【書評】「経営とデザインの幸せな関係」中川 淳
2026/04/28公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
クリエイティブと経営リテラシー
著者の中川淳さんが13代目社長を務める中川政七商店は、1716年に麻織物問屋として創業した、奈良の老舗雑貨店です。現在は「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、全国の職人が手がける工芸品に付加価値を加えて販売しています。
全国に直営店を展開しながら、商品の企画・製造・流通・販売までを一貫して自社で手がけ、さらに、そのノウハウを活用したコンサルティング事業でも大きな成果を上げている点がすごい!
例えば、長崎県の波佐見焼メーカー・マルヒロの支援事例では、陶磁器ブランド「HASAMI」を立ち上げ、波佐見焼ブームを生み出し、赤字企業の再建に成功しました。
また、新潟県三条市の庖丁工房タダフサでは、「基本の3本、次の1本」というコンセプトのもと、製品数を7種類に絞り込み、製品数を7つに絞り、売上を2倍に伸ばしています。
著者の中川 淳さんは多くの広告代理店がブランド作りに失敗している原因は、クリエイティブ思考に偏り、経営リテラシーが不足している点にあると指摘しています。
多くのデザイナーと企業が協業し、ものつくりやブランドつくりに取り組んできました。しかしながら、その多くは結果を出せぬまま消えていきました・・経営者に「クリエイティブリテラシー」がなく、デザイナーに「経営リテラシー」がないからだと私は考えます(p3)
マーケッティングの教科書
中川政七商店のコンサルティングは、マーケッティングの教科書のようです。
まず、ものづくりの現場を把握します。それぞれの工程で1日何個処理できるのか、どのような人が何人働いているのかを確認し、人件費もチェックします。
次に、自社のポジショニングマップを作り、ベンチマークすべき他社の成功事例を分析しています。例えば、兵庫県の大塚呉服店の支援事例では、「呉服値段がわからない」という不満に対し、メガネ業界などでは当たり前の「3プライス」の明朗会計システムを導入しました。
また、庖丁工房タダフサの支援では、「庖丁は誰が買うのだろうか?」という基本から出発し、誰が・いつ・どこで・どんなタイミングで買うのかを考え、家庭で必要な「基本の3本」というコンセプトを打ち出しています。
さらに、陶磁器ブランド「HASAMI」の事例では、「自分たちは何者か」という問いに対し、「自分たち」を「波佐見焼」に設定して、地域そのものをブランド化しています。
こうしたブランドの志やストーリーづくりは、広告代理店の得意分野といえるのでしょう。
一番に想起されるブランドになる・・・「〇〇といえば自社」というように表現すれば、どのセグメントでポジションを獲得していきたいかがとてもわかりやすくなります(p99)
商品ラインナップと中期経営計画
一方で、中川政七商店のコンサルティングでは、経営の在り方についても具体的な提案を行っています。
例えば、商品ラインナップが多すぎる場合には、売れない商品を廃番にします。経験上、おおよそ3分の2を廃版にすることが多いといいます。
新潟県三条市の庖丁工房タダフサの場合は、900種類もの庖丁の説明を受け、こんなに多いと主婦は選ぶことができないという問題意識から、「基本の3本」シリーズが生まれました。
また、新商品開発サイクルや年間スケジュールを決めたうえで、中期経営計画を作ります。実際には、年間スケジュールがないメーカーも少なくないといいます。
商品開発サイクルを定めることは、商品政策をつくっていくための商品展開ロジックも作るということです。陶磁器メーカーのマルヒロの事例では、「国×シーン」という商品ロジックを設定し、最初は「アメリカ×ダイナー」という切り口で商品を開発しました。
商品政策は積み上げが7割・・・商品は常に飽きられることとの戦いでもあるので、3割はチャレンジをする(p156)
商品開発の教科書
クリエイティブやデザインだけでなく、経営の視点が必要であることがよく理解できました。つまり、会社経営には商品企画、ブランド、デザイン、経営計画、ビジョン、品質などすべての視点が求められるということです。
特にブランド化や商品開発には一定の「型(教科書)」はありますが、やはりセンスの比率も大きいと感じました。「問題解決」「顧客の欲望」「潜在的な欲求」といった概念はありますが、その具体的な答えは無限に存在するからです。
コンサルティングとは、教えることではなく、一緒に考えることなのだとわかりました。中川さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ロゴやロゴマークなどブランドの根幹であるグラフィックデザインに関しては、外部のデザイナーにお願いすることを強くおすすめします(p134)
・リサーチ・・・例えば手帳を作ろうと考えたときは100円ショップからラグジュアリーブランドに至るまで、世の中で売られれている手帳を幅広く全般的に調べます(p159)
・イベントを開催したほうがいいのか、商品の利用法を説明する動画をつくってYouTubeにアップするほうがいいのか、それは商材やそのターゲットによって全然違います(p238)
・インサイト(=まだ言語化されていない潜在的な欲求)を見つけるもう1つ有効なやり方は、「文句を言っている人を見つける」ことです(嶋 浩一郎)(p256)
▼引用は、この本からです

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中川 淳 (著)、日経BP
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
1 会社を診断する
2 ブランドをつくる
3 商品をつくる
4 コミュニケーションを設計する
5 対談(嶋 浩一郎(博報堂ケトル 代表取締役社長)× 中川 淳)
著者経歴
中川 淳(なかがわ じゅん)・・・ 中川政七商店 十三代。1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、2000年富士通株式会社入社。2002年に株式会社中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長に就任。「日本の工芸を元気にする! 」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業を開始。初クライアントである長崎波佐見町の陶磁器メーカー有限会社マルヒロでは、新ブランド「HASAMI」を立ち上げ大ヒットとなる。2015年には、独自性のある戦略により高い収益性を維持している企業を表彰する「ポーター賞」を受賞。
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