「近衛文麿」杉森 久英
2007/05/12公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★☆☆☆(65点)
要約と感想レビュー
近衛文麿は、日中戦争を拡大させ、太平洋戦争直前まで道筋を作った総理大臣です。近衛文麿とはなんだったのでしょうか。この本を読むと、近衛文麿は、宇宙人と呼ばれた鳩山由紀夫元首相と同じような臭いがします。社会主義の理想を盲信していること。現実的な選択肢を持たず、表面上の正しそうなことに固執することです。
近衛文麿のはじめての著作は、署名のある文章がはじめて活字になったのは、オスカー・ワイルドの「社会主義下の人間の魂」を翻訳したものであり、発売と同時に発売を禁止されたという。近衛文麿の若い頃の論文は、『持てる国と持たざる国』や『資源の世界的に平等な利用』や『英米本位の現体制を崩壊させて、新に平等な新秩序をつくる』などと主張が記載されているのです。
・資本主義が、人間性を傷つけるのである。まず、その組織や制度を改善して、正義の基盤の上に建てなければ、人類の不幸は続くだろう。大まじめでこういう議論をするところ、近衛はいくつになっても大正時代のセンチメンタルな文学青年であった(p399)
昭和12年から始まった日中戦争から、太平洋戦争の終る昭和20年まで日本は戦略を持っていないように感じます。近衛はどちらかといえば、皇道派に同情を寄せ、その復権によって統制派とのバランスを保ち、国政を甚だしく一方に偏ることなく運営してゆくべきだと考えていたという。
皇道派はソ連を主敵(北進論)としていましたが、統制派は米英を主敵(南進論)と考えていたらしいのです。共産主義のソ連からすれば、統制派が日本国を主導することになるのが望ましいわけで、その方向で工作活動が行われていたというのです。
・昭和十二年前後の日本は、数年来の中国側の排日、侮日、日貨排斥等の陰湿ないやがらせ戦術に、さんざいんいらいらさせられて、堪忍袋の緒を切らしかけていたことは事実である(p387)
平成12年の私たちは戦略を持っているのでしょうか。民主党が政権を取り続けていたら、とんでもないことになる可能性があります。杉森さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・藤原鎌足となると、これは現実の歴史の中の人物で、天智天皇を助けて、蘇我家を滅ぼし、大化の改新を実現した。・・近衛家の始祖関白基実は、この道長から数えて七代目の孫である(p13)
・為信は剛毅英邁の人で、津軽家が代々南部家に隷属させられていることを悲しみ、蹶起して各地に南部家の城を攻め・・・南部家の言い分はその反対で、津軽はもともと南部の家来であって、弘前の地は南部から委託されたにすぎない(p18)
・勤王、佐幕、攘夷、開国の議論はいろいろあるが、要するに問題は、近衛-薩州と、三条-長州の二つのコンビのいずれが、朝廷において覇を唱えるかの争いだったといっていい(p29)
・高等学校の三年頃から、今度は社会科学に興味を感じ始め、京都帝大の米田庄太郎氏や河上肇氏の書いたものに親しむやうになった・・・当時の河上氏は、已にマルクスの研究をしてゐて、我々に、マルクスが読めるやうにならなければだめだと終始言ってゐた(p103)
【私の評価】★★☆☆☆(65点)
目次
第1部 若き近衛文麿
第2部 青年宰相・近衛文麿
著者経歴
杉森久英(すぎもり ひさひで)・・・1912(明治45)年、石川県七尾市に生まれる。東京帝国大学国文学科卒業後、熊谷中学校(現・埼玉県立熊谷高等学校)教員、中央公論社、大政翼賛会文化部、日本図書館協会などを経て、戦後に河出書房に入社。『文藝』編集長などを務めながら、自らの作品を『中央公論』に発表、その後に退社し、作家専業となる。『天才と狂人の間』で第47回直木賞を受賞。とくに伝記小説を多く手がける。
近衛文麿関係書籍
「近衛文麿の戦争責任―大東亜戦争のたった一つの真実」中川 八洋
「大東亜戦争の秘密―近衛文麿とそのブレーンたち」森嶋雄仁
「近衛文麿」杉森 久英
「近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任」鳥居 民
「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」江崎 道朗
読んでいただきありがとうございました! この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングに投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 50,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
コメントする