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「人の用い方」井原 隆一

2006/12/26公開 更新
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人の用い方


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

20歳で年収の10倍以上の借金を背負った井原 隆一氏は、金なし、学歴なし、勤める銀行の収入では利子も払えないという状況に陥ります。そのような状況でありながら、井原 隆一氏は、自分の生涯を次のように設計しました。二十歳代は法律の勉強、三十歳代は宗教、哲学、歴史の勉強、四十歳代は経済、経営の勉強、五十歳代は蓄財、六十歳以上は晴耕雨読と定めたのです。また生涯信条として、厳しさ、時代の変化、自己能力の限界、疑問(先見)の四つに挑戦することを定めたのです。


現在なら、自己破産するような状況のなかで、このような生涯設計を作る人が、はたしているでしょうか?その後、著者は、昼は銀行、夜は畑仕事をしながら、勉学に励み、小学校卒ながら最年少課長に抜擢されるのです。著者は、何をいわれても、どんなことに出会っても、すべて自己成長のためと思えば苦も楽しみになると考え、努力したという。給料を与えて自分を成長させてくれるのが会社と考えれば不平不満も吹き飛ぶというのです。


・楽天主義というと、困難も知らず呑気にかまえている人のことをいうが、真の楽天主義とは、「不可能の壁は破れる」と信じて、それに挑む人間と理解している。(p353)


この本では主に経営者としての心得が説明されていますが、その要諦は、賞罰のバランスのようです。厳しい中に、心温まるものがある。優しさの中に、厳しい原則を持っている。そうした相反する要素が、リーダーには必要なのです。これは『言志四録』に、褒めるを7割、叱るを3割にするとよい、と書いてあったので、それを参考としたという。


同じように日本の戦国の世でも、兵を率いる将は温情を持って教育し、平素から軍の規律の徹底につとめて統制を図ったという。つまり、愛情のなかにも厳しさを忘れてはならないということなのです。三十代に学んだ哲学、歴史の勉強からそうした知見を得たのです。


・『言志四録』に・・・(賞罰は世間の情勢次第で重くも軽くもすべきであるが、その割合は賞を十中の七、罰を十中の三程度にするのがよい)とある。(p168)


そして、トップが気をつけるべきことは、自己過信、つまり、傲(おごり)であるといいます。調子の良いときにこそ、将来の禍根に備えて、準備することこそ、大切であるということです。これが実に難しい。多くの本に、傲(おごり)こそが最大の人生の害となるものであると書いてあります。気を付けるべきとわかっているのに、傲(おごり)を避けるのが難しいということなのです。


言い方を変えると、最高の地位につくと、自由に使えるから金の力が見えなくなる。次におべっかをいう人間が集まって、真の人材が近寄りがたくなるから人材が見えなくなる。こうなるとトップは駄目になってしまうというのです。また、株式を100%所有していたとしても会社は公的なもの、私物ではないと断言しており、会社の私物化が会社を駄目にするという。


・「人生の大病は、只だ是れ一つの傲(おごり)の字なり」という言葉がある。人の一生でいちばん害となるのは傲(おごり)の一字につきる、という意味である。(p66)


著者は書籍や先人に学んで実践し、実践してみてはまた学ぶことが大事だとしています。学んで行わなければ学んだ意味がないし、実際に行ってみなければ自分に合っているのかどうかさえわからないからです。ところが、「読書など忙しくてやれない」というビジネスマンが多いことに警鐘を鳴らしています。


この本を読んでも、すぐに名経営者にはなれないでしょう。みずからがリーダーの立場に立ったときや、壁にぶつかったときに、「あっ、この状況はあの本に書いてあった」と気づくことが大切なのだと思います。リーダーとして普遍の法則を教えてくれる不朽の名著です。経営者、企業のリーダーとなる人にお勧めします。★5つとしました。


この本で私が共感した名言

・昔の大名は足軽のわらじの裏まで知っていなければならなかった。しかし、足軽の仕事をしてはならない。(p27)


・とかく人間は小才を誇り、小成を鼻にかけ謙虚を忘れる。・・・身を慎み、へりくだっているような人からは底知れない力を感じるものである。(p60)


・よく「それは理想論だ」「困難だ」「不可能だ」といって片づけたがる人もあるが、これでは多くの人を率いることも不可能になるだろう。志をたてても困難も厳しさもない、まして行き詰まることもないというような志は、だれにもできる平易なことでしかない。そんな志ならたてないほうがよい。(p126)


・好況とは、不況のために天が与えてくれたものだ。・・・いついかなる災害にみまわれるかもしれない。そうした万一の場合も含めて好況時に備えておくのが経営責任というものだ。(p143)


・私の日課を孫が、「学校の時間割りのようだ」といっていたが、在宅日の私の日課は起床から就寝まで、何から始めて、終わりは何というように決まっている。・・・早寝、早起きは若いころからのもの。それに会社勤め時代から、日曜や休日というものがない。平日どおり起きて、働き、寝るわけだ。読書、執筆はもっぱら午前中にしている。(p334)


▼引用は、この本からです。
人の用い方
井原 隆一
日本経営合理化協会出版局
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【私の評価】★★★★★(93点)


目次

会社発展の決め手
部下の心を知る
仁と人心掌握
恕の第一は会社の安泰成長
トップの魅力と人間尊重
志は易きに求めず、事は難きを避けず
賞罰の公平と統率力
信義の魅力
識見と果断
勇気はトップの必須条件
創造力と戦略
経営者の先見力
トップの気力
自己能力の限界挑戦
将の威厳と陣頭指揮
部下を信頼せよ
忠言は会社の名医
己の敵を知る
功は下に責は己に
寛容と人望
備えあれば憂えなし
苦労人の味


著者経歴

井原 隆一(いはら りゅういち)・・・1910年生まれ。14歳で埼玉銀行に入行。20歳で父親の莫大な借金を背負い、銀行から帰ると家業をこなし、寝る間も惜しんで借金完済。その間、並はずれた向学心から独学で法律、経済、経営、宗教、歴史を修めた。最年少で課長に抜擢される。証券課長時代にはスターリン暴落を予測し、直前に保有株式証券をすべて整理。 経理部長時代には日本で初めてコンピューターによるオンラインを導入する。各部長、常務、専務を歴任。1970年、大赤字と労働争議で危地に陥った日本光電工業に入り、独自の再建策を打ち出し短期間に大幅黒字無借金の超優良会社に甦らせる。その後も数々の企業再建に尽力。名経営者としての評判が高い。


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