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「【新装版】危地突破の経営」井原隆一

2020/01/21公開 更新
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「【新装版】危地突破の経営」井原隆一


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

著者は埼玉銀行に夜間高卒で入社。20歳のとき年収の10倍以上の親の借金を 負うこととなるが、夜も働きながら完済しました。借金返済に四苦八苦する中、著者は人生を次のように計画したという。
 20代は法律の勉強
 30代は宗教、哲学、歴史の勉強
 40代は経済、経営の勉強
 50代は蓄財
 60以上は晴耕雨読。
これは大卒の銀行員に負けてなるものか、という志を持ったからだという。著者は頭髪が薄くなってきた自分をして「学歴なし、地位なし、カネなし、頭髪もなければ青春もなし」と自虐表現しています。


しかし、こうした運命に立ち向かうのは自分以外にいないことに気づき、こうした境遇を一日も早く脱出しようと考えたのです。そうした強い反発力から結果して著者は、埼玉銀行の専務にまで出世しているのです。


・危地突破は準備にあり・・・準備の楽しさとは、結局のところ、成果を期待する悦びがあるからだろう・・私は20才のとき自分なりの生涯効率計画を立てた(p279)


銀行を退任後、著者は労働争議、不良品などで今にも倒産しそうな会社に入り、再建を手伝います。著者は危地においてはトップの心持ち方、つまりトップの志、覚悟しだいだという。この会社をどうしたいのか。どうやってこのピンチから脱出するのか。社員はトップを見ているのです。つまり志を抱いている人間は、強い目的意識を持っているがゆえに自然に態度に現れ、人の心を捉えるというのです。


そして、だれを出世させるのか、何を褒め、何を罰するのか、仕事を任せて、責任を取れるのか、箴言をいかに受け止めるのか。そうした判断ができるための準備、トップの人間形成がもっとも大切だという。特に、指導者が部下にやる気を起こさせる方法としては、「信じ任せ、責任は自分で取ること」と説明しており、WBCの侍ジャパンの栗山監督と同じことを言っていることが印象的でした。


・危地に陥ることは、いわば天の下す試練であって、これを乗り越える者にだけ、次の進路を示してくれると考えたい(p83)


トップしだいで会社は成長し、または赤字にもなり倒産もするのです。例えば、著者の関係したいくつかの業績が不振の会社の共通点は、従業員が「棲みよい会社」であったという。つまり、怠けても、規則に反しても、経費の公私混同しても、不良品を山積みにしても誰からも文句を言われることもないし、罰を受ける心配もない会社だったのです。


ところが、この公平な必賞必罰が、トップにとって最も不可欠であるにもかかわらず、最も行い難いことでもあるというのです。著者は中国の「秀れた君主は、刑と徳の二つの柄を握っているだけで部下を用い活かすことができる」ということを引用し、「柄」とは動かす力つまり権力の意味で、「刑」とは部下に罰を加えること、「徳」は部下に賞を与えることで、必賞必罰の重要性を説明しています。


著者の経験だけでなく、中国古典を引用しながら経営者への覚悟のすすめでした。トップは経営の勉強しなければならないのです。


この本は「読書のすすめ」の清水さんのご紹介で読むことができましたので、ぜひ「読書のすすめ」で購入ください。井原さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・私は、ほんとうの楽天主義者とは、「不可能のカベは破ることができる」と信じて、それに挑む人間と理解している(p8)


・「麒麟地に墜ち千里を思う」、秀れた馬は生まれ落ちたときから千里を走る気概をもっている。人間は小さいときから大きな志をもっていなければならないという教えである(p89)


・いつの世にも賢人がいなかったわけではない。その賢人の言うことを聞かなかったから、箴言を聞く立場から追われるのである(p232)


・トップを正す者はいないようだが、実は天が代わってこれを正すようである。誰にもわかるまい、わかるはずがないと思ってやった悪事も、いつのまにか、どこからともなく知れ渡る(p139)


「【新装版】危地突破の経営」井原隆一
井原隆一、日本経営合理化協会


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

第一章 危地に臨むトップの心構え
第二章 志気を奮い立たす
第三章 部下に希望の火を灯せ
第四章 賞罰と志気
第五章 全社統率の決め手
第六章 危地突破は準備にあり
第七章 トップの自己形成
第八章 他山の石



著者経歴

井原 隆一(いはら りゅういち)・・・1910年生まれ。14歳で埼玉銀行に入行。20歳で父親の莫大な借金を背負い、銀行から帰ると家業をこなし、寝る間も惜しんで借金完済。その間、並はずれた向学心から独学で法律、経済、経営、宗教、歴史を修めた。最年少で課長に抜擢される。証券課長時代にはスターリン暴落を予測し、直前に保有株式証券をすべて整理。 経理部長時代には日本で初めてコンピューターによるオンラインを導入する。各部長、常務、専務を歴任。1970年、大赤字と労働争議で危地に陥った日本光電工業に入り、独自の再建策を打ち出し短期間に大幅黒字無借金の超優良会社に甦らせる。その後も数々の企業再建に尽力。名経営者としての評判が高い。


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