。85年にノンキャリアの専門職員として外務省入省。在モスクワ日本大使館勤務等を経て、国際情報局分析第一課主任分析官。2002年、背任容疑で逮捕後、512日間の勾留を経て保釈。05年に執行猶予付き有罪判決を受け、その後、控訴・上告するが、09年の最高裁判所による上告棄却で判決確定、作家に転身。
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