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元朝日新聞記者の伝える「凜とした小国」伊藤 千尋

2018/06/17公開 更新
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凜とした小国


【私の評価】★☆☆☆☆(59点)


要約と感想レビュー

 著者は朝日新聞やAERAの記者だったという。しかしこの本を読むと、著者は本当に記者だったのか疑問に感じました。この本で紹介するコスタリカ、キューバ、ウズベキスタン、ミャンマーをどの程度勉強して書いているのか不安になる内容でした。軍隊がないとか、教育が無料で平等など表面的によさそうなことを書いているだけで、個人の旅行の感想と変わらないように見えるのです。


 例えば、キューバについては、無償の教育と医療が素晴らしいと賞賛し、キューバは「明るい社会」で、カストロに好意的な本を出版した日本人を紹介しています。著者は社会主義が大好きなのです。


 また著者は、平和憲法を持ったコスタリカも大好きです。コスタリカは自主的に平和憲法を制定して、条文どおりに軍隊を廃止しているのです。1995年に朝日新聞が主催したシンポジウムのパネリストとなって来日したコスタリカのアリアス大統領が「私たちにとって最も良い防御手段は、防衛手段を持たないことだ」と語ったことに対して、「名言」と評価しています。


 私が著者の姿勢に疑問を持ったのは、地熱発電を取り入れたコスタリカのエネルギー政策を聞いたと書いて、「その技術をなぜ日本で活かさないのか、首をかしげる」と書いているところです。首をかしげるなら、ちょっと地熱発電の現状くらいは調べて書いてほしいと感じました。それが本を出版する人の責任だし、読む人への礼儀なのでしょう。


 朝日新聞で仕事をしていたからなのか、個人の資質の問題なのか、私には分かりませんが、ジャーナリストらしい仕事を期待します。伊藤さん、ありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・(キューバでは)観光客がドルなど外貨を持ち込み自営業が広がると格差が出てきた。観光客からドルを受け取るタクシー運転手やチップをもらうホテルの従業員などの収入が、医師や大学教授らをはるかに上回るようになったのだ(p93)


・(キューバ)革命のさい、当時の政府軍は408人の兵士と武器を満載して運んできたが、ゲバラはたった18人の兵士を率いて彼らに勝った。貨車は装甲されていたが床が木製だという情報を手に入れて、床に爆弾をしかけたのだ(p78)


・グローバリズムの今、世界の多くの国が弱者を切り捨てて社会格差を広げる米国流の新自由主義を採用する。一方でキューバは完全な形の社会主義は放棄しつつも、弱者を救う姿勢を崩さない(p118)


凜とした小国
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伊藤 千尋
新日本出版社
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【私の評価】★☆☆☆☆(59点)


目次

第1章 平和憲法を活用するコスタリカ
第2章 キューバは今―米国との国交を回復して
第3章 シルクロードの中心、ウズベキスタン ソ連後の中央アジアを探る
第4章 闘うクジャク―ミャンマーは今



著者経歴

 伊藤千尋(いとう ちひろ)・・・1949年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。1974年に朝日新聞に入社。サンパウロやバルセロナ、ロサンゼルスの支局長などを歴任。2009年に定年を迎えたが再雇用で同紙の「be」編集部で勤務を続けている。


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