「ヤクザと原発 福島第一潜入記」鈴木 智彦
2013/03/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
暴力団専用ライターが、事故のあった福島第一発電所で実際に働いてみたという潜入取材ルポです。読んだことのある部分もあったので、週刊誌の記事をまとめた本なのでしょう。そういう意味では、中身は週刊誌レベルで楽しめます。
まず、汚染水処理装置は、アレバとキュリオンとうい外国企業が入り、その後東芝の設備が入っています。アレバとキュリオンは東芝だったら接合部から漏れがないようシールテープを巻くのに対し、そのまま締めてあるだけ雑な施工であったという。
実際に作業しただけあって、現場のたいへんさもわかります。熱中症になってしまうこともわかる。放射能管理の実態もわかる。思ったより給与が安いこともわかる。ヤクザがいることもわかる。作業の下請けの構造がわかる。日本の社会構造さえも透けて見えるのです。
・熱中症・・・下請け、孫請け、ひ孫請け・・・さらには7次、8次と続くヒエラルキーの中、ピラミッドの底辺に向かうほど現場での発言力は弱くなり、それに比例して無自覚にSOSをためらってしまうのだ。不満があってもたいてはそれを飲み込むしかない(p187)
今も福島第一発電所(F1)で、作業が続けられています。北海道電力の泊原子力の被爆線量に比べ、福島第一の被爆線量は桁違いだという。バスで隣席となった北海道在住の作業員は、「早く仕事を終えて北海道に帰りたい」と言っていたという。
福島第一でも事故前、最大130カウントから180カウントが汚染のリミットでそれ以上汚染したものはすべて、敷地内から出せなかったのが、Jヴィレッジでは1万3000カウントを超えない限り、モノも人も、そのまま出していたというのです。
このようにまだ線量の大きなところも残っており、作業の厳しさは変わっていないはずです。作業する人のためにも、地元の人のためにも、日本のためにも、最悪を想定しながら、対応していただきたいですね。
鈴木さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・九州の原発・・・反対運動なんてないだろう。反対って、いったいどこが反対するのか分からない。電力会社っていうのはどこでも殿様商売っていうか、城下町を作っている。なんだかんだで九州電力関連の仕事しているもんが多いだろうから、反対運動はお約束ってことだ(p243)
・政府は、1Fに限り、年間被曝量の上限を250ミリシーベルトに引き上げた。が、これは素人丸出しの危険な数値のため、現場では嘲笑され、完全無視である。・・・プラントメーカーはそれぞれ、100ミリ、50ミリ、25ミリの上限を再設定した(p62)
・東電の案内でJヴィレッジを視察したところで、現場の実態が分かるはずもない。その程度の実感でヒステリックに「作業員を守ろう」と正論を振りかざしても、作業の足枷になるだけだ。(p224)
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
序章 ヤクザの告白「原発はどでかいシノギ」
第1章 私はなぜ原発作業員となったのか
第2章 放射能vs.暴力団専門ライター
第3章 フクシマ50が明かす「3・11」の死闘
第4章 ついに潜入!1Fという修羅場
第5章 原発稼業の懲りない面々
終章 「ヤクザと原発」の落とし前
著者経歴
鈴木智彦(すずき ともひこ)・・・1966年北海道生まれ。日本大学芸術学部除籍。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーライター。週刊誌、実話誌を中心にヤクザ関連の記事を寄稿している。ジャーナリストでは初めて作業員として福島第一原子力発電所に入った
放射線・放射能関連書籍
「小説1ミリシーベルト」松崎忠男
「世界一わかりやすい放射能の本当の話 完全対策編」宝島社
「復興の日本人論 誰も書かなかった福島」川口 マーン惠美
「放射線医が語る福島で起こっている本当のこと」中川 恵一
「はじめての福島学」開沼博
「ヤクザと原発 福島第一潜入記」鈴木 智彦
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