【書評】「CIAスパイ養成官―キヨ・ヤマダの対日工作」 山田敏弘
2026/06/24公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
キヨ・ヤマダというCIAインストラクター
講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版を経てMITフェローも務めたジャーナリストの著者が、CIAで日本語インストラクターとして働いた日本人女性キヨ・ヤマダの生涯を追ったノンフィクションです。
戦後しばらくしてアメリカに渡り、アメリカ人と結婚したキヨは、その後CIAに入局し、スパイたちに日本語と日本文化を教える仕事を長く続けました。
言語インストラクターという仕事は、単に語学を教えるだけの仕事ではありません。その国の考え方、価値観、人間関係の作法を伝えることでもあります。キヨは日本語という言語だけを教えていたのはでなく、スパイが日本人を理解するための教師だったのです。
言語インストラクターは多くの場合、生徒たちから見ればその国または文化を学ぶ「窓」となる(p129)
スパイにとって言語の重要性
この本ではキヨの人生と並行して、CIAという組織における言語の重要性について説明しています。
CIAの主要な役割は、政策を決定する政府指導者に世界の重要な情報を提供することです。各国の情勢を正確に把握し分析するためには、その国の言語と文化への深い理解が不可欠であり、言語教育はCIAの根幹を支えるものだとわかります。
実務面で、CIA局員が言語をマスターすると年5,000ドルのボーナスが加算される仕組みが紹介されています。給料アップというインセンティブで、職員の語学学習を支援していたのです。
CIAはその設立から、とにかく「言語」というものを非常に重要視してきた。海外での情報収集・分析業務などを活動の中心としている機関だけに、各国の言葉を使いこなせなければ仕事にならない(p116)
日本でのCIAの活動
この本では、CIAののもう一つの側面として、日本との関わりを紹介しています。CIAは日本に親アメリカ世論を形成するための「対日心理戦略計画」という工作を実行し、戦後日本人の考え方に影響を与えてきたとされています。
右翼の大物として知られた児玉誉士夫がA級戦犯容疑で巣鴨プリズンに収監された後、釈放されてCIAの協力者になっていたとも指摘しています。
ワシントンDCでは、日本大使館や日本企業のワシントン支社の通信、日本政府関係者が滞在するホテルまでもがCIAなどの諜報機関による盗聴の対象になっていたといいます。敵国も同盟国であっても情報収集の対象になるというのが、諜報の世界の現実なのでしょう。
右翼の大物だった児玉誉士夫は、戦後にA旧戦犯容疑で巣鴨プリズンに収監されたが、釈放されたあとに、CIAの協力者になっていたと言われる(p51)
スパイ天国の日本
また、日本が国際的な諜報活動の拠点として利用されている現実にも触れています。ロシアや中国に地理的に近く、朝鮮半島情勢に関わる情報も集まりやすいという地理的条件から、日本を拠点に活動する諜報員が少なくないといいます。
西日本の公安関係施設が、中国人と見られる人物に望遠カメラで監視されていたという事例も紹介されており、スパイ天国として日本が諜報活動の「現場」になっているのです。
この本で戦後日本から異国の地へ行き、日本人女性としてCIAという組織の中で「ガラスの天井を破った」ほど出世した人がいたということがわかりました。
山田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「私は、目には見えないガラスの天井を破ったのよ」キヨはCIAでの仕事で、言語インストラクターとして達成したキャリアを誇りに思っていた(p210)
・最近では2010年頃から、CIAが中国で使っていた現地のスパイが、次々と姿を消すという事件が起きている・・多くが処刑せれていた・・姿を消したスパイの数は30人を超える(p25)
・驚くほど高額な報酬をチラつかせられ、それでロシアの諜報機関に取り込まれてしまった人もいました(イギリスの元諜報員)・・・MI6は、そんな事態が起きないように、部員が退職した後は、10年に渡って、毎月5000ポンドを支払っているという(p176)
▼引用は、この本からです

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山田敏弘 (著)、新潮社
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
プロローグ 墓碑銘がない日本人CIA局員
第1章 「私はCIAで、ガラスの天井を突き破ったのよ」
第2章 語学インストラクターと特殊工作
第3章 生い立ちとコンプレックス
第4章 日本脱出
第5章 CIA入局
第6章 インストラクター・キヨ
第7章 最後の生徒
エピローグ 奇妙な「偲ぶ会」
著者経歴
山田敏弘(やまだ としひろ)・・・国際ジャーナリスト、米マサチューセッツ工科大学(MIT)元フェロー。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などに勤務後、MITを経てフリー。数多くの雑誌・ウェブメディアなどで執筆し、テレビ・ラジオも出演
スパイ関連書籍
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