「若き数学者のアメリカ」藤原 正彦

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若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

【私の評価】★★★★★(91点)


■数学者の藤原 正彦さんが若き頃、
 米国の大学で教鞭を取ったときの
 思い出です。


 作家の新田次郎の次男だけあって
 自分の感情と失敗談を
 面白く描写してくれます。


 海外に出ると未知への不安と、
 母国を客観的に見れるために
 愛国心が刺激されるのは
 だれでも同じ。


 ハワイでは真珠湾を遊覧船で回り
 アメリカ人の視点での解説に、
 「不意打ちは許せないというのは
 意味をなさぬ。戦争はすべて不意打ちだ・・
 などとつぶやいています。


・三島由紀夫は、ドイツのハンブルク港で、
 船のマストにかかる日の丸を見た時、
 突然涙が流れ落ちてどうしようもなかった、
 とどこかに書いていた。私もこの急性
 愛国病にかかってしまったようだった(p27)


■米国の大学は、実力主義と言われますが、
 実は実力至上主義のグループと
 実力だけではないというグループが
 対立しているというのが印象的でした。


 さらに、実力至上主義は、
 ユダヤ人とともにアメリカに
 輸入されたという。


 アメリカの歴史は200年ちょっと。
 アメリカ文化は、移民の増加とともに
 変わっているのでしょう。


・研究至上主義のAグループと、
 教育も研究と同等に重要であるとする
 Bグループの二つが、事あるごとに
 対立を続けていたのである・・・
 研究至上主義は第二次世界大戦前の1930年代に、
 ヨーロッパから追放されたユダヤ人教授などと共に
 新しく輸入された思想だと言われる(p226)


■未知の土地で
 異言語で数学を教える
 著者の学びが浮かび上がってきました。


 どうしてこんなに正直に
 自分の気持ちを書けるんだろう。
 内観ができているのだと思います。


 藤原さん
 良い本をありがとうございました。


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■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・昔から数学者と賭博との関係は深いらしく
 そもそも数学における確率論と呼ばれる分野は、
 トランプゲームに興味を持ったパスカルによって
 その発端が開かれたと言われている(p53)


・外国人は、「ひでえ」「ズラカル」
 「おやのこさいさい」などの言葉は、
 知っていた方が便利としても、
 自ら使う必要は全くないし、
 むしろ使用しない方が
 はるかに賢明なのである(p71)


・助教授、講師は、何の保証も与えられていないため、
 契約期限と共に解雇される危険がつきまとう・・
 パーティなどでは、主任教授夫人は
 たとえ魔法使いの老婆のような顔であっても
 若い研究者たちにたいへんモテる(p77)


・試験に関して一番面倒なのは、
 何と言っても成績に関して文句を
 言いに来る学生たちであろう(p264)


・私は、なぜ、あの時、ラスヴェガスで
 あれほどに我を忘れて数学的に負けることの
 はっきりしているギャンブルをし続けたのか
 分からなかった。相当経ってから
 はっきりしたことは、その時、単に
 勝負に負けて悔しいというだけでなく、
 アメリカ人になめられて悔しい、という
 思いを強く持っていたことだ(p60)


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