「日本人の矜持―九人との対話」藤原 正彦
2013/07/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
「国家の品格」の著者である藤原さんが、中西 輝政, ビート たけし, 佐藤 愛子, 曽野 綾子, 佐藤 優, 阿川 弘之, 山田 太一, 齋藤 孝, 五木 寛之さんと対談しています。対談というよりも、「国家の品格」について皆さんどう感じましたか?と聞いている感じです。藤原さんも自説をベースに、対談を楽しんでいるようです。
曽野綾子さんが、戦後、日教組が自分たちのことを「聖職者」ではなく、「労働者」と言い出したことが、決定的な教育崩壊の原因としていることに対して、藤原さんは文科省や日教組が「詰め込み教育」を敵視し、授業時間の削減や教科書を薄くすることに注力した「ゆとり教育」を批判しています。
藤原さんの自説は、英語教育より日本語教育。学校で読書を強制せよ。お金至上主義から真の幸福主義へ。教育こそ国家の大事、ということなのです。
だから文部科学省が進める、「英語教育の強化」については反対で、大事なのは話す技術ではなく、伝えるべき内容をきちんと持っているかどうかだと断言しています。人間の金銭欲のみに注目し、人間の幸福を全く考慮しない経済学も、前提自体が根本的に間違っているとしているのです。
・人間とケダモノの違いは、本を読むか読まないかなんです(藤原)(p66)
驚くのは、ビートたけしさんが、数学者の藤原さんの対談のために、数学の問題集をやってきたというところです。対談相手への配慮を感じますね。レベルの高い人たちの対談だと思いました。藤原さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・昭和20年8月9日にソ連が満州に侵攻してきたのは、まさに火事場泥棒です・・・日本では、阪神淡路大震災のときも略奪がなかった。欧米でも中近東、中南米でもどこでも、災害があれば必ず起こるんですが。(藤原)(p211)
・ヴェンセスラウ・デ・モラエスというポルトガルの作家が日本に来たとき、「日本人は歌ってばかりいる」と驚いたそうです。大工はとんかちを鳴らしながら歌う、おばさんは洗濯しながら歌う、行商人は歌いながら物を売る、子供は学校の行き帰りに歌う。歌で満ちた国だと不思議がっている(藤原)(p190)
・「論理的によいと思ったら改革はどんどんすべきである」といったアメリカの価値観に染まっていたんです。ところがイギリスでは「改革に熱を上げるのは愚かだ。改革なんてしても多くは改悪になるだけだ」と冷めている。そして伝統を非常に重んじる。(藤原)(p48)
・あの国(北朝鮮)は、求愛を恫喝で表現する文化ですから(笑)。・・・手嶋龍一さんの小説「ウルトラ・ダラー」に反応して、「日米の特務機関が協力して偽札を作り、北朝鮮に入れているという証拠を人民保安省は握っている。我が国の転覆を図る謀略を断固許さない」・・・反北朝鮮キャンペーンはもう勘弁してください・・というメッセージなんです(佐藤優)(p123)
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
「日本人らしさ」をつくる日本語教育(齋藤孝)
論理を盲信しないイギリスに学べること(中西輝政)
真実を述べる勇気を持つ日本人に(曽野綾子)
人間の弱さを感じること―傷つくことで得る豊かさ(山田太一)
アンテナが壊れシグナルが読み取れない日本(佐藤優)
昔の流行歌には「歌謡の品格」があった(五木寛之)
人生すべてイッツ・ソー・イージー(ビートたけし)
心があるから態度に出る―誇りが育む祖国愛(佐藤愛子)
「たかが経済」といえる文化立国を(阿川弘之)
著者経歴
藤原正彦(ふじわら まさひこ)・・・1943(昭和18)年、旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。1978年、数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。
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