【書評】「尖閣を奪え! 中国の海軍戦略をあばく」福山 隆
2019/09/04公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
尖閣諸島への中国進出
元陸上自衛隊の情報将校が、海洋進出を進める中国の軍事戦略を2013年に推定したものです。面白いのは、中国海軍トップが習近平国家主席に報告するであろう形式で書かれてあることです。
2013年は、前年の2012年の尖閣国有化で中国デモによる日本企業施設の破壊、日本製品の不買運動、尖閣諸島へ中国公船が領海侵犯を開始しました。
この本では、中国の工作員が石原都知事と民主党政権をうまく誘導して、尖閣諸島への中国進出のきっかけを作ったものと推定しています。
2012年4月、当時の石原都知事が「東京都は尖閣諸島を買うことにした」と宣言したことに端を発し・・我が中国は日本を揺さぶる口実を得ました・・日本では、政治家も、外交官も、「軍人」も、メディアも、そして国民も、性善説でしか世界を観望できない。安全保障という観点からは、ダチョウよりも劣った国家・国民です(p186)
中国の南シナ海進出
すごいと思ったのは2013年の時点で、中国の南シナ海進出と他国を借金漬けにして海軍拠点の取得を進めることなどを予測している点です。
中国にとって食料、エネルギーの輸送路である南シナ海とマラッカ海峡は生命線です。アメリカと覇権戦争となればアメリカはマラッカ海峡、南シナ海を封鎖するかもしれない。海上封鎖を打破するためにも海軍の拠点の増強が必要であり、中国は当時から準備していたということです。
米帝とオーストラリアは、中国と軍事的に対決する際には、オーストラリアを軍事拠点として、マラッカ海峡、スンダ海峡およびロンボク海峡を米軍の支配下に置こうとする作戦を展開することでしょう(p127)
中国の南シナ海進出
最後に著者が予想しているのが、中国の「核ドミノ戦略」です。
つまり、北朝鮮や韓国を利用して日本が核武装しなくてはならない状況をつくり出し、日本を核武装「賛成派」と「反対派」に分裂させるとともに、メディアを使って反米政権を成立させ、最終的に日米同盟を分断するというもの。
北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルは完成しそうですので、十分ありえるシナリオです。中国の工作はうまくいくのでしょうか。
福山さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・輸入する石油のおよそ90%は、いわば中国の「大動脈」を梗塞させうるチョークポイントとして有名なマラッカ海峡と南シナ海を経由しています。食料はもとより液化天然ガス、鉄鉱石なども輸入の大半は海上輸送路からです(p24)
・マハンは、海軍の任務として、1 本国と植民地をつなぐ海路において、制海権を確保・維持し商船の往来を安全にすることと、2 植民地(市場)に対し、砲艦外交を主体として自国の権益を守るために"にらみを利かせる"こと、が重要な任務だと考えていました(p36)
・中国海軍の近海防衛戦略の目的は、「渤海、黄海、東シナ海、そして南シナ海とそれらに存在する島嶼をコントロール下に置く」ことで、海軍建設の目標はその能力を備えることです(p59)
・ココ諸島は・・大小二つのココ島からなるミャンマーの領土。中国は1994年にミャンマーとの間で租借契約を締結。以来、いずれの島についても実効支配を続けてきており、ロシア製の強力な偵察レーダーと、電波傍受施設を配備している(p122)
・日米が分断されれば、米帝はオーストラリアに頼らざるを得ません。中国としては、JASBC(統合エアシー・バトル)の負の側面・・「巻き込まれ論」や日本の焦土化など・・を朝日新聞などの左翼メディアを活用して、メディア戦・心理戦を行う方針です(p170)
・琉球政府には、平和・友好・宥和的なアプローチを採用し、日琉分断工作を推進する・・5月8日付人民日報紙で「歴史的に未解決の琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を掲載したばかりです(p191)
・我々中国の視点から見れば、今日の沖縄はある意味で日本の植民地であると評価できます。沖縄を日本から分離独立させ、中国の影響下に組み込むうえで、"沖縄は日本の植民地"というコピーは大きな力を持つのです(p43)
・外交戦の目標は、「日米同盟の分断」と「(中国の主導権下の)中日友好」です。日米分断のためには、日本の政治・世論を反米に、米国の政治・世論を反日に誘導することがポイントです。このための外交戦の 道具は歴史問題と北朝鮮問題でしょう(p101)
・釣魚島処理・・・その第一歩として、日本の法律の網目を潜って、先島地区(宮古・石垣・西表島)の土地を買収し、特殊部隊を偽装させて旅行者や水産・農業研修の目的で潜入させ、各種工作を合法的に実施させる予定です(p209)
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【私の評価】★★★★☆(86点)
目次
第1部 中国の海軍戦略
中国が海洋進出する必然性
米国が採用したマハンの海軍戦略
中国海軍戦略の変遷
中国海軍の近代化
対介入戦略
南太平洋島嶼諸国攻略戦略
「真珠の首飾り」戦略とマラッカ海峡打通戦略
砲艦外交に倣う軍事外交
マハンの門下生の中米は激突する宿命
米国の対中国新戦略)
第2部 釣魚島問題処理要綱―中国から見た尖閣諸島問題
釣魚島問題の位置づけ
釣魚島問題処理要綱
著者経歴
福山隆(ふくやま たかし)・・・1947年長崎県出身。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊幹部候補生として入隊。1990年外務省に出向、大韓民国防衛駐在官として朝鮮半島情勢のインテリジェンスに関わる。1993年、連隊長として地下鉄サリン事件の除染作戦を指揮。西部方面総監部幕僚長・陸将で2005年退官。ハーバード大学アジアセンター上級客員研究員を経て、現在はダイコー株式会社取締役専務・執行役員を務める傍ら執筆や講演を続ける
離島防衛関係書籍
「オペレーション雷撃」山下 裕貴
「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」
「尖閣諸島沖海戦―自衛隊は中国軍とこのように戦う」中村 秀樹
「尖閣を奪え! 中国の海軍戦略をあばく」福山 隆
「邦人奪還-自衛隊特殊部隊が動くとき」伊藤祐靖
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