【書評】「日本再起動」橋下 徹
2026/02/24公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
政権交代可能な野党を作る
テレビでおなじみの橋下徹氏の一冊です。現在は政治家を引退し、コメンテーターとして活動しています。コメンテーター橋下徹の主張は、どのようなものなのでしょうか。
まず、欧米的な資本主義で自由な競争の推進を提案しています。例えば、アメリカUberのように日本でライドシェアが認められないのは「タクシー業界や国土交通省、自民党の政治家が強く反対しているからだ!」と批判しています。
また、選択的夫婦別姓制度や事実婚、LGBTQに配慮した法整備や移民受け入れ推進を提案しており、欧米のリベラルの政策に近いと感じます。
日本では、日韓に寄り添う共産主義、社会主義を目指す立憲民主党が「リベラル」と自称していますが、欧米の「リベラル」とは違います。欧米の「リベラル」とは、グローバルな相互依存を推奨し、資本主義と民主主義、個人の自由を推進する考え方なのです。
橋下徹氏は、共産党・立憲民主党と違い、自民党でもない、欧米リベラルのような政権交代可能な野党を作ることを目指しているように見えるのです。
「立憲民主・共産系」と「維新・国民民主系」の2つのグループに野党が整理されたことで、有権者が野党を選択する機会が広がりました(p27)
立憲民主党・共産党を否定
はじめに、橋下徹氏は立憲民主・共産系の路線を否定します。立憲民主党・共産党の方向性は、資本主義を否定し、「皆等しく貧しくなっていけばいい」という主張だと批判しています。
つまり、立憲民主党・共産党の政治家や、左の学者や評論家は資本主義を否定しなら、一方で高い給料をもらって一生安泰な富裕層に属している立場にあるとして、「皆貧しい」はウソだと強い怒りを表明しています。
立憲民主党・共産党が反対するマイナンバー制度についても、すべての情報をマイナンバーに紐づけることで、効率的な社会が実現できると肯定しています。
マイナンバーとあらゆる個人情報をひもづけることが必要不可欠で、これがデジタル社会の進展に向けてのセンターピンです(p67)
自由民主党を否定
次に自由民主党の政策を否定します。
「責任ある積極財政」については、無意味な公共事業を行うことは無意味であり、反対しています。もちろん無意味な公共事業はないのが建前ですが、一理あります。
また、自民党が反対している選択的夫婦別姓、同性婚、女性天皇について世論調査では国民の多くが支持していると自民党を批判しています。この点はリベラルを意識しているように見えます。
森友学園・加計学園問題、桜を見る会については、政権の説明不足を批判しており、これらが言いがかりに近いものであることを知っているので、表現を工夫してあいまいにして批判しているのでしょう。これはズルい批判だと思います。
外国人を受け入れについては、人口を増やし、多様な人材が集まり、イノベーションが起きやすくなるというメリットだけを強調し、移民反対の政治家を批判しています。
移民反対の政治家は、不法滞在者や、犯罪を犯した外国人の強制退去、一時滞在の外国人への健康保険不適用を求めているだけなので、実は橋下徹氏と同じ意見なのです。これは同じ意見なのに、意図的に歪曲してレッテルを張るよくない論法です。
このように9割はもっともな理由をつけて主張しながら、1割に意図的に変な主張を入れてくるところに、橋下徹氏の心の底に何があるのか不信感が高まるのです。
外国人を受け入れ・・・単に人口を増やす話だけにとどまりません・・多様な人材が集まる社会となり、そこからイノベーションが生まれたり、悪しき慣習が是正されたりする・・・「ファッション保守」の国会議員たちには、外国人の力の重要性が理解できないのでしょう(p214)
橋下徹氏の主張の構造
橋下徹氏の意図的な変な主張を深堀りしてみましょう。
橋下徹氏は、「緊急事態状況の創設」に反対しています。それは、有事のときに徴兵するのではないか、市民の国外脱出を阻むのではないかとの理由で反対しています。
橋下徹氏は、「日本を守るために命を捨てろ」と簡単に言うことにも反対しています。それは個人の選択だというのです。
このように極論を言いながら最後には、もし戦う必要があるのであれば、まずは政治家自身から、次に高齢者から前線に向かわせ、若者の命は守ると主張するのです。論点ずらしというか、最初から言えよ!という感じでしょうか。
また、高市早苗首相が、日本が攻撃されたら「自衛隊員には最後まで戦ってもらう」と発言したと、発言の一部を切り取って、軍事的合理性の話がなく、指導者として危険性を感じたと批判している点も切り取りです。
