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「働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話 データで見る日本経済の現在地」明石順平

2023/06/03公開 更新
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「働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話 データで見る日本経済の現在地」


【私の評価】★☆☆☆☆(59点)


要約と感想レビュー

アベノミクスを否定

バブル崩壊から失われた30年を総括する本かと思って読んだのですが、なぜかアベノミクスを否定するだけの目的に書かれた本のように感じました。まず、アベノミクスでは「前年比2%の物価上昇を目指す」ために異次元の量的緩和という資金供給をしてきました。その結果、円安による物価上昇が起きているのです。また、アベノミクスは量的緩和によって景気を良くすることを目指していたのですが、残念ながら自民党政権でない素人政権のうちに、財務省が消費増税を決定させ、景気は沈静化されてきたのです。


ところがこの本では、アベノミクスで物価上昇したのは、増税と円安によるものだけだ、と否定的に書いているのです。この点については、私の見方と差異がありますし、基本的知識のない読者を意図的に誘導しているものと思われます。さらに、アベノミクスによって失業率が下がったと言われていますが、民主党政権のときから失業率は下がってきたと書いており、著者の意図がはっきりしてきます。民主党政権のときに東日本大震災が発生し、復興事業で失業率は下がったのです。著者は民主党が正しく、アベノミクスは効果がないと言いたいわけです。


・もともと失業率は下がってきていた・・民主党政権時代から続く改善傾向がそのまま継続(p82)


GDPの算出方法を変更

なぜ弁護士の著者が経済の本を書いたのかわかりませんが、GDPの算出方法が代わったり、日銀と年金が日本の株式市場を支えているのは事実なのでしょう。そうした点は、知っておく必要があると思います。ただ、著者の主張に不審な点が多すぎるのです。まず、2018年に海外投資家が日本株式を売り越していることでアベノミクスを否定していますが、ウォーレン・バフェットが日本の大手商社株の主要株主となっていることと整合が取れないのです。


また、土地価格が上がってきたことを「バブルの失敗をまた繰り返す」と批判していますが、バブルの失敗は地価が上がったことが失敗なのではなく、地価が上がったところで急に資金供給を停止して地価を急激に下げたことなのです。現在の状況を否定するために著者のロジックには一貫性がないのです。


・2016年・・内閣府はGDPの算出方法を変更・・2015年度は31.6兆円もかさ上げされている(p65)


国家財政は社会保障で厳しい

1973年に自民党は選挙で勝つために社会保障費を増やし、「福祉元年」と言われたのは事実でしょう。そのために日本の国家財政は悪化していったのです。また、アベノミクスは量的緩和を行いましたが、増税によって景気はそれほど盛り上がりませんでした。問題はこれからどうするかなのです。明石さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・大蔵省は、1990年3月27日、各金融期間に対し、不動産向け融資の伸び率を、総貸出の伸び率の範囲内に抑えるようにという行政指導を行った・・これらの施策の結果、土地の価格は急激に下がって・・(p25)


・マネーストックが増えるのは、民間の貸し出しが増えるか、海外から外貨を獲得した場合に限られる(p39)


・在留外国人・・技能実習で14%・・真の目的は、不足する単純労働従事者を外国人で補うこと(p181)


▼引用は、この本からです
「働くときに知っておきたい「自分ごと」のお金の話 データで見る日本経済の現在地」


【私の評価】★☆☆☆☆(59点)


目次

1章 僕の給料は、この国の経済を映している
2章 過去10年の経済政策の成果
3章 国の借金が増えると、未来はどうなる?
4章 僕らの貧富と税の関係
5章 日本で人らしく働くためには
6章 日本と世界の未来予測図



著者経歴

明石順平 ・・・弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。


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