「糸川英夫の創造性組織工学講座」糸川 英夫
2013/05/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
■なぜか、本棚にあった一冊。
石原 明さんが「成功曲線を描こう」の中で、
お奨めしていたので購入したのでしょう。
読んでみて驚いたのは、著者は、
戦闘機「隼」を設計したし、
その後、当時最先端の脳波を研究、
さらにその後、国産ロケットを開発した。
糸川さんは学者にして
日本のエジソンのような人な
多才で万能な人なのです。
・何か新しいものを考えだすときには、その使命(ミッション)が何であるかを考える(p63)
■著者が新しい技術開発に成功してきたのは、
偶然ではなく方法論があるからです。
著者は、まず、今、社会から
何が求められているのか考えるという。
それを支えるのが、
自分で蓄積した技術情報と、
未来を予測する環境研究。
こうした総合的な考察から、
技術開発の具体的な目標が設定されるのです。
・まず、最終消費者(エンドユーザー)の求めているもの(マスクド・ニード)を探る。そして、開発に必要な情報を集め(技術情報バンク)、さらに、世の中の状況、変化を読む(環境研究)。この三つの基本をふまえて目標を設定し、・・・作業をすすめていくわけである(p28)
■ 例えば、トヨタであれば、
「ハイブリッド車を開発しよう」
ということになったとしましょう。
次の段階として具体的な開発は、
プロジェクトマネジャーに任されます。
この人選がかなり重要です。
ハイブリッド開発の主査は優秀な人が
抜擢されたはずです。開発では、まず、
すべての技術を調査する。
そして、システムのすべての組み合わせを
考えだし、それぞれ評価していくのです。
例えば、ハイブリッド車では、トヨタは
最終的にモーターが2つのパラレル方式を
選択しています。
・現状分析の段階では、現在使われているものとその構成要素をすべて調べてみる。・・・もれがないように、なるべく大勢の人でやるほうがいい(p47)
■その他にも、失敗の可能性を考え、
手を打っておくことの重要性など、
意味深いお話ばかりでした。
多くの開発経験なくしては
語れない内容です。
後世に語り続けていただきたい
一冊ということで★5としました。
糸山さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・ネーミング―名前が組織をつくる(p59)
・クールなドリーマーたれ・・・勝つための情熱を持つと同時に、常に冷静な判断を下せる人物だ(p92)
・PM(プロフェッショナル・マネジャー)の大事な任務の一つは、メンバーのなかに連帯を損ないそうな人がいるかどうかを敏感にキャッチして、初期の段階で排除することだ(p70)
・新しいものは、「二つの異質なものの結合からできる」とはポアンカレの言葉だ・・・意識的に自分と異なるアイディアをもっていそうな相手を、見つけなければならない(p202)
・ペアの組み方はどうするか。・・・一つはお互いの専門が違うということ。・・・もう一つの原則は、年齢差はあまり関係ない(p154)
・何といってもすすめたいのは、外国人の友人を多くつくることだ。中国、韓国、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、インドといったアジア地域をはじめ、ヨーロッパやアメリカに友だちがいて、一年に一度とか、二年に一度、そこへ旅をすることが絶対に必要だと思う(p210)
・成功を収めるには、失敗の可能性に対してあらかじめ手を打っておくことだ。そういう手を打っておくことは、悲観論的でも楽観論的でもない(p260)
・失敗はマイナスだが、それを反転してプラスに使えば、ユニークなものが生まれるのだ。失敗研究では、ほかの人の失敗も貴重な財産となる。(p52)
・そこで思い立ったのが、先輩たちの失敗談を全部集めようということだった。・・・失敗者たちの失敗をふまえて、それと逆のことをやれば必ず成功するだろう(p270)
・未来の環境を予測するもう一つの方法として、デルファイ・メソッドがある・・・アンケート結果のフィードバックと意見の修正を何回かやるうちに、対象者の意見は一点に収斂してくる(p176)
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【私の評価】★★★★★(92点)
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目次
第1章 創造性組織工学の全体像
第2章 組織の5大エレメント
第3章 プロフェッショナル・マネジャー論
第4章 ペア・システム論
第5章 環境研究―世相の変化予測
第6章 オルターナティブ
第7章 システム合成とシステム分析
第8章 失敗研究
第9章 人間学―情緒工学序説
第10章 商品弾性率と未来への課題
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
読んでいただきありがとうございました!
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