「一下級将校の見た帝国陸軍」山本 七平、文藝春秋(1987/8)

一下級将校の見た帝国陸軍
山本 七平
文藝春秋 (1987/08)
売り上げランキング: 23,471
おすすめ度の平均: 4.62
5 究極的に事実を語る
5 「虚構」のメカニズム
5 現代にも通じる日本の組織の問題点


(私の評価:★★★★☆:買いましょう。素晴らしい本です)


■著者紹介・・・山本 七平

 1921年生まれ。従軍後、山本書店創立。
 「『空気』の研究」「日本人とユダヤ人」など著書多数。
 1991年12月死去。

●帝国陸軍の実態を、内部から観察し、その実態を分析した一冊です。


●著者によれば、帝国陸軍では、現実を直視しない、
 作精神論だけの虚構の世界が作られていました。

 ・結局、大本営や方面軍司令部の参謀たちが勝手に書いたシナリオでは
  そうなっているというだけのこと、そしてそのシナリオに応じて
  師団の参謀たちは空虚な“大熱演”を演じ、その熱演に自ら酔って
  発した放言が、命令となり指示となって四散し、それによって人びとが
  次から次へと死屍になっていっただけであった。(p191)

●こうした精神絶対主義は、帝国陸軍だけではなく、
 日本人の本質から産まれてくるものである、

 という著者の主張が、私の経験でもまったくその通り
 と思わざるを得ないのが恐ろしいところです。

 ・不思議なことに、精神力を否定するかに受け取られそうな言葉は、
  絶対だれも口にはしない。そして、軍隊外の人間には、徹底して
  口にしなかった。ここには奇妙なタブーがあった。そしてこれは、
  戦後社会にも存在するある種のタブーと同根のもの・・・(p41)


●「できません」などとは言えない。
 言えば、「どうすればできるか考えろ」
 というのが、日本の日常風景ではないでしょうか。

●また、日本の組織の中には、学歴至上のキャリア組のようなものを作り出し、
 現場のノウハウはたたき上げの人に任せるといった
 お役所のような組織も多いと思います。

 そのような組織は、現状維持には最適ですが、
 根本的な変化が求められるときには、最悪の組織となるようです。

 ・「従って、調子のいいときはいいし、その組織の運営の仕方だけで
  対処できる間はこれが一番いいんですよ。だが、組織そのものの
  中身を変えて対処しなければならない場合は、だめですな。結局、
  壊滅するまで同じ行き方を繰り返しながら、それ以外に方法がない
  という状況になっちまうんです・・・。」(p54)


●良い例として、「技術の日産」があります。

 カルロス・ゴーン以前の日産は、危機的状況にありながら、
 今までどおりの車作りしかできませんでした。

 「技術」が立派ならそれでよかったのです。

 しかし、カルロス・ゴーンという指揮官を得て、変化することが
 できたということなのでしょう。

 ・この砲は世界の最高峰、火砲が達しうる極致だというのが軍の
  常々の自慢・・・確かにその通り。ところが、それだけの砲弾を
  砲側に運ぼうとすれば、強大な補給能力が要請される。だがそれを
  だれも考えない。砲が立派ならそれでよいのである。(p171)

●だんだん暗い気持ちになってくるのですが、
 そうした日本人の気質を理解しつつ、自分はいかにしていくべきか、
 ということを考えさせてくれる一冊として★3つとしました。

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・それはいずれの時代でも同じかもしれぬ。渦中にいる者は不思議な
  ほど、大局そのものはわからない。(p60)


 ・参謀本部は、昭和初期から南方方面占領の作戦計画だけは立てており、
  その際、占領軍が「現地自活」することは、規定の方針だったという。
  このこと自体が、いかに現地に対して無知であり、何一つ真剣に調査
  していなかったかの証拠といえよう。(p83)


 ・われわれは、前述のように、「戦争体験」も「占領統治体験」もなく、
  異民族併存社会・混血社会というものも知らなかったし、今も知らない。
  知らないなら「無能」なのがあたりまえであろう。(p96)


 ・今の今まで「絶対にやってはいけない」と判断を下していたそのようなことを、
  なぜ急に一転して「やれ」と命ずるのか・・・「戦闘機の援護なく戦艦を出撃
  させてはならない」と言いつつ、なぜ戦艦大和を出撃させたのか(p112)

「一下級将校の見た帝国陸軍」山本 七平、文藝春秋(1987/8) ¥540
(私の評価:★★★★☆:買いましょう。素晴らしい本です)

■関連書籍

 ・山本七平の日本の歴史〈上〉


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