「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」江崎 道朗

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コミンテルンの謀略と日本の敗戦 (PHP新書)

【私の評価】★★★★☆(87点)


■第二次世界大戦の直前1941年、
 尾崎・ゾルゲ事件という
 スパイ事件がありました。


 日中戦争を煽っていた
 朝日新聞の記者であった尾崎が
 近衛内閣嘱託としてソ連の工作活動を
 していたというものです。


 つまり共産主義者の工作活動が
 日本を日中、日米戦争に向かわせ、
 敗戦に導かれた一因であったのです。


 著者はこうした他国の工作活動に
 翻弄された日本の歴史を紐解くことで
 現代の日本においても
 同じようなことが起きないように
 しなければならないとしています。


・尾崎は朝日新聞の記者だった人物で、月刊誌などへの寄稿も多く、当時の言論界で影響を持ちうる存在であった。当時、国民的人気があった政治家・近衛文麿のブレーン組織である昭和研究会にも参加。近衛内閣が成立すると朝日新聞を退社して内閣嘱託となり、政権中枢深くに入り込んだ(p33)


■今も昔も諸外国は、
 自国の国益のために
 日本国内で工作活動を行っています。


 特に戦前の共産主義・コミンテルンは
 マスコミ、労働組合、政府、軍に
 工作員を送り込み、その国の世論を
 コントロールしました。


 そうした工作活動に簡単に騙されて
 しまったのが、お人好しの日本人、
 というのが著者の見立てです。


 そして、現代社会においても
 私たちは同じように
 コントロールされているという。


・なぜ五・一五事件の檄文と共産党の宣伝が似ているのか・・・彼らのほとんどはコミンテルンの指示で動いていたわけではない。「自分たちが立ち上がって資本家を打倒しなければ日本は救われない」と信じてしまった「デュープス」(知らず知らずのうちに共産党に利用される「騙されやすい人」)になってしまっていたのだ。青年将校の愛国心を操ったコミンテルンの工作は本当に許しがたい(p174)


■著者はこうした工作活動を批判し、
 朝日新聞や共産党や民主党を
 弾圧する必要はないとしています。


 戦前はだれもかれも弾圧することで
 共産主義者でもない人が
 共産主義に同調してしまった。


 ですから弾圧するのではなく、
 相手の勢力の活動を観察し、
 どういった方針で工作活動を
 行っているのか分析するのが
 正しい対策であるとしています。


 現代の慰安婦問題にしても
 靖国神社の問題も、歴史教科書の問題も
 そうした活動の一つと見れば
 理解ができるということです。


 私も著者の仮説をもう少し
 深堀りしてみたいと思います。


 江崎さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・ソ連は、「ミコンテルン(共産主義インターナショナル)」という世界の共産主義者ネットワークを構築し、世界「共産」革命をめざして、各国に対する工作をしかけた。世界各国のマスコミ、労働組合、政府、軍の中に「工作員」、つまり「スパイ」を送り込み、秘密裏にその国の世論に影響を与え、対象国の政治を操ろうとした(p3)


・尾崎らは朝日新聞などと連携して「主敵は英米だ」と主張し、日本の長期戦略を北進(ソ連との対決)ではなく、南進(英米との対決)へと誘導したのである(p37)


・支那事変の長期化を画策し、近衛新体制と大政翼賛会の旗を振って、日本を、まるでスターリンかヒトラー支配下のような全体主義体制にする動きを担っていたのは、左翼知識人と「革新」官僚たちであった(p272)


・レーニンは・・自国が戦っている戦争への協力を徹底的に否定し、サボタージュ戦術をとり、自国をむしろ積極的に「敗戦の危機」へと追いやり、その危機的状況から内乱・革命を惹起(じゃっき)し、それに乗じて権力を握るべきだと説いた(p61)


・コミンテルンは1928年2月・・自国政府の敗北を促し、「帝国主義的」戦争を「内乱」へと転換させ、混乱を通じてプロレタリア革命をめざす「敗戦革命」路線を提示する・・この方針を踏まえ・・五・一五事件が起こった1932年には帝国陸海軍兵士向けに、反軍反戦を呼びかける『兵士の友』の刊行も始まっている(p170)


・地主から土地を取り上げ・・経営者から資金と工場を取り上げ、国有化、つまり労働者全員で共有するようにすれば格差は解消され、労働者天国の社会が実現できる・・よって共産主義者は基本的に武力革命を支持し、議会制民主主義に対して否定的なスタンスをとる(p39)


・共産主義体制によってどれほどの犠牲者が出たのか・・・
 ソ連    死者2000万人
 中国    死者6500万人
 ヴェトナム 死者100万人
 北朝鮮   死者200万人・・
 今から20年近く前の計算なので、北朝鮮や中国共産党支配下のチベットやウイグルの犠牲者を足せば、さらに多くが犠牲になったことになる(p40)


・「令状なしの逮捕」「即決裁判」「死刑執行」に加えて、「逮捕者を強制収容所に監禁する」・・人権を重視するリベラル派の活動家がこのような共産党の体質をなぜ批判しないのか、本当に不思議でならない(p84)


・「内部穿孔(せんこう)工作」とは、様々な組織に「細胞」という自分たちの仲間のグループ、つまりスパイを潜り込ませ、内部からコントロールすることをめざす工作のことである(p77)


・アメリカでは作家のヘミングウェイやヘレン・ケラーのような有名人を看板にしたフロント団体が、多くの会員を集めた。フロント団体とは、表向きは平和や、民主主義や、文化向上や、貧しい人民の支援などを謳いつつ、実態は偽装した共産主義団体である組織のことである(p233)


・現在でも、国民の多くはマクロ経済に疎く、金融政策と景気の関係を正しく理解している人は必ずしも多くない。そのため、共産党や左翼学者が「新自由主義者が格差を生み、貧困をもたらしている」「経団連は自分の金儲けのことしか考えていない」などと批判すると、そうした一面も確かにあるので、同調してしまう傾向が強い。しかし、結果的に共産党に利用されてしまう(p157)


・アベノミクス発足時に「金融緩和をしたらハイパーインフレが起きて止められなくなる」「金融緩和ではデフレは脱却できない」などという批判が山のようにあったのは記憶に新しいが、当時、高橋是清や、リフレ政策を主張していた石橋湛山(たんざん)わも同じようなことをいわれて批判されたのである(p182)


・「朝日新聞の廃刊」を叫ぶ人もいる。だが、朝日新聞のおかげで相手が何を考え、何を仕掛けようとしているのか、理解することができる。貴重な情報源を潰してしまったら、われわれはどうやって「相手」の情報を得ればいいのか(p218)


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■目次

はじめに --コミンテルンの謀略をタブー視するな
第一章 ロシア革命とコミンテルンの謀略--戦前の日本もスパイ天国だった
第二章 「二つに断裂した日本」と無用な敵を作り出した言論弾圧
第三章 日本の軍部に対するコミンテルンの浸透工作
第四章 昭和の「国家革新」運動を背後から操ったコミンテルン
第五章 「保守自由主義」vs「右翼全体主義」「左翼全体主義」
第六章 尾崎・ゾルゲの対日工作と、政治への浸透
おわりに--近衛文麿という謎



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