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「日本中枢の崩壊」古賀 茂明

2011/08/10公開 更新
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日本中枢の崩壊 (講談社文庫)


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

最近テレビ出演の多い現役改革派官僚の古賀さんの一冊です。古賀さんがこれだけ捨て身に官僚組織の改革を主張するのは、大腸がんという大病をして、人生観が変わったからかな、と思っていたら違いました。古賀さんは以前から改革派だったのです。古賀さんが関わったのは次の3つ。


持ち株会社の解禁。セルフ給油の解禁。クレジットカード偽造の罰則強化。こうした取り組みからわかるように、古賀さんは、以前から規制緩和に取り組んでいたのです。この本で面白いのは、官僚の権力維持の要諦と思考パターンがわかるということです。法律を整備し、予算をつけて仕事や組織を創る。そして、業界のためにその規制を維持する。そして、天下るのです。


・天下りがいけないという理由は二つある。天下りによってそのポストを維持する、それによって大きな無駄が生まれる、無駄な予算がどんどん作られる、あるいは維持されるという問題が一つ、もう一つは、民間企業などを含めてそういうところと癒着が生じる(p138)


安倍総理が作った天下りの斡旋を禁止するという「国家公務員法改正」は、既に骨抜きになっているという。官僚の世界は年功序列で、そこそこ仕事をすれば悪事を働かない限り降格することもなく、年金や天下りで生活を保障されているのです。また、公務員の定年延長も画策しているらしいのです。


増税と同じように、自分のこととなると官僚の仕事は早いのです。官僚を辞めた著者の提案は、日本の財政が破綻する前に公務員を削減、官僚の既得権や補助金をカットすることです。古賀さんは、会社の経営者的な視点で考える人なのでしょう。そうした人が、ここまで言わなくてはならないくらい国家財政は厳しいのかもしれません。古賀さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「平成の身分制度」の廃止・・・保護の強さの順でいえば、「官・農・高(高齢者)・小(中小企業経営者)」(p332)


・この人事院というのが不可思議な組織で・・・事務局は上から下まで全部国家公務員だ。つまり、第三者といいながら、実は公務員が公務員の給料などの待遇を決めているのである(p70)


・国税庁はその気になれば、普通に暮らしている人を脱税で摘発し、刑事被告人として告訴できるのだ・・・財務省にとって、この懐刀が、いざというときにものをいうのだ(p198)


・通産省と電力会社の癒着ぶりは目に余るものがあり、特に東京電力に睨まれたら出世はできない、などという話を聞いたことがある。(p258)


・霞ヶ関言葉で「積極的に」は、基本的に「やる」という意味だ・・・「○×等」と「等」を入れた場合、後で拡大解釈するための布石だし、「前向きに」は「やる」、「慎重に」は「やらない」という意味だ(p244)


日本中枢の崩壊
古賀 茂明
講談社
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【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

まえがき─東日本大震災で見えた「日本中枢」のメルトダウン
序 章 福島原発事故の裏で
第一章 暗転した官僚人生
第二章 公務員制度改革の大逆流
第三章 霞が関の過ちを知った出張
第四章 役人たちが暴走する仕組み
第五章 民主党政権が躓いた場所
第六章 政治主導を実現する三つの組織
第七章 役人──その困った生態
第八章 官僚の政策が壊す日本
終 章 起死回生の策
補論─投稿を止められた「東京電力の処理策」
あとがき─改革を若者たちの手に委ねて


著者経歴

古賀茂明(こが しげあき)・・・
1955 年、長崎県生まれ。1980 年東京大学法学部 を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。 大臣官房会計課法令審査委員、産業組織課長、 OECD プリンシパル・アドミニストレーター、産業 再生機構執行役員、経済産業政策局課長、中小企 業庁経営支援部長などを歴任。2008 年国家公務 員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、急進 的な改革を次々と提議。2011 年 3 月の東日本大震 災と福島第一原子力発電所の事故を受け、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経 産省から退職を勧告され辞職。2011 年、大阪府市 エネルギー戦略会議副会長として脱原発政策を提言。


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この著者の本


コメント(1)

国民が頑張っても、
シロアリのように日本を食い尽くしていく
官僚の実態にショックを受けました。

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