【書評】「トランプ時代のマネー大動乱~激変する世界経済と日本の選択」長谷川克之
2026/04/16公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
第2次トランプ政権が誕生した背景
著者は日本興業銀行出身で、現在、東京女子大学経済経営学科の教授です。大学では何を教えているのでしょうか。
まず第2次トランプ政権が誕生した背景は、歴史的なインフレ、不法移民の増加、気候変動対策、LGBTQ(性的少数者)の権利など社会正義を振りかざすリベラリズムへの批判があると説明しています。(妥当)
そして、トランプ大統領の関税措置のうち、国際緊急経済権限法を根拠とするものについては、これまでイランや北朝鮮、テロ組織への制裁の根拠であったことから、正当性については疑問があるとしています。(米連邦最高裁で、違法と判断される)
また、トランプ関税の目的は、米国の輸入量を減らして産業のアメリカ国内回帰と経常赤字の縮小としながらも、著者は、逆に関税の影響で輸入価格が上昇し米国経済が失速し、結果として輸入が減少すると予想しています。(妥当)
実際アメリカ経済を見てみると、株式はバフェット指数(GDPに対する株式市場の時価総額の比率)が約220%と高く、株価収益率(PER:1株当たりの利益)もアメリカS&P500は20倍と高く経済が失速すれば、株式市場に調整が入る可能性があるとしています。
不法移民の増加が治安の悪化や犯罪件数の増加につながる、あるいは米国民の雇用機会を奪っていると懸念する声も根強くあります(p23)
覇権国家アメリカに挑戦する中国
アメリカは2017年に「国家安全保障戦略」を発表し、その中で「中国とロシアは米国の国力、影響力、利益を脅かし、米国の安全保障と繁栄を損なおうとしている」と明記しています。実際、中国はイラン、北朝鮮、ロシアと連携を強化し、さらにインドやブラジルなどとの関係も強化しています。
また、オイルダラー(産油国はドルで原油を売り米国債を買う)に対抗し、ロシアは2015年から中国への原油販売を人民元で決済しているという。
一方で、覇権を狙う中国の弱点は、外貨の入口である香港にあります。香港では「カレンシーボード制」というドル・ペッグ制の固定為替相場制を採用しており、香港ではアメリカの金利と連動せざるをえない状況です。
アメリカは香港国家安全維持法に対抗して制定した「香港自治法」で、香港の金融機関に対して、アメリカの金融システムからの排除することができるようになっています。アメリカは中国の「急所」を停止できるカードを持っているのです。
仮に中国経済が不動産不況などで低迷・・・香港は米ドルに連動した(高金利の)金融政策を選ばざるをえない(p159)
脱炭素からアメリカの離脱
トランプ大統領は「エネルギー自立」を掲げ、石油・天然ガスの増産とエネルギー供給網を強化してエネルギー価格を引き下げようとしています。また、トランプ大統領は脱炭素の「パリ協定」からの脱退を命じる大統領令を出し、温暖化対策よりも競争力の維持を優先していることがわかります。
トランプ大統領の姿勢に呼応し、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどが国際的な「ネットゼロ・バンキング・アライアンス」から離脱しました。著者はESG(環境、社会)の視点や、グリーンファイナンス、サステナビルファイナンスが重要であり、アメリカの反ESGの動きを批判しています。
地球温暖化が進み、経済への悪影響が、脱炭素を行わないことで、後になって負担することになると警告するのです。(要検証)
地球温暖化は容赦なく進み、その影響は異常気象や自然災害の激甚化という形で、現実の経済活動を脅かしています・・・脱炭素の動きが足元で停滞すればするほど、後になって私たちは急激な対応を迫られることになります(p221)
中央銀行の独立は手段の独立
著者は、中央銀行は物価を安定させるため独立して金融政策を実施するべきであり、政治家が金融政策に介入すべきでないと主張しています。(要検証)
この著者の主張に疑問を感じるのは、中央銀行の独立は手段の独立であり、目標の独立ではないということをあえて隠しているように見える点です。そもそもデフレを放置したのは、財務省と日本銀行ではないのか。手段の独立を勝手に解釈して、日本経済を長期デフレにしてきたのが日本銀行と考えられているのですから。
また、著者は日本の対内直接投資は対GDP比でわずか5.9%で、日本経済の停滞を生み、政府債務拡大の要因と説明しています。
この著者の主張に疑問を感じるのは、日本の対内直接投資が小さいのは、日本銀行が円高を放置したから、日本の工場が海外に移転してしまったのではないかと感じるのですが、この点はもう少し検証したいと思います。
現在は円安になって、やっと日本への投資が増えていくと考えられます。マスコミは円安を批判していますが、マスコミの反対が正解と考えるとよいのかもしれません。
全体的に表面的な事実の説明が続くので、学生さん用と理解しました。長谷川さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・2025年7月18日・・・「米国ステーブルコインの国家的技術革新の指針と確立に関する法律」が成立しました・・・準備資金の保有を義務づけることとで米国債需要を喚起・・・ドルによる国際決済を維持し・・・トランプ大統領の支持基盤である暗号資産業界への利益誘導(p212)
・日本の対外純資産が2024年時点で533兆円500億円だったと財務省が発表した・・・日本の政府債務は巨額ですが、国債の約88%は国内で消化され、海外投資家の保有比率は約12%にとどまります。したがって、政府部門の対外負債が極端に大きいわけでは必ずしもありません(p237)
▼引用は、この本からです

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長谷川克之 (著)、日本経済新聞出版
【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1部 トランプ・ショックの真実と世界秩序の大転換
第2部 ポスト・トランプ時代の日本の戦略的選択
著者経歴
長谷川克之(はせがわ かつゆき)・・・東京女子大学 現代教養学部 経済経営学科 教授。1988年上智大学 法学部 卒業(猪口邦子国際政治学ゼミ)、1997年 ロンドン大学経営大学院(London Business School, MBA)卒業。1988年日本興業銀行入行(現みずほ銀行)。国際金融調査部、留学、ロンドン支店、調査部等を経て2002年~2021年までみずほ総合研究所(市場調査部長、副本部長、チーフエコノミスト等を歴任)。2022年より東京女子大学 特任教授、2024年より現職。
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