「尖閣を奪え! 中国の海軍戦略をあばく」福山 隆

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尖閣を奪え!  中国の海軍戦略をあばく

【私の評価】★★★★☆(86点)


■元陸上自衛隊の情報将校が
 海洋進出を進める中国の軍事戦略を
 2013年に推定したものです。


 面白いのは中国海軍トップが
 習近平国家主席に報告するであろう
 形式で書かれてあること。


 2013年は、前年の2012年の尖閣国有化で
 中国デモによる日本企業施設の破壊、
 日本製品の不買運動、尖閣諸島へ
 中国公船が領海侵犯を開始しました。


 この本では、中国の工作員が
 石原都知事と民主党政権をうまく誘導して、
 尖閣諸島への中国進出のきっかけを
 作ったものと推定しています。


・2012年4月、当時の石原都知事が「東京都は尖閣諸島を買うことにした」と宣言したことに端を発し・・我が中国は日本を揺さぶる口実を得ました・・日本では、政治家も、外交官も、「軍人」も、メディアも、そして国民も、性善説でしか世界を観望できない。安全保障という観点からは、ダチョウよりも劣った国家・国民です(p186)


■すごいと思ったのは
 2013年の時点で、中国の南シナ海進出と
 他国を借金漬けにして海軍拠点の取得を
 進めることを予測している点です。


 中国にとって
 食料、エネルギーの輸送路である
 南シナ海とマラッカ海峡は
 生命線です。


 アメリカと覇権戦争となれば
 アメリカはマラッカ海峡、南シナ海を
 封鎖するかもしれない。


 海上封鎖を打破するためにも
 海軍の拠点の増強が必要であり、
 中国は当時から準備していたということです。


・米帝とオーストラリアは、中国と軍事的に対決する際には、オーストラリアを軍事拠点として、マラッカ海峡、スンダ海峡およびロンボク海峡を米軍の支配下に置こうとする作戦を展開することでしょう(p127)


■最後に著者が予想しているのが、
 中国の「核ドミノ戦略」です。


 つまり、北朝鮮や韓国を利用して
 日本が核武装しなくてはならない状況を
 つくり出し、日本を核武装「賛成派」と
 「反対派」に分裂させるとともに、
 メディアを使って反米政権を成立させ、
 最終的に日米同盟を分断するというもの。


 北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルは
 完成しそうですので、
 十分ありえるシナリオです。
 中国の工作はうまくいくのでしょうか。


 福山さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・今後、新興国の経済発展が進み、富裕層人口が増大すれば、各国は、まるで狼が一片の肉を奪い合うように、国家次元のエゴむき出しで、力づく(軍事力)で限られた食料・資源を奪い合う時代が来るのは必至と見るべきでしょう(p18)


・輸入する石油のおよそ90%は、いわば中国の「大動脈」を梗塞させうるチョークポイントとして有名なマラッカ海峡と南シナ海を経由しています。食料はもとより液化天然ガス、鉄鉱石なども輸入の大半は海上輸送路からです(p24)


・マハンは、海軍の任務として、1 本国と植民地をつなぐ海路において、制海権を確保・維持し商船の往来を安全にすることと、2 植民地(市場)に対し、砲艦外交を主体として自国の権益を守るために"にらみを利かせる"こと、が重要な任務だと考えていました(p36)


・中国海軍の近海防衛戦略の目的は、「渤海、黄海、東シナ海、そして南シナ海とそれらに存在する島嶼をコントロール下に置く」ことで、海軍建設の目標はその能力を備えることです(p59)


・2010年夏には、「中国人の投資家グループ」という名前で、人民解放軍や国家安全部などの"工作集団"をフィジーに送り込み・・・外相に対して、「造船ヤードと港湾を建設したい」と打診しました。フィジーを南米航路の中継基地とするほか、軍事拠点・基地にするのが目標です(p110)


・ココ諸島は・・大小二つのココ島からなるミャンマーの領土。中国は1994年にミャンマーとの間で租借契約を締結。以来、いずれの島についても実効支配を続けてきており、ロシア製の強力な偵察レーダーと、電波傍受施設を配備している(p122)


・日米が分断されれば、米帝はオーストラリアに頼らざるを得ません。中国としては、JASBC(統合エアシー・バトル)の負の側面・・「巻き込まれ論」や日本の焦土化など・・を朝日新聞などの左翼メディアを活用して、メディア戦・心理戦を行う方針です(p170)


・琉球政府には、平和・友好・宥和的なアプローチを採用し、日琉分断工作を推進する・・5月8日付人民日報紙で「歴史的に未解決の琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を掲載したばかりです(p191)


・我々中国の視点から見れば、今日の沖縄はある意味で日本の植民地であると評価できます。沖縄を日本から分離独立させ、中国の影響下に組み込むうえで、"沖縄は日本の植民地"というコピーは大きな力を持つのです(p43)


・核ドミノ戦略・・・日本に「核兵器開発・保有」を迫る状況・環境を作為し、日本世論を核ミサイル開発「賛成派」と「反対派」に分裂させ、日米同盟の分断を目指す政治・軍事・心理戦略なのです(p198)


・外交戦の目標は、「日米同盟の分断」と「(中国の主導権下の)中日友好」です。日米分断のためには、日本の政治・世論を反米に、米国の政治・世論を反日に誘導することがポイントです。このための外交戦の 道具は歴史問題と北朝鮮問題でしょう(p101)


・釣魚島処理・・・その第一歩として、日本の法律の網目を潜って、先島地区(宮古・石垣・西表島)の土地を買収し、特殊部隊を偽装させて旅行者や水産・農業研修の目的で潜入させ、各種工作を合法的に実施させる予定です(p209)


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■目次

第1部 中国の海軍戦略
 中国が海洋進出する必然性
 米国が採用したマハンの海軍戦略
 中国海軍戦略の変遷
 中国海軍の近代化
 対介入戦略
 南太平洋島嶼諸国攻略戦略
 「真珠の首飾り」戦略とマラッカ海峡打通戦略
 砲艦外交に倣う軍事外交
 マハンの門下生の中米は激突する宿命
 米国の対中国新戦略)
第2部 釣魚島問題処理要綱―中国から見た尖閣諸島問題
 釣魚島問題の位置づけ
 釣魚島問題処理要綱



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