「遥かなるケンブリッジ」藤原 正彦
2008/04/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
■著者は、文部省の長期在外研究員として、
イギリスのケンブリッジ大学に
1年間滞在しました。
ケンブリッジといえば、
オックスフォードとならんで、
イギリスの英知の集まるところです。
■ケンブリッジの研究生活の中から、
イギリス人の文化、習慣、雰囲気
というものが見えてきます。
衰えたとはいえ、
世界を制覇した大英帝国なのですから、
文化の厚み、歴史の厚さは
たいしたものだと思いました。
・ロウアークラスの人々の、アッパーミドル以上への
敵意はかなりのものだった。
西隣りに住むブライアンから、ラグビーの試合ならよいが、
ロウアークラスの集まるサッカー試合には、
家族連れで行かぬよう忠告されていた。(p159)
■この本で特に楽しかったのは、
高邁なイギリス人教授に、
ジョークで藤原さんが反撃するところです。
知的ウィットが秀逸で、教養というものは
こう使うべきであると、
妙に納得してしまいました。
・この英文学者は、「以前日本から英文学科を訪れた人は
興味深かった。チョーサーをすらすら読めるのに、
ほとんど英語を話せなかった」と皮肉まじりに言った。・・・
私が間髪を入れずに、「アーサー・ウェイリーは源氏物語を
上手に英訳したが、日本語は話せなかったらしい」と言ったら、
ニッコリうなずいてから、「よし、あなたの勝ちだ」と言った。(p204)
■藤原さんのジョークに笑いながら、
イギリスのジョークと教養が
理解できる一冊でした。
本の評価としては、★5つとします。
─────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・イギリスに住んだ友人から、「イギリス人には舌がない」
と聞いていたが、本当だった。舌はみなフランスへ行って
しまったらしい。(p15)
・経験から判断すると、フェアーであることを、
イギリス人は絶対的なことと考え、
アメリカ人は重要なことと考え、
ヨーロッパ人は重要なことの一つと考え、
日本人は好ましいことと考える。(p35)
・昼食の時間には、サンドイッチを持って来る子と
自宅に帰る子が半分強で、残りは、リンゴ一個とか、
バナナ一本、ニンジン一本とチョコレートバー一本、などと様々だった。
イギリスの子供の顔色が青いのは、天候ばかりでなく、
無配慮な食生活にも関係していると思う(p62)
・マユミ・ザイラー先生は、寛太郎が上手に引けなくても、
まず、「寛ちゃん、良かったよ!」と独特の抑揚のある
日本語でほめ上げるのが癖だった。
寛太郎が気分を良くした頃合を見て、
「でもこうしたらもっとよくなるよ!」と言って
技術的な注意を与えるのだった。(p180)
▼引用は、この本からです。
新潮社
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才能があったり,コネがあったりすると,いいなぁ
秀逸なエッセイ
英国の大学内情
イギリスとイギリス人を知ることで日本と日本人を知る。
【私の評価】★★★★★(91点)
■著者経歴・・・藤原 正彦(ふじわら まさひこ)
1943年生まれ。
お茶の水女子大学理学部教授。数学者。
故・新田次郎と藤原ていの次男
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