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【書評】スパイ交信記録ヴェノナ文書の真実「アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄」江崎 道朗

2019/08/23公開 更新
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アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄 (祥伝社新書)


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー


ヴェノナ文書を紐解く

著者は、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍がソ連の暗号通信を傍受し、アメリカ国家安全保障局(NSA)とイギリス情報部が1943年から1980年にかけて解読した「ヴェノナ文書」を元に、ソ連(コミンテルン)による対米・対日工作の実態を説明しています。


著者の説明によれば、第二次世界大戦中のソ連の戦略は日本とアメリカを戦わせ、両国が疲弊したところで共産主義革命を進めることにあったといいます。この見方は、レーニンが唱えた「敗戦革命」、つまり資本主義国家同士の対立を煽り、その戦争で敗戦に追い込んで混乱に乗じて権力を握るという戦略です。


著者は左派からいつも攻撃されている日本会議の関連組織で、政策を研究している人らしいので、左派の実態を知ってもらいたいのでしょう。


ヴェノナ文書とは、ソ連・コミンテルンのスパイたちの交信記録だ・・・アメリカにいるソ連のスパイとソ連本国との暗号電文をアメリカ陸軍が密かに傍受し、1943年から1980年までの長期にわたって、アメリカ国家安全保障局(NSA)がイギリス情報部と連携して解読した「ヴェノナ作成」に関わる文書(p67)

ルーズヴェルト政権に潜んだスパイたち

本書で最も興味深いのが、ヴェノナ文書によって実名が判明したソ連スパイのリストです。


財務長官補佐官のアルジャー・ヒス、財務次官補のハリー・デクスター・ホワイトなど、ルーズヴェルト政権の高官たちがソ連のスパイであったことが、暗号解読によって明らかになったといいます。


特にホワイトは、在米日本資産の凍結を主導し、対日最後通告となったハル・ノート原案の作成にも関与していたとされています。また大統領補佐官のカリーは、日本本土への大規模な空爆計画を立案し、真珠湾攻撃の4か月以上前にルーズヴェルト大統領がこれを承認していたという記述もあります。


1948年に「アルジャー・ヒスはソ連のスパイである」と告発したチェンバースは、「かつて自分がソ連の工作員であったとき、国務省ののアルジャー・ヒスから機密文書を受け取っていた」と証言しており、ヴェノナ文書によってそれが証明されたのです。


アメリカの共和党、特に保守派は、「ルーズヴェルト民主党政権でソ連のスパイが暗躍し、東欧やアジアをソ連に売り渡す工作をしていた」と考えるようになったといいます。


ハリー・デクスター・ホワイトは1941年7月26日、財務省通貨調査部長の時代に、在米日本資産の凍結を主導し、日本の金融資産を無価値にして、日本を実質的に「破産」に追い込んだ人物だ(p78)

共産主義者による組織の乗っ取り工作

著者は、共産主義勢力の典型的な工作手法として「内部穿孔工作」を紹介しています。組織に党員や同調者を送り込み、あるいは資金援助によって編集方針や運営方針を支配下に置くという手法です。


具体例として、リベラル系オピニオン誌「ニュー・マッセズ」の編集部にアメリカ共産党員が多数入り込み、論調が左傾化していった経緯が描かれています。また、YMCAやYWCAといったプロテスタント系青少年団体での「残虐な日本軍から中国を救う募金活動」という工作、教職員組合の国際組織「エドキンテルン」を通じた日本教職員組合への影響についても言及されています。


現代日本のマスコミや日本教職員組合(日教組)や日本弁護士連合会(日弁連)の左派的な主張の裏には、こうした歴史的な内部穿孔工作が影響している可能性が高いのです。


アメリカ共産党は党本部機構の中に、内部穿孔工作を推進する秘密部門として、フラクション部(内部工作部)を設置している。フラクションとは「破片」「断片」という意味だが、実態は内部穿孔を実行する部門、つまり労働組合、平和団体、教育団体などにスパイを送り込み、その団体を内部から支配しようとする部門だ(p117)

