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「志ある経営に「近道」あり 会社を発展させる「幹部」の処世訓66項」井原 隆一

2020/05/12公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

著者は14歳で埼玉銀行に入行。20歳のとき年収の10倍以上の親の借金を負いました。昼夜働きながら借金返済する中で、著者は自分の人生を次のように計画したという。20代は法律の勉強。30代は宗教、哲学、歴史の勉強。40代は経済、経営の勉強。著者は最年少で課長、常務、専務を歴任した後、数々の倒産寸前の会社を無借金の優良会社に再建しています。


最年少で出世していった著者ですが、傲慢になって、敵を増やすことはなかったようです。著者は、「勝って心が弛み、満ちて倦(う)むようでは最後の勝利を待つことはできない。昔の戦いでは先に勝ったほうが亡びる」という中国古典の学びを紹介しています。


・私は20歳のとき一念発起して生涯設計をたてた。生涯目的でもある。20歳から50歳までの30年間を10年刻みの自己啓発期間として法律、哲学、経済、経営を学んだ(p23)


この本の面白いところは、経営のコツを中国故事や四字熟語を示しながら教えてくれることでしょう。例えば、役員のときに管理職の集まりで、もっとも大切なことは何かと質問され、著者は「敬と傲(ごう)」と答えたという。"敬"は「己を慎み、人を敬う」こと。


"傲"とは傲慢であり、人に傲慢であれば、礼儀を欠き、不評をかい、不信を招き、ついに己を失うと話したという。こうした話が咄嗟に出てくるのは、常に学び、その活用を考え、実務に応用している著者であったことを示しているのでしょう。


・読んで考え、反省、精進の糧とするなら真の読書家、勉強家といえるのである。そうあるためにはどうあるべきか。私は私なりに「自分のために読み、考え、行う」を貫いてきた(p54)


単なる知恵だけではなく具体的に企業経営で活用した事例、そのとき参考とした中国故事を組み合わせて教えてくれます。例えば、方針はあるものの精神教育がなされていない会社を「画竜点睛」「形造って魂入れず」を紹介して、肝心の意識の改革の大切さを強調しています。京セラのフィロソフィー教育をイメージしました。


また、「人に千日の好なく 花に百日の紅なし」との言葉を紹介し、いつも好いことが続くことはないということであり、常に堅実に摂生をつづければ人も企業も長生きするとしています。著者自身が「歴史を学び、反省して身を正し、現在の仕事に役立たせることでなければ学んだ価値がない」ということを言行一致しているところがスゴイのでしょう。


古い本なので、中古本もないようです。井原さんの書籍はすべて高レベルなのでぜひ読んでみていただきたいと思います。井原さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・"志小なれば足り易く、足り易ければ進出なし"の戒めのとおり、進歩のないところに身を寄せる者はないものである・・・人材の集まらないのを経営規模の小さいことを理由にしているが、むしろ、経営する者の志が小さいことが理由ではないか(p13)


・執念のある人は、才能がない、資金がないなどと嘆くことはない。なければ求めて得ればよい。求められなければ、己の持つ才覚、労力を引き出して使えばよいと考える(p26)


・苦労して得た金には金利の他に、知恵、注意力、忍耐力、先見力、自信など、心に利がつく。この心利は、さらに将来物心両面の利を生むことになる(p31)


・私は、判断、決断、即断行の勇といって自分を戒めている。特に即断行を加えたのは、判断、決断は誰でもするが、直ちに実行に移す者は稀である(p35)


・社員が喜ぶようであれば、当然にやる気を起こし、組織も自ら活性化す。一方、顧客が喜ぶような商品を作り、安く提供するようであれば海を渡っても買いにくる。このように考えると、会社発展の原点は「近き者を喜ばすことにある」と言える(p52)


・現職時代、中間管理職を前にして言ったものである。「月に一冊の本も読まない人間は、いますぐ名刺を社長に返上してこい」と。知的栄養補給を怠っている人間が多くなれば、会社自体が栄養失調になるからだ(p58)


・癌は自覚症状がないから恐ろしいというが、会社にも癌と同じように気づかないうちに会社を蝕む病理が忍び込んでいる・・一つは、ピンチを脱した後のやれやれ気分である・・・次に気づかないコストアップがある。毎年わずかずつでも物価が上がり、賃金も上がる(p63)


▼引用は下記の書籍からです。

井原 隆一、大和出版


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第1章 志―人は志さえあれば何事もついには成し遂げることができる。たとえ途中に困難があっても
第2章 智―物事の道理をわきまえている人は、事にあたって迷わない。また判断を誤ることもない
第3章 仁―仁の人には私心がない。恥じるところがないから正義を断行し事を行うにためらわない
第4章 勇―勇猛で決断力に富むことはよいが、勇気を頼んで行動すれば他人の恨みを受けやすい
第5章 信―まことのこもった言葉は表面を飾らないゆえ、信頼できる



著者経歴

井原 隆一(いはら りゅういち)・・・1910年生まれ。14歳で埼玉銀行に入行。20歳で父親の莫大な借金を背負い、銀行から帰ると家業をこなし、寝る間も惜しんで借金完済。その間、並はずれた向学心から独学で法律、経済、経営、宗教、歴史を修めた。最年少で課長に抜擢される。証券課長時代にはスターリン暴落を予測し、直前に保有株式証券をすべて整理。 経理部長時代には日本で初めてコンピューターによるオンラインを導入する。各部長、常務、専務を歴任。1970年、大赤字と労働争議で危地に陥った日本光電工業に入り、独自の再建策を打ち出し短期間に大幅黒字無借金の超優良会社に甦らせる。その後も数々の企業再建に尽力。名経営者としての評判が高い。


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