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ソ連から脱出したスパイがいた「KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ」ベン・マッキンタイアー

本のソムリエ 2021/01/19メルマガ登録
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「KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ」ベン・マッキンタイアー


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

 英国がサッチャー首相の頃、英国の情報機関MI6はソ連のKGB内部でスパイを運用していました。それがゴルジエフスキーです。


 ゴルジエフスキーはデンマークでスカウトされ、KGB内部で昇進し、在ロンドン大使館でKGB支局のトップに内定されました。ところが支局のトップに内定した時、アメリカCIAの情報員がKGBに情報を漏洩し、ゴルジェフスキーが二重スパイである疑いをかけられます。


 ソ連に緊急帰国させられたゴルジェフスキーは自白剤を用いた尋問にも耐え、その後、英国に脱出するのです。


・敵陣深くに潜入した工作員は、自陣に潜むスパイを見つけ出すことがある。しかし、そうして見つけたスパイを全員逮捕して無力化すれば、敵陣にスパイが潜んでいることを敵方に知らせてしまうことになり、情報源は危険にさらされる(p109)


 この本の面白いところは、他国の情報機関が何をしているのか、リアルに分かるということでしょう。


 まず、金、説得、強要、誘惑などの技術を駆使して政治家、官僚、実業家、マスコミなどに「工作員」を潜り込ませるか、または「秘密連絡員」として情報をやり取りできる関係を作り上げる。


 こうした人的資源を活用して、敵国側の内部情報を収集し、KGB側に報告したり、敵国内で偽情報を流したり、自国に有利なプロパガンダを行っているのです。こうした人的資源を作り上げ、敵国内で情報収集し、工作活動を実施できる人が出世するのです。


 スパイ防止法のない日本では、各国のスパイが堂々と工作活動を行っているわけで、公安がこうした人たちを監視しているのでしょう。


・ターゲットにするのは、デンマークの政府職員、選挙で選ばれた政治家、労働組合員、外交官、実業家、ジャーナリストなど・・・情報員は必要に応じて偽情報を流したり、ソ連政府に好意的なオピニオンリーダーと親交を深めたり、ソヴィエト連邦の姿をバラ色に描いた記事をメディアに載せたりする(p62)


 1983年大韓航空機撃墜事件が起きますが、ソ連はアメリカの先制核攻撃を怖れており、その疑心暗鬼から不幸な事件が起きたという。さらに、1983年のNATO軍事演習では、ソ連はNATOの核攻撃があるのではないかと怖れ、核兵器をいつでも発射できる体制を取ってまさに核戦争の瀬戸際にあったのです。


 ゴルジエフスキーはそうしたソ連内部の恐怖の思い込みを西側に伝え、演習の一部を変更し、ソ連側にNATO軍事に核攻撃の意思がないことを伝えたという。ゴルジェ不スキーがいなければ、第三次世界大戦が起きていたのかもしれません。


・KGBは1983年の総選挙でサッチャーを敗退させるべく賢明の努力を続けていた・・・そもそも労働党の(フット)党首は、今もKGBのファイルに「秘密連絡員」として登録されているのだ(p252)


 各国の情報機関は今でも水面下で情報戦争を戦っているのでしょう。


 ロシアの反体制政治家ナワリヌイ氏は神経剤ノビチョクで暗殺未遂。
 ロシアの二重スパイスクリパリも娘とともにノビチョクで暗殺未遂。
 元スパイのリトビネンコ氏は放射性物質ポロニウムで暗殺されました。


 ロシアのプーチンは元KGBですから、「裏切りは絶対に許さない」というKGBの掟に従っているのです。


 マッキンタイアーさん、良い本をありがとうございました。



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この本で私が共感した名言

・スパイをスカウト・・・運命や生来的特徴によって傷ついている者を探せー醜い者、劣等感にさいなまれている者、権力や影響力を求めているが不利な境遇のため挫折した者などだ(p90)


・グーグ将軍・・・西側へ逃亡した数多くの裏切り者や、ニューヨークで反ソ活動を続けるユダヤ防衛同盟の議長を殺害すべきだと提案したことがあると自慢していた(p184)


・イギリスの情報機関とアメリカの情報機関の関係は、兄弟の関係に少し似ている。親密だが競争心があり、仲がよいが嫉妬もし、互いに支え合うがケンカもする・・・傍受した通信情報は共有されていたが、人間を媒介として集められた情報は、それほど頻繁に共有されてはいなかった(p212)


・36年前、キム・フィルビーは昇進してアメリカの首都ワシントンでMI6支局長となり、KGBのスパイとして西側世界の権力中枢で活動していた。そのMI6が、かつてKGBにされたことを、今度はKGBにし返そうとしている(p294)


・靴と衣類に放射性ダストが再び吹きつけられた。このダストは、裸眼では見えないが、特殊な眼鏡を使えば見ることができ、専用のガイガーカウンターを使って追跡できる(p337)


・フィンランド化・・・西側に尻を見せることなく東側にお辞儀をする術(p372)


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▼引用は、この本からです
「KGBの男-冷戦史上最大の二重スパイ」ベン・マッキンタイアー
ベン・マッキンタイアー、中央公論新社


【私の評価】★★★★☆(86点)


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目次

序 1985年5月18日
第1部
 1 KGB
 2 ゴームソンおじさん
 3 サンビーム
 4 緑のインクとマイクロフィルム
 5 レジ袋とマーズのチョコバー
 6 工作員「ブート」
第2部
 7 隠れ家
 8 RYAN作戦
 9 コバ
 10 ミスター・コリンズとミセス・サッチャー
 11 ロシアン・ルーレット
第3部
 12 ネコとネズミ
 13 ドライクリーニングをする人
 14 七月一九日、金曜日
 15 フィンランディア
エピローグ
 16「ピムリコ」のパスポート


著者紹介

 ベン・マッキンタイアー(Ben Macintyre)・・・イギリスの新聞タイムズでコラムニスト・副主筆を務め、同紙の海外特派員としてニューヨーク、パリ、ワシントンでの駐在経験も持つ。著作を原作としてBBCのテレビシリーズが定期的に放送されており、番組ではプレゼンターも務めている。


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