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「日本の「老後」の正体」高橋 洋一

2019/04/15公開 更新
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日本の「老後」の正体 (幻冬舎新書)


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 高橋さんの持論であるデフレの原因が日銀の金融政策にあること、国の借金はそれほど危機的ではないこと、消費税増税で税収は減ることに、年金の話題をプラスしたものでした。


 年金の危機については、破綻するわけではなくもらえる金額が小さくなる可能性はあるというもの。そのため私的年金で手数料の低いものを選んで、積み立てておくことをお勧めしています。


・「国民年金は未納率が4割もあるから危ない」と、年金破綻を危惧する声もある・・・本当に支払っていない人は・・約3%しかいないんだよ・・・特例として保険金を免除されている人を「未納」扱いして、「未納率が高くて大変」と騒ぎ立てるのは、違和感を覚えるよね(p209)


 日本銀行は、日本経済がデフレから脱しようとするタイミングで、「ゼロ金利解除」や「量的緩和解除」「CP・社債買入停止」といった金融引き締めを行ってきました。著者はその結果、経済の腰を折り、多くの自殺者を増やしてしまったと批判しています。


 黒田バズーカ砲で、やっと日本のGDP、物価、求人が増えています。大蔵官僚時代に金融緩和を主張していた著者にしてみれば、これまでの引き締め政策によって日本はデフレ経済を脱出できませんでした。この結果についてだれが責任を取るのかという思いなのです。そして残る心配は、自民党が野党のときに初心者政権が騙されて消費税増税を決めており、景気を腰折れさせ続けていることです。


 消費税増税でトータルの税収は減るのですから、本質は所得税や法人税を減らそうとしているのでしょうが、著者の考えは消費税増税は過去の実績から経済が収縮し税収が減ることは明らかであり、もう少しインフレ傾向が進んでから実施または中止したほうがよいと提案しています。


・日銀が黒田・岩田体制になってから6年間で、実質GDPは498兆円から533兆円に増え、有効求人倍率は0.83倍から1.63倍に、消費者物価指数も‐0.2%のデフレだった水準から、+0.7%というプラスの水準に移行した(p89)


 思ったより年金の記載が少ないという印象でした。景気が良くなれば年金問題も自然と解消します。政権批判ばかりのマスコミには期待できませんので、私たちは自ら財務省と日銀の動きに注意しなくてはならないのでしょう。高橋さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・「年金は将来、破綻する」といった言説を真に受けて、年金を払わないでいるのは、老後のリスクを大きくするだけです(p6)


・リーマンショック・・・アメリカとイギリスの中央銀行は、すぐにバランスシートを拡大し、量的緩和政策を行った。一方、日銀はバランスシートの拡大を行わなかった・・(p54)


・1990年代はじめ、当時上智大学経済学部教授だった岩田規久雄先生は、急激にマネーストックが減少していることを問題視して、「このままいくと危機的な景気後退を招く」と訴えた・・・当時、日技調査統計局企画調査課長だった翁邦雄氏は・・「今、マネタリーベースを増額して金融緩和をしても効かない」と主張し、ほとんど対策を打たなかった(p85)


・日銀総裁には、バブルを潰した第26代日銀総裁・三重野康氏以降、松下康雄、速水優氏、福井俊彦氏、白川方明氏と、金融緩和に消極的な人物ばかり・・・歴代の日銀トップの座にあった人々が、ことごとく誤った経済認識を持っていたんだ(p150)


・2度の消費税増税がさらに景気に追い打ちをかけたと一発で分かる。その結果、税収の基礎となる名目GDP成長率が減り、プライマリーバランスが悪化した・・・改善させようとして行った消費税アップによって、何で逆にマイナスになっちゃったんですか?(p143)


・世界的に見てもなかなかデフレが起きることはなく、直近では、1929年から1933年にかけて世界中の資本主義国に広がった経済不況、世界大恐慌の時まで遡るしかない・・・この時の日本は、東北の農民を中心に、娘を身売り話や欠食児童の報告が増大したほど凄惨な時代だった(p78)


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【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第1章 日本経済は本当に成長できないのか
第2章 なぜ日銀の政策はうまくいっていないのか
第3章 「国の借金1000兆円」はやっぱり嘘でした
第4章 「日本の年金が破綻する」もやっぱり嘘でした
第5章 老後の生活防衛・完全マニュアル
終章 なぜ国民に真実が伝わらないのか



著者経歴

 高橋洋一(たかはしよういち)・・・1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員などを経て、2006年から内閣参事官。金融庁顧問、株式会社政策工房代表取締役会長、2010年より嘉悦大学教授。著書多数。


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