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「石田梅岩『都鄙問答』」石田梅岩

2019/07/26公開 更新
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石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)

【私の評価】★★★☆☆(70点)


■松下幸之助翁が座右の書としていた
 と何かに書いてあったので、
 手にした一冊です。本当でしょうか。


 石田梅岩とは、江戸時代の思想家で
 その教えを石門心学と言います。


 都鄙(とひ)とは都会と田舎という意味で,
 石田梅岩は月に三回ほど商人を集めた
 塾を開催し,その問答集が本書です。


 この本では、質問に対し、答えるという
 問答形式となっており、石田梅岩は、
 倹約、誠実、愛、孝行、法令遵守と
 正しきことを行なうように言っています。


・学問の道というのは、まず自分自身の行いをよく慎み、義の心で主君を尊び、仁愛の心で父母に仕え、信の心で友と交わり、人をわけへだてせずに愛し、貧窮した人には同情し、功徳があっても決して誇らず、衣類からさまざまな道具に至るまで倹約を心がけ、華美を求めず、家業をおろそかにせず、家計は收入に合わせて支出を抑え、法をきちんと守って、家をよく治める(p68)


■特徴としては、ただ学ぶだけでなく
 自らそれを実行せよと強調して
 いるところでしょうか。


 知識だけで行動しなければ、
 学んで学んでいない。
 知識だけの人を「歩く本棚」と
 ばっさり切っています。


 これは情報化時代といわれる
 だれもが多くの知識を持っているはずの
 現代にも通じる課題なのでしょう。


・書物をよく読み、文章力も優れている者・・聖賢の心を知らずに教えているのであれば、そういう人物は取るに足らない小さな儒者に過ぎず、"歩く本棚"とでも呼ぶべきだろう。それに対し、「君子の儒者」とも呼ぶべき立派な儒者は、常に学ぶ者の心を正し、徳のある人間へ導くことに目的を絞っている(p74)


■江戸時代ということもあってか、
 質問のレベルが低いと感じました。


 親方が質素で、先代は贅沢をして
 先代の方が良かった・・
 などという質問があるのです。


 道徳という面で言えば
 江戸時代よりは現代のほうが
 進んでいるようです。


 石田さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・高尚な志とは、どういうことか・・・孔子はこう続けたと『孟子』は記している。「『仁義』に徹することだ。
 たった一人でも罪のない人を殺したら、そこに『仁』はない。自分の所有物でもないものを奪い取るのは、『義』ではない(p60)


・仁とは、「慈愛の徳があって、私心がないこと」(p92)


・商人の売買の儲けは、武士の俸禄と同じ。儲けのないのは、武士が俸禄を受けずに出仕(しゅっし)するようなものだ(p131)


・「利益はこの程度」というような世間一般に共通する取り決めがあってしかるべきではないのか・・商品は、例外なく日々の相場が変動している・・商人が私的に操れるものではない・・「仕入れ値はこれ、利益はこれ」というようには区分しにくい。このことに嘘いつわりはない。それをいつわりだといわれてしまったら売り買いはできなくなる(p137)


・仁愛を行い、正義に背かないように生きていけば、心は安泰になる。自分自身の心が安泰になること以外に、教えの道はないのである(p185)


・仏教の教えであれ、老子や荘子の教えであれいわば、それらは自分の心を磨くための手段なのだから、排除すべき対象ではないということである(p206)


・書物を読むことは、確かに学問である。しかし、書物を読んでも、文学の背後にある「心」まで理解しないと真の学問とはいえないのだ(p215)


・先代(の親方)が仕切っていた時代には、それ相応に楽しみもし、多少は贅沢もしたので借金もあったが、親の死で家督を相続して・・・果報者として生涯を閉じたのだ・・どちらの生き方が正しいのか・・・
 【答】・・あなたは、先代親方が借金を返さずに死んでしまったことを幸いだとでも思っているのか。もしそうであれば、それは「僥倖」(思いがけない幸運)という幸いだ。僥倖という名の幸いは、他人の所有物を盗んでも、人を殺しても、その罪を自覚することなく、遁(のが)れることができた者の幸いである。この幸いは、本来、望んではいけない種類の幸いなのだ(p238)


・孔子も、こういっている。「礼の本質は、吉礼(めでたい儀式)では贅沢に走らず、倹約せよ。喪礼(喪中の礼法)では、儀式にこだわらず、心底から哀悼の意をつくせ」(p249)


・「易」は変化するが、古今を通じて不変なのは「理」(道理・性理・原理)である。その理の観点でいうと、「天地一致」(天と人が一体化)して今日に至っており、人も獣も、それぞれが世代を重ねながら脈々と継いできたのが「理」なのだ(p278)


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石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)
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【私の評価】★★★☆☆(70点)

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■目次

巻之1
 都鄙問答の段
 孝の道を問うの段
 武士の道を問うの段
 商人の道を問うの段
 播州の人、学問の事を問うの段
巻之2
 鬼神を遠ざくと云う事を問うの段
 禅僧、俗家の殺生を譏るの段
 或る人、親へ仕える事を問うの段
 或る学者、商人の学問を譏るの段)
巻之3
 性理問答の段
巻之4
 学者の行状
 心得難きを問うの段
 浄土宗の僧、念仏を勧めるの段
 或る人、神詣を問うの段
 医の志を問うの段
 或る人、主人の行状の是非を問うの段
 或る人、天地開闢の説を譏るの段


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