「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義」北野 幸伯
2007/10/15公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
ドル体制の崩壊
40歳になってわかることは、実は世の中とはシンプルな考え方によって動いているということです。本書は、複雑に見える国際関係を国家指導者の視点で簡単に説明してくれます。
まず、すべての前提として、アメリカは最強の軍事国家であり、かつドルという基軸通貨(国際通貨、世界通貨)を持っているということです。そして、そのドルはアメリカの貿易赤字により、長期的には価値が下がってきており、もしドル体制が崩壊すれば、アメリカも崩壊することになります。
だからアメリカは、石油はドル決済でなければだめな世界を作ってきたのです。
頭の片隅に、次の言葉をとどめておいてください。「アメリカは、ドル体制に挑戦する国があれば、軍事力を使ってでもそれを阻止する(p64)
中国の台頭
そして、ドルが弱くなるなかで、中国という巨大な国家が経済発展によって、エネルギー消費量を増やし、軍事力を強化しているとう現実があります。中国はエネルギー消費量がアメリカ並みになることを前提に、中国とアメリカとの紛争に備えて石油を確保しようとしているのです。
また、米国が中国との紛争の可能性は常にあるのです。つまり力をもった勢力が、その力に応じた地位を主張するのは当然であり、それを阻止しようとするのも必然なのです。著者の北野さんの助言は次のとおりです。
1 アメリカがイランを攻撃する前に、憲法改正はしない。
アメリカがイランを攻撃する可能性は常にあり、イランとアメリカの戦争に日本が巻き込まれる可能性があります。したがって、戦争に巻き込まれないように、今すぐに、憲法を改定する必要はないのです。日本がアメリカ側についてイランを攻撃するとすれば、・日本は国連を無視する悪者になるし、日本は10億人のイスラム教徒を敵にまわすことになるからです。
2 日中紛争を避けるために日中のパイプを太くする。
アメリカが日中戦争をお膳立てて、日中が疲弊するのを待つ戦略を行う可能性があります。中国が疲弊したら、アメリカは北京を攻撃して親米政権を樹立し、ドル圏に含めることができます。日中だけが戦争をしないように、日本は中国との交渉のパイプをら再強化させておく必要があるのです。
新聞、テレビのニュース、討論番組では、まったく理解できない国際情勢が、この一冊で見えてきます。これまでの予想的中率からも、この本を読めば、テレビ・新聞は見る気になりません。★4つとしました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・石油がなくなる日・・・いつ枯渇するのでしょうか?これは、はっきりわからないのです。・・・アメリカの確認埋蔵量は約300億バレル。・・・BPの予測では11年後に同国の石油は枯渇する。(p81)
・イラク攻撃の理由を、先のアメリカの戦略に沿って見てみましょう。
1 ドル体制の防衛・・・
2 石油利権の独占・・・
3 中国封じ込め・・・(p102)
・ロシア人エリートのアメリカ観、中国観を一言で言うと、「アメリカを憎み、中国を恐れる」となります。・・・ロシアにとって理想的な状況は、アメリカと中国が戦って共に没落すること(p119)
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 アメリカ幕末時代
第2章 アメリカの恐怖
第3章 石油は民主主義より大事
第4章 アメリカを憎み、中国を恐れるロシア
第5章 ロシアが握った勝利のカード
第6章 米中対立、中国が有利
第7章 大いにありうる日中戦争
著者経歴
北野 幸伯(きたの よしのり)・・・1970年生まれ。国際アナリスト。ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業後、プーチン大統領の元ブレーンとともに日露ビジネスコンサルティング会社IMT設立。1999年からメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」を発行。イラク戦争、北朝鮮情勢、次はイランなど次々と予測を的中させる。モスクワに28年滞在。2018年、日本に帰国
読んでいただきありがとうございました!
この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングに投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 40,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
お気に入りに追加|本のソムリエ公式サイト|発行者の日記
コメントする