「近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任」鳥居 民
2007/05/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★☆☆☆☆(58点)
要約と感想レビュー
近衛文麿は日米開戦を避けようとし、早期終戦を図ろうとしていたという内容の一冊です。どうして日本は、勝つ見込みのない太平洋戦争に突入してしまったのでしょうか。
日本では、極東ソ連軍による侵攻を警戒しなければならないという「北進」の皇道派と、アメリカ太平洋艦隊と決戦するときが迫っていると説く「南進」の統制派が存在し、予算と資材を奪い合っていました。近衛は陸軍の多数派の皇道派に親近感を持ち、皇道派の新崎甚三郎を高く買っていたという。
つまり、近衛は皇道派(北進)の将官と友好関係にあり、統制派(南進)の将官から警戒されていたという。二・二六事件で反乱者の鎮圧を主導したのは内大臣府秘書官長であった木戸幸一であり、二・二六事件で「皇道派」は粛清され、「統制派」が主流となり、木戸は統制派の将官と親しくなっていったという。
陸軍が中国へ進出する中で、海軍は、中国から撤兵する以外にないと主張できませんでした。中国からの撤兵を主張するためには、アメリカとの戦争に自信がないのだ、二年、三年と戦いがつづいたらとても勝ち目はない、アメリカとの戦争を回避したいと言わなくてはならなかったのです。ただ、そうすると、海軍にたいする予算、資材の配分が減ってしまうことになり、自分の立場が悪くなってしまうという構造になっていたというのです。
海軍の長野修身は「三国同盟があるかぎり、日米交渉はまとまりません」と言い、長野はアメリカと戦うべきだと主張したのだと思って、天皇は不満を抱いたという。実際には、日本が参戦してソ連と戦わないのであれば、ドイツとの同盟は名ばかりのものにすぎないのです。
責任あるリーダーがいないという日本の不思議な組織のためなのでしょうか。何が書いてあるのかわからないくらい、構成の配慮がありませんでした。良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・海軍がどうにかして戦争を避けようとして、「要領」原案に手を入れたことを近衛は記憶していた。「我要求ヲ貫徹シ得ザル場合ニ於テ直ニ対米開戦ヲ決意ス」といった陸軍側の原案を、海軍大臣が「我要求ヲ貫徹シ得ル目途ナキ場合」と変えさせ、「十月上旬」になって、「目途」があるかないかを再検討しようということにしたのだった(p16)
・海軍はそれまで反対していた南部仏印への進駐を主張しはじめた。真っ先に口を切り、さらに南方地域を攻略すべきだと説くようになったのが軍令部総長、長野修身である(p98)
草思社
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【私の評価】★☆☆☆☆(58点)
目次
第1章 ミニ戦犯裁判
第2章 対敵諜報局員
第3章 内大臣
第4章 軍令部総長
第5章 深淵
第6章 暗闘
第7章 最終幕
著者経歴
鳥居 民(とりい たみ)・・・1929年、東京に生まれ、横浜に育つ。日本および中国の近現代史研究家。著書に『毛沢東 五つの戦争』『日米開戦の謎』『横浜富貴楼 お倉』『「反日」で生きのびる中国』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』『近衛文麿「黙」して死す』(いずれも草思社)などがある。『昭和二十年』の執筆には膨大な資料の調査をもとにすでに二十年以上を費やしている。横浜文学賞受賞。
近衛文麿関係書籍
「近衛文麿の戦争責任―大東亜戦争のたった一つの真実」中川 八洋
「大東亜戦争の秘密―近衛文麿とそのブレーンたち」森嶋雄仁
「近衛文麿」杉森 久英
「近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任」鳥居 民
「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」江崎 道朗
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