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【書評】「60歳からの知っておくべき政治学」高橋 洋一

2026/04/17公開 更新
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「60歳からの知っておくべき政治学」高橋 洋一


【私の評価】★★★★★(98点)


要約と感想レビュー


元財務官僚だからわかること

官僚の論理をまとめた一冊です。著者は元財務官僚なので、特に財務省の論理は手に取るようにわかるようです。


まず財務省の論理は、「財源なき減税を行えば、国際的信用が落ち大暴落が起きる」というものです。(本当は日銀を使って、国債を暴落させるのかもしれませんが)かつて第二次安部政権時に消費増税を延期したときも、「国際的な大暴落が起きる」と財務省に脅されたという。


著者はこうした将来的な財源を求める財務省の論理は、赤字国債による減税を避ける理由として作り出されたもので、経済を活性化すれば、税収は後からついてくると説明しています。


財務省はこれまで控除を引き下げることで課税所得を増やし、「ステルス増税」を行ってきました。その点、基礎控除引き上げは「ステルス減税」であり、筋が良いと評価しています。


なぜ財務省が減税で経済活性化をしたくないのか不明ですが、財務省自身は日本テレビホールディングスに3人も役員として天下りさせており、財務省OBの財布は活性化させているのです。


最も簡単に防衛力を高める方法は、防衛相会計課長から財務省出向者を外すことだ・・・防衛庁時代からの古い慣習により、財務省が裏で防衛費の制御を行っており、防衛費をGDP比1%程度に抑えるという論理も同様にその延長戦上にある(p172)

日本銀行と金融機関の闇

日本銀行は、2025年1月に0.25%から0.50%へ利上げし、12月には0.75%まで利上げしました。また、日銀は長期国債の買い入れ額を減らす方針を続けています。この本は2025年9月発行なのですが、インフレ率2%前後という状況で、日銀のこうした金融引き締めを時期尚早として批判しています。


その理由は、国際版コアCPIにあたる「食品・エネルギーを除く総合」が1.6%(現在は2.5%)にとどまっていることから、インフレといっても食品とエネルギーのみが上昇した外的要因によるコスト・プッシュ型インフレであり、物価全体が上昇しているというわけではないからです。


金利を引き上げれば、全体の需要が冷え込み物価は下がります。しかし、食品やエネルギーの価格は海外要因に依存しているので価格は下がらないのです。金融引き締めで不況になり、食品とエネルギーだけは値段が上がったままという最悪のパターンに陥ることを警告しているのです。


そんな金融引き締めを行いながら、日銀は年2.5兆円の税金を銀行に国会の了承なしに与えていると著者は批判しています。これは2025年1月、日銀が金融機関の「日銀当座預金」の金利を0.5%に引き上げたことを指しています。


日銀当座預金残高はおよそ500兆円。その0.5%、年間2.5兆円が政府に納付される「日銀納付金」から差し引かれ、金融機関に配布されているのです。


1990年以降の株式、国債、銀行預金の比較・・・株式(10年保有):平均収益率2.0%、標準偏差6.6%、10年国債・平均利回り1.7%、標準偏差1.8%、銀行預金(10年定期):平均利回り0.9%、標準偏差1.7%・・・財務省は「国債は危険だ」と吹聴する一方で、金融機関は国債の高利回りを享受している(p35)

外国人増加による安全保障の危機

2026年の静岡県熱海市長選へ中国出身の男性が出馬を表明しました。(後に撤回)著者は相互主義という考え方が基本であり、中国人が日本国籍を取得して市長や国会議員になれるのであれば、同様に日本人が中国国籍を取得して中国国内で政治家になれるかどうかが問題で、中国は共産党一党独裁で事実上不可能でフェアではないとしています。


(当たり前のように感じますが、日本で帰化した人がその事実を隠して 国会議員になれる事実が恐ろしい)


中国製EVへのエコカー補助金についても、中国政府が自国メーカーに補助金を出し、さらに日本政府がエコカー補助金を支給して中国製EVの購買を支援していることは、日本の税金で他国を支援する売国行為と批判しています。


不動産については、日本人は相続税の負担から不動産を手放さざるを得ない一方で、中国人は相続税がなく持ち続けると警鐘を鳴らしています。そもそも相続税と所得税の両方を課すことは二重課税であり、マイナンバーによって所得が捕捉されている現在においては、相続税を残す必要性はないと提案しています。


著者は「外国人がわずか90日の滞在で数千万円相当の高額医療を受けられる」ことについて、この問題の原点は2012年、民主党政権下で国民健康保険に加入するには「1年以上」の在留資格が必要とされていたものが、省令改正によって「3か月以上」に短縮されたためと説明しています。


マイナ保険証への批判や抵抗を示す人は、不正利用の余地を狭めることを不都合と感じる一部の層、特に外国人の一部の利用者ではないかという見方もある(p73)

エネルギー安全保障の危機

この本のすごいところは、イランのホルムズ海峡封鎖リスクを予言しているところです。


日本の第7次エネルギー基本計画が再エネ偏重・火力発電軽視の構成になっており、イランによるホルムズ海峡の通過リスクに対応していないことを批判し、著者は中東依存を低減するために、米国から天然ガスを輸入することを提案しているのです。


そしてエネルギー政策とは経済政策であり、同時に安全保障政策であり、米国からのエネルギー購入、小型モジュール炉など次世代エネルギーも含めたエネルギー基本計画の見直しを提言しています。


著者はそれ以外にも、ウクライナの核武装と、日本の核武装の可能性を書いています。また、日本の海底ケーブルが他国により切断される危険性を予言しています。


著者の予言は実現するのでしょうか。最初から最後までしびれる一冊でした。高橋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・経産省の「価格カルテル」・・・かつてタクシー運賃や銀行手数料の事例でも、官庁が一律に料金を指導することで、競争原理が損なわれる事態が生じた・・・レジ袋有料化・・・やがて「天下りカルテル」的な構造が生まれる(p58)


・高校の教育無償化・・・私立高校が勝手に授業料を上げても、その分が補助で賄われるため、実質的に税金で利益を得ているような状態となる・・・外国人が多く在籍する私立高校への補助が拡大する(p141)


・高校の教育無償化・・・本来であれば学生に補助金を渡し、学生がその補助金で授業料を払うかたちが本筋だ(バウチャー制度)・・・ところが日本では最初から学校側に資金を投入するかたちとなっており、教育政策としての合理性を欠いている(p143)


・戦後以降、2022年までの憲法改正回数を多い順に見ると、ドイツ67回、フランス27回、カナダ19回、イタリア19回、中国10回、韓国9回、米国6回・・・一方、日本の改正回数はゼロである(p199)


▼引用は、この本からです
「60歳からの知っておくべき政治学」高橋 洋一
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高橋 洋一 (著)、扶桑社


【私の評価】★★★★★(98点)


目次


1章 令和の政治争点は景気対策
2章 国内外から中韓に浸食される主権
3章 一筋縄ではいかない米ロのハンドリング
4章 政官産にはびこる利権と柵
5章 今さら聞けない政治キホンのキ


著者経歴


髙橋 洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。


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