「大東亜戦争の秘密―近衛文麿とそのブレーンたち」森嶋雄仁
2013/03/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
要約と感想レビュー
大東亜戦争とはなんだったのか。1937年の盧溝橋事件から、日本は中国を南進。英米仏蘭勢力を中国から追い出すような行動に出ます。これに対し、英米が反発することは当然で、ABCD包囲網が形成されました。
ちょうど近衛文麿は、1937年から1941年、3度内閣総理大臣となり、こうした南進を指導しています。さらに、近衛文麿は国家総動員法、大政翼賛会、日独伊三国同盟と、戦時体制に向けて重要な閣議決定をしていきます。これは結果から見れば、意図的に中国との戦争を進めたように見えるのです。
具体的に近衛内閣が、約三年間に決定した事項は次のとおりです。盧溝橋事件を北支事変に、陸軍三個師団派兵決定、軍部より先に軍事予算をたっぷりと付ける。大増税、不拡大方針の破棄、陸軍二個師団派兵、大本営を設置、企画院の設置、国家総動員法、電力国家管理法、食管法、配給制、一国一党の大政翼賛会、日独伊三国同盟、日ソ中立条約、南進論、対米英戦争辞せず。これらはすべて近衛内閣によって閣議決定されたのです。
・昭和15年7月22日、第二次近衛内閣が誕生した。近衛文麿が内閣発足後、一番に手掛けたことは、日独伊三国同盟と大政翼賛会であった。(p118)
また、近衛文麿は、中国での不拡大方針を閣議決定しながらも、軍に予算を追加するなど、南進を推進しています。南進は日本にとってメリットは少なく、デメリットの多いものでした。なぜなら、満州でソ連と対峙している陸軍が、南進により戦力分散する。英米仏蘭の植民地を進撃することで、英米仏蘭の反発を受ける。中国共産党の敵である蒋介石軍との戦うことで、相対的に中国共産党軍が力を持つ。
こうしてみると、南進とは、ソ連の共産党にとってもっともメリットのある政策であったということになります。言っていることとやっていることが食い違うのですが、これは軍部が暴走したからと言えるのか検証が必要なのでしょう。
一方、中国の共産党は、日本人は襲われても抵抗しないということから、日本軍を挑発し、日中戦争に持ち込むことを目標としていました。その結果、満州における日本人への迫害事件、済南事件、第一次上海事件など、日本人を挑発して略奪、強姦、放火を行っていったのです。やがて、日中対立は、盧溝橋事件へと繋がって、日中全面戦争へと拡大していくのです。
・1994年の「江沢民談話」によると、『わが共産党は、日本軍を挑発し、日中戦争に持ち込むことに腐心した。そして、大陸の奥地へ奥地へと引きずり込み、日本軍を釘づけにすることに成功した。その数は日本陸軍の七割にものぼった。よってわが中国共産党は、第二次世界大戦で、連合国側で一番戦争に貢献した国といえる(p49)
近衛文麿から話を聞くことはできません。当時の人々はすべて亡くなっており、私たちは記録をたどるしかないのです。当時の歴史をしっかりと学び、同じことがおこらないようにしたいと思いました。森嶋さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本共産党という政党は、この年大正11年に地下組織として密かに結成され、当初はソ連共産党日本支部と言っていた。コミンテルン世界大会の決議には、「君主制の廃止」が盛り込まれた。この「君主制の廃止」とは、日本では皇室の廃止と皇族の虐殺を意味する(p21)
・日本敗戦後、東アジア諸国は、ことごとく共産化した(中国、満州、内モンゴル、新疆ウイグル、チベット、北朝鮮、ベトナム、ラオス、カンボジア、ビルマ)。(p107)
・昭和12年7月29日、北京の東方にあった通州で、中国人の保安部隊による大規模な日本人虐殺事件が起こった。殺されたのは、日本人居留民の約260人であった(p72)
元就出版社
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
目次
封印された歴史
日露戦争終結
戦勝国の軍隊
ロシアの革命
アメリカの露骨な圧力
近衛文麿
近衛文麿とその側近
蘆溝橋事件
事件を事変に事変を戦争に
通州事件
支那事変
尾崎秀美
「蒋介石を対手とせず」
東亜新秩序
汪兆銘から三国同盟
独ソ戦勃発
第三次近衛内閣
開戦へ
ハル・ノート
終戦
赤いエリート軍人たち
藤原氏(=近衛家)
著者経歴
森嶋雄仁(もりしま ゆうじ)・・・昭和24年生まれ。近現代史研究家。古書店経営から執筆活動に入る。鹿児島「二政会(時事問題勉強会)」幹事長。新しい歴史教科書を作る会会員。日本会議鹿児島元会長
近衛文麿関係書籍
「近衛文麿の戦争責任―大東亜戦争のたった一つの真実」中川 八洋
「大東亜戦争の秘密―近衛文麿とそのブレーンたち」森嶋雄仁
「近衛文麿」杉森 久英
「近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任」鳥居 民
「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」江崎 道朗
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