レッテル貼りという攻撃手法

本書では、敵対する相手に「ファシスト」「軍国主義者」「差別主義者」といったレッテルを貼って発言権を奪うという手法も、共産主義勢力の常套手段として紹介されています。「極右」「軍国主義」「レイシスト」「差別」「ヘイトスピーチ」「ネトウヨ」などとレッテル貼りをする人は、意図的にやっているわけです。


共産主義者やコミンテルンは非常に頭がよく、手段を選ばないのだと感じました。世界が共産主義勢力に支配されるのか、支配されないのか、これから決まるのかもしれません。江崎さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・日本とアメリカの対立、イギリスとドイツの対立を徹底的に煽る。そうすることでヨーロッパとアジアに共産国家を作ろうというのが、レーニンの世界戦略であった(p103)


・ルーズヴェルト民主党政権にいた、次のような政府高官が、ソ連のスパイであることが判明した(カバーネーム、本名、主な役職・・)
 Jurist Ales アルジャー・ヒス 財務長官補佐官
 Lawyer ハリー・デクスター・ホワイト 財務次官補
 Prince ローレンス・ダガン 国務省南米課課長
 Page ラフリン・カリー 大統領上級行政職補佐官
 Peak フランク・コー 財務省通貨調査部部長
 Saks ソロモン・アドラー 財務省通貨調査部
 Koch ダンカン・リー 戦略情報局(OSS)日本・中国担当部門主任(p77)


・アメリカは、ルーズヴェルト民主党政権の時代に、大きく変わっていったのだ。しかも、この社会主義傾向が強い「ニューディール連合」は戦後も、アメリカのマスコミ、労働組合、官僚たちを牛耳り、民主党を支持する選挙マシーンとして活動した。日米戦争に勝利したアメリカの連邦政府は、「ニューディーラー」と称する社会主義者たちによって席巻されてしまったのだ(p42)


・「ソ連に反する、いかなる取り組みも停止せよ」という命令をホワイト・ハウスから受けていたと、クラーク局長は示唆している・・・ルーズヴェルト、トルーマン民主党政権と国務省によってヴェノナ作成は妨害を受け続けてきた(p73)


・中国大陸は、共産党のものになってしまった。非キリスト教国家である日本を打倒すれば、中国大陸にキリスト教国が誕生するはずであった。戦前からアメリカのキリスト教徒たちは、中国国民党の蒋介石を懸命に応援していた(p52)


・「中国支援評議会」の名誉会長に就任したのは、サラ・デラノ・ルーズヴェルト女史だが、彼女はルーズヴェルト大統領の実母である。名誉副会長には中国国民党政府の胡適元駐米大使が、常任理事にはマーシャル陸軍参謀総長の夫人・・・その実態は、やはりアメリカ共産党のフロント組織だった(p146)


アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄 (祥伝社新書)
アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄 (祥伝社新書)
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江崎 道朗
祥伝社
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【私の評価】★★★★☆(83点)


目次


第1章 対日政策で対立する二つのグループ―「ウィーク・ジャパン派」と「ストロング・ジャパン派」
第2章 葬られた「告発」―「第一次」近現代史見直しの挫折
第3章 ついに公開された「ヴェノナ文書」―その衝撃と、歴史的意義とは
第4章 アメリカ共産党の「トロイの木馬」作戦―コミンテルンの巧妙な戦略転換とアメリカの変質
第5章 コミンテルンに乗っ取られたマスコミ―「反ファシズム」で新聞・出版を恫喝
第6章 日米開戦へと誘導したスパイたち―目的はひとつ「ソ連を守るため」
第7章 変わりつつあるアメリカの歴史観―現職大統領によるヤルタ協定否定の意義とは
第8章 いまも続く共産主義勢力の暗躍―オバマ大統領、謎の言動の秘密



著者経歴


江崎道朗(えざき みちお)・・・1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、安全保障、インテリジェンス、近現代史研究に従事。現在、評論家。


スパイ関連書籍


「CIAスパイ養成官―キヨ・ヤマダの対日工作」 山田敏弘
「認知戦 悪意のSNS戦略」イタイ・ヨナト
「KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ」ベン・マッキンタイアー
「アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄」江崎 道朗


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