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【書評】「ロシア・中国・北朝鮮が攻めてくる日」福山 隆, 宮本 一路

2026/04/29公開 更新
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「ロシア・中国・北朝鮮が攻めてくる日」福山 隆, 宮本 一路


【私の評価】★★★☆☆(74点)


要約と感想レビュー


日本には戦争への備えがない

インテリジェンス(諜報活動)に関わってきた陸上自衛隊幹部OB2人が、日本は戦争に即応できる備えができていないと警告する一冊です。原著は2012年に刊行され、2022年に加筆されたもので、一部の記述やデータが今の状況と乖離している点はやむを得ないところでしょう。


まず、著者が警告するのは、日本には日本を守る訓練された人員が不足していることです。日本の自衛隊は22.5万人、予備兵力3.8万人で正規軍の2割しかありません。普通の国は、正規軍のおよそ3倍の予備兵力を保持しているのにです。


さらに、日本国憲法は軍隊の存在を認めておらず、緊急事態に対応するための「非常事態宣言」に関する規定も存在しません。法的な制度が、有事を前提として設計されていないのです。


著者は徴兵制を維持し、全市民が有事に備える永世中立国スイスと比較し、日本は「備えのない平和」という、危うい状態にあると警告しているのです。


日本もスイスも平和であるという点では同じですが、スイスには、いつ戦争が起こっても即応できるだけの備えがあり、日本にはありません(p205)

日本の脅威となっている国々

日本の脅威としては、中国、北朝鮮、ロシア、イランを挙げています。


なぜ中国が一番の脅威かといえば、台湾、尖閣諸島は自国領土であるという主張を現実化させるための工作活動を続けており、ロシアのウクライナ侵攻を見て、実力行使に踏み切る可能性があるからです。


さらに見過ごせないのが、中国で2010年に制定された国防動員法です。この法律は、世界の在外中国人を有事の際に軍事的に動員することを可能にするものです。日本国内の在留中国人は2019年時点で80万人を超えており、著者たちはこの点を安全保障上の問題となるであろうと警告しています。


北朝鮮については、日本上空を越えて弾道ミサイルを飛ばし、工作員が日本に潜伏している可能性が高いという。


ロシアについては、中国が台湾に侵攻した際に、ロシアが北海道に侵攻して、アメリカに「ニ正面作戦」を強いる可能性を指摘しています。


イランについては、核開発を進めることで米国・イスラエルと対立しており、「ホルムズ海峡封鎖も辞さない」と宣言している点を、日本へのリスクを警告しています。さすがです。


第一の脅威:中国・・第二の脅威:北朝鮮・・第三の脅威:非国家主体等によるテロ・・第四の脅威:ロシア・・第五の脅威:イラン(p108)

日本の平和を守るために何が必要か

著者は警告だけではなく、具体的な対応策も提示しています。


実施可能なものから見ていくと、まず南西諸島へ自衛隊を配備します。中国軍が離島に侵攻した際、島民を人間の盾として利用するリスクを下げるための措置です。


また、現在は警察が担っている原子力発電所の警備体制も見直しが必要です。北朝鮮の特殊部隊と正面から対峙できる能力を警察に求めるのは、そもそも無理があるからです。


そして、より根本的な課題として著者たちが挙げるのが、憲法改正です。有事に政府が迅速に対応できる「国家緊急権」の明記と、「軍」としての自衛隊の法的地位の明確化が不可欠です。


さらに踏み込んだ提言として、著者たちは核武装にも言及しています。中国や北朝鮮が核で脅しをかけた場合、アメリカが日本のために核を使用するとは現実的に考えにくいのです。したがって、自国の安全を守るために非核三原則の見直し、さらには日本独自の核兵器の保有が一つの解決策であるということです。


日本の世論は、核武装に対しては強い拒否反応がある。しかし、安全保障は「転ばぬ先の杖」であるべきで・・・核武装について真剣に考えるべき時に来ているのかもしれない(p221)

アメリカの撤退と「自分の国は自分で守る」

日本にとってアメリカは、平和の絶対的な後ろ盾でした。しかし、その構図は静かに変化しつつあるのです。


アメリカにとって日本は、「防波堤」として利用できる従順な同盟国です。しかし中国の軍事力増強に対応するなかで、アメリカの防衛ラインはグアムやハワイへと後退しつつあります。これは「自分の国は自分で守る」という当たり前の原則へ、日本が回帰せざるを得ない状況を意味するのです。


著者たちがこの本で2012年から警告してきたことが、やっと現在、防衛費を増やして対応しつつあるということなのでしょう。


日本の対応が遅すぎたことにならないことを祈ります。福山さん, 宮本さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・大震災直後の2011年3月17、21日の両日にはロシア軍機が日本領空に接近、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進しました・・・航空自衛隊の対処能力を試す狙い等もあったとみられます(p162)


・(2012年)防衛予算は冷戦崩壊後、毎年ほぼ減少・・・ここ10年間の諸外国国防費との比較をすれば、ロシア8.84倍、中国3.58倍、米国2.17倍、韓国2倍、インド2.18倍、フランス1.23倍、イギリス1.57倍、ドイツ1.04倍・・・日本は0.96倍と減少しています(p88)


・2022年4月27日に自民党安全保障調査会が岸田総理に申し入れた提言では、中国を「重大な脅威」、ロシアを「現実的な脅威」、北朝鮮を「より重大かつ差し迫った脅威」と位置づけている(p101)


▼引用は、この本からです
「ロシア・中国・北朝鮮が攻めてくる日」福山 隆, 宮本 一路
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福山 隆, 宮本 一路 (著)、幻冬舎


【私の評価】★★★☆☆(74点)


目次


第1章 日本を取り巻く戦略環境
第2章 日本を襲う、6つの脅威
第3章 日本に壊滅的な影響を及ぼす4つのシナリオ
第4章 危機対処上の課題と提言
ロシア・ウクライナ出張記録


著者経歴


福山隆(ふくやま たかし)・・・1947年長崎県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊幹部候補生として入隊。1990年外務省に出向、大韓民国駐在武官として朝鮮半島情勢のインテリジェンスに関わる。1995年、連隊長として地下鉄サリン事件の除染作戦を指揮。陸将補、西部方面総監部幕僚長、陸将を歴任し、2005年退官。ハーバード大学アジアセンター上級客員研究員を経て、現在、広洋産業株式会社顧問


宮本一路(みやもと いちろ)・・・1951年熊本県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊幹部候補生として入隊。1990年外務省に出向、イラン駐在武官として湾岸戦争に関与。「伝説の駐在武官」として名を馳せる。1995年内閣情報調査室国際部ロシア班長、2003年防衛省情報本部情報官など、長く中東・ロシア情勢のインテリジェンスに関わる。2006年陸将補。2008年退官。現在は会社顧問。


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