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【書評】「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」西村金一、岩切成夫、末次富美雄

2020/07/07公開 更新
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「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」西村金一、岩切成夫、末次富美雄


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー


中国公船が尖閣諸島をパトロール

2013年の民主党の尖閣国有化から、中国公船が尖閣諸島の領海・接続海域をパトロールするようになりました。南シナ海、インド国境での中国軍の動きを見ていると、いずれクリミア、竹島のように尖閣諸島に武装中国人が上陸し、尖閣を占領することが想定されます。


インド・中国の国境では中国軍によりインド軍人20人が撲殺され、竹島では日本人漁民4000人が韓国に抑留され、8人が銃撃・殺害されています。


2018年に韓国駆逐艦が自衛隊の哨戒機に射撃管制用レーダーを照射された事件のように、自衛隊は攻撃されるまで何もできません。他国軍にとって、インド国境のように勝算があれば、敵を殺害、侵攻するのは当然の判断なのです。


海上における警備行動に基づき行動している護衛艦は、正当防衛や緊急避難のみの権限だけを保有している。このため中国海軍艦艇に遭遇し、射撃管制用レーダー等の照射があったとしても、当該行為の中止を求めることはできるが、これを敵対行為と認定し攻撃等の対応処置をとることはできず、中国艦艇から先制攻撃を受ける可能性が高い(p34)

中国尖閣侵攻の防止

中国軍が尖閣諸島を占領する場合,最初に犠牲になるのは海上保安庁,自衛隊員です。


中国軍が尖閣周辺の海域・空域を支配するために配備しているのは,長距離ミサイルです。中国沿岸には多量の長距離ミサイルが配備されており、自衛隊の艦船がミサイル攻撃された場合、発射されたミサイルをすべて撃ち落とすのは難しいのです。イージス艦には300人もの乗員がおり、1発のミサイルで沈没する可能性があります。


ミサイル発射基地を破壊しなければ、尖閣諸島に近づくこともできない、ということになるわけです。陸上配備型イージスが中止となった今、敵基地攻撃能力が議論されているのは、中国尖閣侵攻の防止を意図しているのでしょう。


充実した弾道ミサイルや巡航ミサイルを装備する中国に対し、これらを発射後の対処だけではとうてい防ぐことはできない。また、これら作戦基盤への攻撃について政府は、自衛の観点から必ずしも否定されていないとの立場をとっている。この考え方を整理法制化し、敵基地攻撃能力を保持することは、実際の対処のみならず抑止力としてもきわめて有効であろう(p87)

領土を守るという意思と行動が必要

尖閣防衛のために敵基地攻撃能力が必須であることは、2013年前からわかっていたことです。領土を守るという意思と行動がなければクリミア、竹島のように領土を奪われる可能性があるのです。1982年、英国が英国領フォークランド諸島に侵攻した際には、大きな犠牲を出しながらアルゼンチン軍を撃退しています。


戦略として、わざと隙を作って相手を誘っているのであれば別ですが、戦争を起こさせないためにも敵に侵攻が成功すると思わせないことが大事だと感じました。西村さん、良い本をありがとうございました。



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この本で私が共感した名言


・一度支配を受け入れた島嶼の現状回復がいかに難しいかは、竹島、北方領土という例をみれば歴然としている(p83)


・漁民を装った中国民兵・武装警察(軍人の場合もある)による尖閣占領は蓋然性の高い事態といえよう・・・中国の水上戦闘群は、上陸漁民の防護のために補給支援や援護射撃などを実施するだろう(p31)


・中国からの弾道ミサイル攻撃は、北朝鮮に近い吉林省と台湾正面の福建省・浙江省の二方面から発射されるために、イージス艦を二正面に配備しなければならず、空中ですべてを撃破することは難しい(p54)


・中国は米国の介入を阻止するため、武力紛争の範囲を尖閣諸島及びその周辺に限定する(p48)


・中国第二砲兵(戦略ロケット軍)は、南西諸島に所在する日本の基地・レーダー・地対空ミサイルなどの機能低下・能力喪失を狙いとしてSRBM・MRBM・SLBM等の弾道ミサイルなどを発射する。引き続き・・・戦闘機を随伴した爆撃機・戦闘爆撃機が、南西諸島に対する爆撃を実施する(p44)


・資材などを輸送中の海上自衛隊輸送艦や民間フェリーに、中国潜水艦が魚雷攻撃を行なう。その際中国は、潜水艦の攻撃ではなく、あくまで日本艦艇等の事故と主張するであろう(p35)


・海上自衛隊は、中国軍の侵攻部隊に対する増援・後方支援を阻止するために、潜水艦・対水上戦・空戦によって封鎖作戦を実施し、上陸部隊を孤立させ、後方支援及び指揮通信の断絶を図る(p66)


・治安出動の場合、出動した自衛官に与えられる武器使用権限は、警察官職務執行法に基づく正当防衛及び緊急避難のみであるが、防衛出動の場合は、自衛権の発動が可能となる。投入された自衛官がどのような権限を付与されるかは、戦闘の帰趨に大きな影響を与えることとなる(p40)


・中国が尖閣を含む東シナ海で誤った判断により、事を起こさせないためには、東シナ海での日米共同統合の大規模演習を定期的に実施すべきである(p88)


・2013年1月には、中国海軍艦艇が日本護衛艦に対して射撃管制用レーダーを照射し、2014年5月及び6月には、日本の情報収集機への異常接近飛行を行ったことは意図的な威嚇であり、一歩間違えれば大問題となりかねない事象であった(p6)


▼引用は、この本からです
「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」西村金一、岩切成夫、末次富美雄
西村金一、岩切成夫、末次富美雄、祥伝社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第一章 尖閣諸島争奪戦のシナリオ(もし日中戦わば)
1 争奪戦シナリオの区分
2 平時から本格的武力紛争に至るまで
3 本格的武力紛争
4 日本の尖閣確保及び維持
5 争奪戦シナリオの結論
第二章 海上戦力
第三章 航空戦力
第四章 地上戦力
第五章 弾道ミサイル



著者経歴

西村金一(にしむら・きんいち)・・・1952年生まれ。法政大学卒業後、第一空挺団、 幹部学校指揮幕僚過程修了。防衛省・統合幕僚 部・陸上自衛隊・情報本部の情報分析官を努め、 第12師団第2部長、幹部学校戦略室副室長。退 官後は軍事アナリストとして各種委員会で活躍。


岩切成夫(いわきり・しげお)・・・1952年生まれ。防衛大学校卒業。大韓民国防衛 駐在官、第八航空団飛行群指令、航空総体指令 部防衛部長、航空総体幕僚長を務める。退官後 は航空作戦、安全保障戦略等の専門家として活 躍。「現代用語の基礎知識」の〈防衛〉を共同 執筆。


末次富美雄(すえつぐ・とみお)・・・1955年生まれ。防衛大学校卒業。護衛艦「しらね」 士官、「あきぐも」艦長を経て、シンガポール防 衛駐在官、第27、第63及び第3護衛艦指令、海 上自衛隊情報群指令。退官後は海上作戦、情報 戦等の専門家として活躍。「現代用語の基礎知識」 の〈防衛〉を共同執筆。


離島防衛関係書籍

「オペレーション雷撃」山下 裕貴
「自衛隊は尖閣紛争をどう戦うか」
「尖閣諸島沖海戦―自衛隊は中国軍とこのように戦う」中村 秀樹
「尖閣を奪え! 中国の海軍戦略をあばく」福山 隆
「邦人奪還-自衛隊特殊部隊が動くとき」伊藤祐靖


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