「人の用い方」井原 隆一

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人の用い方

【私の評価】★★★★★(93点)


●20歳で年収の10倍以上の借金を背負った
 井原 隆一氏は、金なし、学歴なし、銀行の収入では
 利子も払えないという状況に陥ります。


 そのような状況でありながら、
 井原 隆一氏は、自分の生涯を次のように設計しました。


 ・私は二十歳のときに生涯設計として、
  二十歳代は法律の勉強
  三十歳代は宗教、哲学、歴史の勉強
  四十歳代は経済、経営の勉強
  五十歳代は蓄財
  六十歳以上は晴耕雨読と定め、また生涯信条として、
  厳しさ、時代の変化、自己能力の限界、疑問(先見)の
  四つに挑戦することを定めた。(p205)


●現在なら、自己破産するような状況のなかで、
 このような生涯設計を作る人が、
 はたしているでしょうか?


 その後、著者は、昼は銀行、夜は畑仕事をしながら、
 勉学に励み、小学校卒ながら
 最年少課長に抜擢されます。


 ・楽天主義というと、困難も知らず
  呑気にかまえている人のことをいうが、
  真の楽天主義とは、「不可能の壁は破れる」と信じて、
  それに挑む人間と理解している。(p353)


●この本では主に経営者としての
 心得が説明されていますが、
 その要諦は、賞罰のバランスのようです。


 厳しい中に、心温まるものがある。
 優しさの中に、厳しい原則を持っている。
 そうした相反する要素が、
 リーダーには必要なのです。


 ・『言志四録』に・・・(賞罰は世間の情勢次第で重くも軽くも
  すべきであるが、その割合は賞を十中の七、
  罰を十中の三程度にするのがよい)とある。(p168)


●そして、トップが気をつけるべきことは、
 自己過信、つまり、傲(おごり)であるといいます。


 調子の良いときにこそ、将来の禍根に備えて、
 準備することこそ、
 大切であるということです。(これが実に難しい)


 ・「人生の大病は、只だ是れ一つの傲(おごり)の字なり」
  という言葉がある。人の一生でいちばん害となるのは
  傲(おごり)の一字につきる、という意味である。(p66)


●この本を読んでも、すぐに
 名経営者にはなれないでしょう。


 ただ、みずからがリーダーの立場に立ち、
 壁にぶつかったときに、
 「あっ、この状況はあの本に書いてあったことだ」と
 気づくことが大切なのだと思います。


 ・何ごとによらず、実践して学び、学んで実践することは、
  立派な成果を得るためには欠くことができない。
  学んで行わないのは学ばないのと同じで、
  行うために学ぶのである。(p219)


●リーダーとして普遍の法則を教えてくれる不朽の名著です。
 経営者、企業のリーダーとなる人にお勧めします。


 ★5つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・昔の大名は足軽のわらじの裏まで知っていなければ
  ならなかった。しかし、足軽の仕事をしてはならない。(p27)


 ・何をいわれても、どんなことに出会っても、
  すべて自己成長のためと思えば苦も楽しみになる。
  給料を与えて自分を成長させてくれるのが
  会社と考えれば不平不満も吹き飛ぶ。(p39)


 ・とかく人間は小才を誇り、小成を鼻にかけ謙虚を忘れる。・・・
  身を慎み、へりくだっているような人からは
  底知れない力を感じるものである。(p60)


 ・昔、兵を率いる将は温情を持って教育し、
  平素から軍の規律の徹底につとめて統制を図った。
  つまり、愛情のなかにも厳しさを
  忘れてはならないということである(p110)


 ・よく「それは理想論だ」「困難だ」「不可能だ」といって
  片づけたがる人もあるが、これでは多くの人を率いることも
  不可能になるだろう。志をたてても困難も厳しさもない、まして
  行き詰まることもないというような志は、だれにもできる平易な
  ことでしかない。そんな志ならたてないほうがよい。(p126)


 ・公利、私利の混同の原因は、会社の私物化にある。会社に
  百%出資していたとしても会社は公的なもの、私物ではない。
  そこを履き違えるから混同がおこる。(p139)


 ・好況とは、不況のために天が与えてくれたものだ。・・・
  いついかなる災害にみまわれるかもしれない。
  そうした万一の場合も含めて好況時に備えておくのが
  経営責任というものだ。(p143)


 ・人生成功の近道は歴史、言い換えれば
  先賢の知恵を借りることにある。
  ところが、合理主義を唱えている人であっても、
  「読書など忙しくてやれない」という。
  忙しいから学ぶのであるといっても理解できない(p223)


 ・私の日課を孫が、「学校の時間割りのようだ」
  といっていたが、在宅日の私の日課は起床から就寝まで、
  何から始めて、終わりは何というように決まっている。・・・
  早寝、早起きは若いころからのもの。
  それに会社勤め時代から、日曜や休日というものがない。
  平日どおり起きて、働き、寝るわけだ。
  読書、執筆はもっぱら午前中にしている。(p334)


 ・ある人は、
  「最高の地位につくと、かねの力が見えなくなる。
  自由に使えるからだ。次に人材が見えなくなる。
  おべっかをいう人間が集まって、
  真の人材が近寄りがたくなるからだ。
  こうなると最高権力者は野たれ死にする
  ことになる」といっている。(p433)


▼引用は、この本からです。

人の用い方
人の用い方
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井原 隆一
日本経営合理化協会出版局
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【私の評価】★★★★★(93点)



■著者紹介・・・井原 隆一(いはら りゅういち)
 
 1910年生まれ。14歳で埼玉銀行に入行。
 20歳で父親の莫大な借金を背負い、
 銀行から帰ると家業をこなし、
 寝る間も惜しんで借金完済。

 その間、並はずれた向学心から独学で
 法律、経済、経営、宗教、歴史を修めた。
 最年少で課長に抜擢される。

 証券課長時代にはスターリン暴落を予測し、
 直前に保有株式証券をすべて整理。
 経理部長時代には日本で初めて
 コンピューターによるオンラインを導入する。
 各部長、常務、専務を歴任。

 1970年、大赤字と労働争議で危地に陥った
 日本光電工業に入り、独自の再建策を打ち出し
 短期間に大幅黒字無借金の超優良会社に甦らせる。

 その後も数々の企業再建に尽力。
 名経営者としての評判が高い。


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