【書評】「サカナとヤクザ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う」鈴木智彦
2026/04/15公開 更新
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
漁獲高が減っているのは日本だけ
魚介類の密漁の取材と称して、築地市場で半年働いたり、北海道の密漁現場を取材した一冊です。魚介類の密漁では、アワビやナマコやカニやシラスが儲かるようです。
密漁は仮に逮捕されても、漁業法違反で3年以下の懲役、または300万円以下の罰金です。無期懲役もある覚醒剤と比較すると、安全で儲かるシノギなのです。
そもそも漁業権は日本にしかない独自の法律です。外国ではそれぞれの漁船に個別漁獲割当が割り与えられ、漁獲量を厳しく管理しているという。魚介類を獲りまくって、漁獲高が右肩下がりで落ち込んでいるのは、先進国の中で日本だけと著者は批判しています。
密漁とは、現在の規制や法律の中で、魚介類の需要に合わせて供給するための、漁師と水産業者と暴力団の共生関係なのです。
密漁が悪いっていっても、そうしないと需要に追いつかない・・・大型店舗は北海道入りしてくると、とうてい割り当ての漁獲高では間に合わないカニやアワビを要求してくる(p96)
アワビの密漁の実態
アワビの密漁規模は、アワビ流通量から漁獲量と輸入量をマイナスして計算すると、およそ45%が密猟アワビだという。アワビを残しておいても、どうせ密猟団に獲られてしまうのだから、獲ってしまおうと日本各地でアワビが枯渇したというのです。
三陸アワビの密猟では、怪しまれないよう地元暴力団に旅館や車を用意してもらい、密漁したアワビも一括で買ってもらうという。密漁されたアワビは、他の地域のアワビや養殖アワビとしてキロ8000円のものなら、5000円から3000円で流通するというのです。
アワビの密猟団は漁師から憎まれている。目撃されたらすぐ通報されます(p23)
カニの密漁の実態
カニの密漁は、日本とロシアが連携しています。ロシア人漁師が漁船をトーゴ船籍やシエラレオネ船籍に偽装し、日本の領海でカニを獲り、船上でボイルされたのち、ロシア産の冷凍ズワイガニとして輸送船が回収して、日本の港に輸送するのです。
ロシア人漁師はカニをロシアの税関を経由せず直接日本に水揚げしているのですが、税関の発行する積出証明書や印を偽造して、正規品として輸出し、関税も払っているのです。
このようにして密輸したカニを日本の水産会社が買い取るという仕組みができているわけです。
ロシア漁船は自らが獲ったカニをロシアの税関を経由せず直接日本に水揚げしていた・・・偽造した書類を使って正規品に密漁品を混入させる(p259)
シラスの密漁の実態
ウナギの稚魚(シラスウナギ)は、キロ100万円から2017年にはキロ470万円にもなったという。日本のシラス取引は表と裏で成り立っており、例えば、2014年宮崎県の養鰻業者が仕入れたシラスは3.5トンですが、宮崎県が許可したシラスは364キロで9割は裏から買っているのです。
裏相場は宮崎県が決める公定価格に連動し、約2倍が裏相場になるという。大きい養鰻業者には、元暴力団担当の刑事を雇っているところもあり、シラスを買おうとすれば、暴力団と関係せざるをえないのです。
香港や台湾や韓国のブローカーもいて、業界誌記者から「台湾・香港ルートに深く斬り込むと東京湾に浮かびますよ」と脅されたという。
漁業は農業と同じように、深い世界があるのだとわかりました。鈴木さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・押収された道具を密漁団が買い戻している・・・官報などには公示して・・押収した漁具一式が競売にかけられ、当事者が買い戻す(p117)
・シーズン中は毎日10トンの密漁ナマコが水揚げされる・・・牛耳っているのは暴力団だ。ヤクザは1キロ当たり100円のみかじめ料を徴収する・・・すべての海岸を、地元暴力団が細かく縄張(しま)割りしている(p97)
・ニュージーランドは下げゼリです。徐々に値段が下がっていって、一番高い金額の人が競り落とす・・・最低落札価格まで誰も入札しないと、セリでは売らず輸出しちゃう・・輸出価格より高い値段ならば国内に売る仕組みです(p316)
▼引用は、この本からです

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鈴木智彦 (著)、小学館
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1章 宮城・岩手―三陸アワビ密漁団VS海保の頂上作戦
第2章 東京―築地市場に潜入労働4ヶ月
第3章 北海道―"黒いダイヤ"ナマコ密漁バブル
第4章 千葉―暴力の港・銚子の支配者、高寅
第5章 再び北海道―東西冷戦に翻弄されたカニの戦後史
第6章 九州・台湾・香港―追跡!ウナギ国際密輸シンジケート
著者経歴
鈴木智彦(すずき ともひこ)・・・1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーになる。
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