実は、橋下徹氏がテレビで、高市さんにロシアのウクライナ侵攻を見て、「最高指揮官だったら戦闘員に対してどこをゴールにして戦わせますか」と質問して、高市氏が「私は戦闘員に対しては、これはもう国土、領土、領海、領空、そして国民を守り抜く。これは国家の主権も失われてしまうわけですから、それをしなければ。これは申し訳ないですけど最後まで戦っていただくことになると思います。」と回答した一部を切り取っているのです。
結局、「戦う」と建前を言えば危険と批判し、「勝てなければ逃げる」と言わせたかったのかもしれませんが、それならそうした前提で質問すればいいわけで、「いじわるな質問」かつ切り取りの悪質な例だと思います。
賛否両論がありそうなテーマについては誰よりも先に自分の考えを「はっきり言う」・・あえて炎上を起こす心意気で、どんな意見、どんな言い方ならば多くの人の耳目を集め、最終的にはそれなりの共感を得られるのかを意識する(p110)
橋下徹氏の心の中
橋下徹氏はよく勉強しているし、頭もよいのです。
それなのに、高市早苗首相の台湾有事発言に対して、橋下徹氏はテレビで「日本は何をする?国内だけで威勢のいい口だけ番長が最悪。まずは力を付けてから」と批判していました。
視聴者は「中国のいいなりになればいいの?」と炎上しますが、実は橋下徹氏の主張は、防衛力強化、集団的自衛権賛成で、NATOのような集団安全保障体制や究極的には核保有がもっとも効率いいと主張しているのです。最初から言わないのは意図的で、炎上商法に近いでしょう。
ただ、橋下徹氏は中国のAIIBへの参加に前向きでした。中国の思うつぼです。また、「靖国神社参拝」と叫ぶだけで、参拝していない自民党政権を批判し、俺なら首相・天皇陛下が靖国神社参拝できる解決策を提示すると主張しています。中国の思うつぼです。
天皇の皇位継承問題も、いったん女性天皇として、その後皇族が旧宮家の男系男子と婚姻や養子縁組をするなどして男系男子の皇位継承者が誕生すればそちらに戻せばいいと主張しています。
台湾問題も100年間一国二制度を中国が提案してきたら、ウクライナになるより香港になるほうがまし、と賛成しかねないように感じました。
橋下徹氏は「相手を言いくるめたり言い負かしたりすることではなく、腹を割った議論を通じてお互いに政策を磨いていく」と書いていますが、この本では読者を言いくるめているように見えました。
橋下徹氏の心の中はどうなっているのか、私にはわかりません。日本の明るい未来を考えているのか、支持率を高くして権力を握りたいのか、それとも95%は正しい主張をして、その勢いで5%の外部勢力の意見を押し通したいのか。20年後にその答えがわかるのでしょう。
橋下さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・政治マーケティング・・1民意を探る、2政治家のイメージアップをはかる、3支持者を組織化して拡大していく(p83)
・「1」を伝えるために「1万」を発信する・・地道に粘り強く、図太く発信を続ける。「言葉の力を磨く」うえでは、結局こうした「粘り強さ」「しつこさ」がものをいうのです(p105)
・尖閣諸島での日中衝突や中国の台湾侵攻の際、真っ先に中国から狙われるのが、与那国島や沖縄本島をはじめとする先島諸島・南西諸島にある軍事施設です。であれば、そこの住民をどう避難させるかが最重要です(p229)
・業界団体の地位、地域団体の地位、公務員の地位・・公務員の地位にメスを入れることに一番力を注入したのが維新でしょう(p201)
▼引用は、この本からです

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橋下 徹 (著)、SBクリエイティブ
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
序章 日本を再起動せよ
第1章 この国の閉塞感の正体
第2章 「強い野党」のつくり方
第3章 野党の組織を強くする
第4章 野党を強くする極意
第5章 「真の二大政党制」への道筋
著者経歴
橋下 徹(はしもと とおる)・・・1969年東京都生まれ。大阪府立北野高等学校、早稲田大学政治経済学部卒業。1998年、橋下綜合法律事務所を開設。2003年「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演開始。2008年、38歳で大阪府知事、2011年に大阪市長に就任。実現不可能と言われた大阪都構想住民投票の実施や、行政組織・財政改革などを行う。2015年、大阪市長を任期満了で退任。現在はTV番組出演や講演、執筆活動など、多方面で活動している
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