だれが安倍を殺したのか「THE 独裁者 国難を呼ぶ男! 安倍晋三」古賀 茂明 , 望月 衣塑子
2021/10/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★☆☆☆☆(59点)
要約と感想レビュー
森友学園・加計学園問題
「報道ステーション」で「I am not ABE」と書いたフリップを出した古賀 茂明氏と、官房長官記者会見で質問というより言いがかり世論操作をしようとする東京新聞の望月衣塑子氏の一冊です。二人の発言を分析してみましょう。
まず、森友学園・加計学園問題について古賀氏は、国家戦略特区諮問会議は「岩盤規制の打破」の大義のもと、結局はトップダウンですべてを決めてしまう仕組みであり、実際は加計学園だけに機会を与え、他の大学には参入させないようにしていたとしています。これは、参入させないようにしていたのは、文部科学省と日本獣医学会が談合していたところ、加計学園だけ参入させることで手打ちにしていたことをあえて言わないことで、あたかも安倍首相が裏から手を回しているかのような印象操作でしょう。
一方、望月氏は「バックに昭恵夫人、その後ろには安倍首相がついて神風が吹いた」「森友問題は結局のところ、周囲の人間の忖度によるもので、安倍首相と昭恵夫人の直接関与はなかったと言われてもなかなか納得できない」「財務省に対して安倍-麻生-鴻池ラインの圧力があったのではないでしょうか」などちょっと調べれば分かるような事実と違うコメントをしています。事実を証拠で検証しようというジャーナリストとしての姿勢がまったくないことがわかります。
古賀氏はある程度、全体をわかったうえで印象操作をしようとし、望月氏は嘘でわからないことでも根拠なしで何でも口にして印象操作をしようとしている傾向があると思いました。朝日新聞が森友・加計問題で日本ジャーナリスト会議大賞を受賞したと書いてありますが、マスコミを活用した世論操作としては大成功の工作活動であったと言えるのでしょう。
朝日新聞は・・森友・加計問題のスクープと一連の報道に対して取材班が2017年の日本ジャーナリスト会議大賞を受賞しています(望月)(p71)
日本の防衛
日本の防衛問題については、安倍首相が中国の危険性を指摘してきたことに対し、古賀氏は「最近は、戦争はあまり起きていない。南シナ海での埋め立てはあるが、中国がどこかを攻めたわけではない。ロシアは、クリミア問題があるが、日露関係をよくしようとしている」として冷静に考えようと主張しています。もっともらしい説明ですが、ロシアのウクライナ侵攻や、中国の台湾恫喝を見てると、根本のところで現状認識を間違わせようとしていることがわかります。
一方、望月氏は、「集団的自衛権や軍備拡張で戦争へ巻き込まれる」「国防軍とすれば、中国、韓国、北朝鮮との関係が悪くなってしまう」ので、軍備拡張反対の立場です。ロシアの脅威に対してフィンランド、スウェーデンがNATO加入を目指していること、ヨーロッパが軍備拡張に転換したことを考えれば、いかに集団的自衛権と軍事力のバランスが平和を維持するために重要であるのかということと正反対の主張です。わかって主張しているとすれば、悪質でしょう。
「恐怖の三点セット」、つまり集団的自衛権、国家安全保障会議、特定秘密保護法は、結局この状況下で、現実に軍備拡張、そして戦争への巻き込まれにつながっていくということですか(望月)(p253)
レッテル貼り
望月氏は、元文部科学次官の前川氏が「公正公平であるべき行政のあり方が歪められた」と言っているにすぎないと書いていますが、文部科学省が獣医学部を作らせないようにして天下りなどの利権を確保していたことについて言及していません。公正公平であるべき行政のあり方を歪めていたのは、文部科学省なのです。
さらに、ジャーナリストであれば証拠と事実検証をもって読者に情報提供すべき立場なのに、「Yahoo!ニュースコメントは、最近、少数のネトウヨが突出できないようになり、モリ・カケ問題などでは安倍政権に批判的なコメントもいっぱい出るようになった」などと、自分の考えと違う人たちをネトウヨとレッテルを貼り、批判的なコメントが増えてプロパガンダがうまくいったことを喜んでいるのです。
ここまでひどい内容だと、すべての内容を反対に考えると正しい結論になるのではないかと考えてしまいました。世の中の人の信頼を失わせるという意味で、ジャーナリストも事実検証して批判すべきではないでしょうか。また、この二人の安倍首相へのレッテル貼り、印象操作が安倍首相の暗殺につながったとすれば、非常に残念なことです。
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この本で私が共感した名言
・北朝鮮危機は、アメリカにとっての危機だということに気づかなければなりません。少なくとも北朝鮮には、日本を占領しようという意図はありません(古賀)(p35)
・共謀罪を使えば、たとえば、だいたい左翼の人なんて、みんな繋がっているわけで、そのうちの一人がはねっかえりで、悪いことをやったヤツがいたとすれば、実は共謀があったのだという理由で、周りにいる人たちみんなを引っ張ることができます(p236)
【私の評価】★☆☆☆☆(59点)
目次
PART 1 大胆予測! 安倍政権の未来図
PART 2 森友問題とは 何だったのか?
PART 3 加計学園 疑惑の深層
PART 4 安倍政権の正体
PART 5 私たちにできること
著者経歴
古賀茂明(こが しげあき)・・・ 1955 年、長崎県生まれ。1980 年東京大学法学部 を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。 大臣官房会計課法令審査委員、産業組織課長、 OECD プリンシパル・アドミニストレーター、産業 再生機構執行役員、経済産業政策局課長、中小企 業庁経営支援部長などを歴任。2008 年国家公務 員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、急進 的な改革を次々と提議。2011 年 3 月の東日本大震 災と福島第一原子力発電所の事故を受け、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経 産省から退職を勧告され辞職。2011 年、大阪府市 エネルギー戦略会議副会長として脱原発政策を提言。
望月衣塑子(もちづき いそこ)・・・1975 年、東京都生まれ。東京新聞社会部記者。 慶應義塾大学法学部卒業後、東京新聞に入社。千葉、横浜、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで事件を中心に取材する。2004 年、日本歯科医師 連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし、自民党と医療業界の利権構造の闇を暴く。また2009 年には足利事件の再審開始決定をスクープする。東京地裁・高裁での裁判担当、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出政策、軍学共同などをメインに取材。森友・加計疑惑で菅官房長官に斬り込み、これを契機に追及が加速し話題を集める。二児の母。趣味は子どもと遊ぶこと。
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