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「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える」高橋洋一

2020/08/11公開 更新
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「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える」高橋洋一

【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

情緒的な報道ばかり

「森友学園」問題で資料の改ざんで自殺者まで出した財務省理財局の資金企画室長だった著者の一冊です。 内閣参事官を歴任後、2008年に退官して本書の発行が2010年ですから、現役時代に言いたいことを書きまくっている印象です。


政治的な問題について、例えばダム建設を継続するのか、中止するのか。ワクチンを接種するのか、しないのか。日本の財政は危険なのか、安全なのか。こうした日本の問題について、日本のマスコミは数値や理論ではなく情緒的、倫理的な側面から報道することが多く、著者には不満なようです。


例えば財務省は日本の借金を強調して、日本の財政は危険なので増税が必要とのロジックを立てますが、著者は借金と同時に資産を見なければ、日本の財政が危険なのかどうかはわからないちのが著者の主張です。実際、財務省は外国には日本の財政は問題ないと説明して、国債を売り込んでいるのです。


(日本財政の)バランスシートを見ていくと、日本には800兆円の借金と同時に500兆円の資産があることがわかります・・・300兆円は消えてしまったことになります・・・一方、資産の500兆円は何かといえば、道路や役所の建物などの200兆円と、特殊法人や独立行政法人への貸付金や出資金が300兆円です(p120)

天下り先を作るのが優秀な官僚

著者の持論は次のとおりです。
・日本の財政は、バランスシートを見る。
・特殊法人や独立行政法人への貸付金が危ない。
・郵政民営化は、官僚の反撃で国営に逆戻り。
・予算を使って天下り先を作るのが優秀な官僚。
・所得、資産の把握で、法人税を減税すべき。
・テレビは電波オークションで入札とするべき。
・地方分権は、特別会計の地方移管からがいい


天下りでいえば、ETCを管理運営するのは、財団法人道路システム高度化推進機構で国交省の天下り先です。外国に比べて日本のETC機器の値段が高いことは有名です。アメリカでは、数千円のデポジットや無料で取り付けるレベルなのです。天下りできるように役人がETCをハイスペックな規格にしたのが原因であると著者は説明しているのです。


電波オークションでいえば、アメリカでは年平均の電波利用料収入が約240億円、周波数オークション収入は年平均4600億円。イギリスでも電波利用料収入は約213億円で、周波数オークションの収入は年平均2250億円。一方、日本では、電波利用料収入は650億円、周波数オークションの収入はゼロなのです。


電波オークションや特別会計に切り込むなど業界のタブーをよく知っており、さすが元財務省キャリア官僚だと思いました。このまま官僚を続けていても何も変えることはできない、と考え民間に下ったのでしょうか。


地方分権のスタートとしては、特別会計の地方移管がいいと思います。たとえば、国交省の社会資本整備事業特別会計の中の空港整備勘定を分割して地方へ委譲すれば、地方航空局等の5000人くらいを地方へ移管できるでしょう。また、厚生労働省の労働保険特別会計を分割して地方へ委譲しても、都道府県労働局等の1万人くらいを地方へ移管でき、ハローワークも地方機関との統合で効率化できるでしょう(p190)

官僚の官僚による官僚のための国

日本の官僚は成長戦略という立て前で、特定産業に予算を付け、そこに特殊法人を作って天下り先を確保し、政治家は票を押さえるということを続けてきたという。本書の提言内容を読んで、日本はやはり官僚の官僚による官僚のための国なのだと思いました。


現在、著者は、政策工房会長、官僚国家日本を変える元官僚の会幹事長などそうした構造を変えたいと考えているようです。刺されない程度にゆっくりやっていただきたいと思います。高橋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・国交省をはじめ中央省庁には地方支分部局というものがあり、国家公務員30万人のうちなんと20万人がここにいます。もっとも有名なのが地方整備局で、河川改修や大規模なダム工事、道路整備などをやっています・・・実は地方支分部局というのはパラダイスです。特別会計で予算はたっぷりある、地方なので中央の上司の監視はない、地方の首長などからは中央からの人ということで大事にされる、もちろん業者は群がって下にも置かない扱いです(p184)


・郵政民営化・・・金融のプロを三顧の礼で迎え、郵政事業が一体的に成り立つ経営をしてもらう体制をつくりました・・・そのうちかなりの人びとはすでに日本郵政を去り、残ったのは役人ばかりです・・・なにしろ、会社のキモは人事ですが、それを民間人ではなく役人がやっているのですから、これでは民間会社とはいえず、役所そのものです。本当に「デキる」民間人は、役所体質に合わないでしょうから、どんどん追い出されています(p114)


・税務署長が島の漁協組合長や郡部の農協組合長と交渉して、今年の税金はいくら払うなんてことも決めていました・・俗にいう「クロヨン」(964.サラリーマンは所得の9割を補足されているが、商店は6割、農業は4割しか補足されていないことを指す)は実感として本当でした・・・個人所得の補足、資産の補足が進めば、それに従って法人税は下げていくべきです。株主の個人資産で課税しながら法人の内部留保に課税することは、理屈の上からいえば明らかに二重課税です(p165)


・多くの国では、欧米諸国が平均して年1~3%の物価上昇となることから、自国の物価上昇率を同じく1~3%に設定して、物価を為替の双方を安定させることを目指しています(p74)


▼引用は、この本からです
「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える」高橋洋一
高橋洋一、光文社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

まえがき 公共事業、やめるべきか続けるべきか、それが問題だ―「八ッ場ダム」を例に
第1章 民主党の政策の大問題
第2章 社会保障制度の大問題
第3章 税の大問題
第4章 地方分権の大問題



著者経歴

高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員などを経て、2006年から内閣参事官。金融庁顧問、株式会社政策工房代表取締役会長、2010年より嘉悦大学教授。著書多数。


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