「交渉術」佐藤 優
2009/02/23公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
■今、話題の北方領土問題ですが、
2002年に北方領土問題に取り組んでいた
鈴木宗男さんとともに粛清された
元外務省官僚 佐藤 優さんの一冊です。
佐藤さんは、外務省の内部抗争で
敗れた立場ですので、
この体験の反省を含めて、
この本を書いています。
■基本は交渉術なのですが、この本の面白さは、
外務省という組織の内部の様子が
よくわかるということでしょう。
外務官僚の政治家との関係や、
金の問題、情報管理、組織の掟など、
佐藤さんの体験談からリアルに
その実情を実感することができます。
・北方領土問題に取り組んでいた社会活動家である末次一郎氏が主宰する永田町にある安全保障問題研究所の事務所に、上司の指示に従って、秘密書類を運んだことが何度もある(p92)
■佐藤さんは、外務省から粛清されたのは
外務省内に敵を作りすぎたことが原因であり、
人の感情、嫉妬に注意しろと言っています。
しかし、その一方で、
北方領土の解決に鈴木宗男とともに命を賭け、
日露の接近を望まなかった勢力から粛清されたが、
後悔していないとも言っています。
たぶん、両方が事実なのでしょう。
■私には、明治維新に奔走した志士が
イメージされました。
世の中を変えようとする人は、
短命です。
しかし、そうした人がいなければ、
世の中は変わらないのです。
北方領土と外務省関係の資料としては
必読の一冊でしょう。
読み応えのある良書です。★5つとしました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・『貴様、嘘をつくな!』といえば、相手も『なに!』といって、喧嘩になる。ところが、『お互いに正直にやりましょう』といえば、誰も嫌な思いをしない。日本人はこの使い分けがわかっていない。(ゲンナジー・ブルブリス元ソ連国務長官)(p11)
・小さいことでは約束を守り、信頼させて、最後に一回大きく騙すというのはインテリジェンス交渉術ではよく使われる技法だ。・・ロシア人に言わせれば、騙す者が悪いのではなく、騙される者が間抜けなのである。(p37)
・相手に年額で600万円の工作費を渡すとしても、毎月均等割で50万円ずつ渡すと最も効果が薄くなる。ある月には全く渡さず、別の月には200万円渡すというようなやりかたが友人関係を装う上ではもっとも効果的だ。(p119)
・北方領土問題を解決し、日露の戦略的提携を深め・・・米国、中国、ロシアとの間で勢力均衡外交を進めようとする外交官たちには「宗男派」というレッテルが貼られ、放逐された(p398)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★★(94点)
■著者経歴・・・佐藤 優(さとう まさる)
1960年生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館勤務。95年より外務本省国際情報局分析第一課、主任分析官。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。05年執行猶予付き有罪判決を受ける。現在、上告中。起訴休職外務事務官。
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