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「カルトの子―心を盗まれた家族」米本和広

2022/08/24公開 更新
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「カルトの子―心を盗まれた家族」米本和広


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

30年間統一協会の信者

オウム真理教、エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)、統一教会、幸福会ヤマギシ会といった新宗教を取材する中で、著者が出会った信者の子どもたちがどうなっているのか、教えてくれる内容となっています。


この本のプロローグでは、30年間統一協会の信者として高額な印鑑や壺を売ってきた人が出てきます。これまで10億円は献金したという。59歳になって、組織の間違いに気づき、退会したというのです。さらに恐ろしいのは、59歳元信者の娘は精神的に不安定で、職場でのちょっとしたミスで自殺未遂をしたというのです。


著者が思い出したのは、ヤマギシ会という集団農場で育った女性です。彼女は18歳でヤマギシ会を去ったのですが、アルバイトをしながら、夜に飲み屋で男と知り合い、交際しては、すぐに男を替えるという生活を送っていたということです。人を幸せにするはずの新宗教の信者の子どもがこのようなことになっているのは、何か間違っているのではないか、というのが著者の思いなのです。


(統一協会の)「神の子」は自殺未遂を図り、ヤマギシ会の子は夜な夜な男を替える、これはいったいどういうことなのか(p12)

ヤマギシ会とは自給自足を目指す団体

子どもを施設に隔離しているという点では、オウム真理教とヤマギシ会となります。オウムでは百人強の子どもが社会から隔離されていましたが、ヤマギシ会では2000人が「ヤマギシズム学園」の高等部で毎日農作業をやらされているという。


ヤマギシ会とは、人の執着心を捨て去れば、争いやいがみ合いのない「全人幸福社会」が出現するとした自給自足を目指す団体です。信者は集団農場で働いているのですが、子どもも集団農場で働かせているのです。さらに執着心を捨てているから、朝から夜まで労働が続くというのです。反抗すれば執着心が取れていないということで、暴力という指導を受けるという。


ヤマギシ会ではそうした子どもの労働、暴力だけでなく、成人した女子が自分の意思とは関係なくヤマギシ会の中の中年男性と結婚させられるということでしょう。結婚をコントロールされるだけでなく村の中で離婚、再婚が頻繁に繰り返され、統一教会と似て、非常に性的に乱れている印象が強いのです。


(ヤマギシ会で)竹刀で殴られたり、背中に熱湯をかけられたり、池の中に突き落とされたり。いっぱいある(p189)

統一協会の合同結婚式に参加しないと地獄に落ちる

統一協会の二世については、日本だけで10万人を超えるのではないかと推測されています。信者の家族は全財産を献金するだけでなく、霊感商法や商品販売、政治家の手伝いに駆り出され、家族と向き合う時間が少ないというのです。統一教会の献金ノルマは、2000年にはなんと一冊3000万円もするという文鮮明の言葉を集めた本の販売で1700冊の本が売れたという。それだけで510億円の資金が日本から朝鮮に流れているのです。


また、統一協会の文鮮明は「自分の思いのままに結婚すれば行く先は地獄であり、自分の思いのままにでなくて結婚すれば行く先は天国なのです」と信者に語りかけ、合同結婚式に参加しないと地獄に落ちると脅しています。そして、統一協会の合同結婚式で結婚することになった韓国の女性が文鮮明の長男、孝進の愛人だということがわかり、自殺未遂を図った青年もいるという。信者の中では有名な事件らしいのですが、統一協会の中での性的な乱れを示していると考えられています。


問題のある宗教は、子どもにまで影響を与えるということだと思いました。関係する人たちの人生を大きく変えるのです。米本さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・麻原は「オウムでは幼稚園から東大に入れる能力が身につく」と答えたという(p24)


・入浴の仕方や身体の洗い方を知らず・・・パジャマに着替えることさえできなかった・・オウムの子は、まるで野生児そのものだった(p45)


・(ヤマギシ会の)暴力をこえた暴力・・・勉強時間のせいげん、部活動の禁止、きょうせい労働、発言のせいげん(p186)


・(ヤマギシの)男女交際は禁止で、女子は高等部を出て2,3年すると・・・「調正結婚」をしなければならない・・調正係が提案する男性は40歳代が多かった・・村では離婚、再婚が頻繁に繰り返されており、離婚した男性は若い女性との再婚を希望する(p211)


▼引用は、この本からです
「カルトの子―心を盗まれた家族」米本和広
米本和広、論創社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

プロローグ 「神の子」の骨折
第1章 超人類の子、オウム真理教
第2章 エホバの証人の子、ものみの塔聖書冊子協会
第3章 神の子、統一教会
第4章 未来の革命戦士、幸福会ヤマギシ会
エピローグ ママの魔法がとけますように



著者経歴

米本和広(よねもと かずひろ)・・・1950年、島根県生まれ。ルポライター。横浜市立大学卒業。「繊研新聞」記者を経て、フリーに。著書に『新装版 洗脳の楽園』、『我らの不快な隣人』(以上、情報センター出版局)、『教祖逮捕』(宝島社)など多数。


統一教会関連書籍

Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶」仲正 昌樹
統一教会の内幕―なぜ若者たちは新宗教に走るのか」エール出版社
統一教会とは何か―追いこまれた原理運動」有田 芳生
統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福」櫻井 義秀, 中西 尋子


ヤマギシ会関連書籍

「「ヤマギシ会」と家族: 近代化・共同体・現代日本文化」黒田 宣代
「洗脳の楽園―ヤマギシ会という悲劇」米本和広
「カルトの子―心を盗まれた家族」米本和広


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