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「10代からの政治塾 子どもも大人も学べる「日本の未来」の作り方」泉 房穂

2024/02/13公開 更新
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「10代からの政治塾 子どもも大人も学べる「日本の未来」の作り方」泉 房穂


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

政治家は方針転換をするもの

職員への暴言問題で報道されていた兵庫県元明石市長の泉 房穂さんの一冊です。どんな人なのかな~と読みましたが、政治家は方針転換をするもの、官僚は現状維持をするものと書いているように、政治家が方針を決めるのだ!という信念を持っていることがわかります。


つまり、選挙で選ばれた市長こそが、市政の方針を決めることができる人であり、公務員はそれを実施するために存在しているという理解なのです。そして政治家である以上、嫌われることを恐れないと書いてあるように、いかに自分のやりたい政策を任期中に実現させるのか、無理をしたところもあるのでしょう。
 

政治家は方針転換をするもの、官僚は現状維持をするもの・・どう転んでもケンカになってしまうわけです(p62)

高校3年生までの医療費が無料

明石市長時代には、5つの無料化として、高校3年生までの医療費が無料、2人目以降の子供は保育料が無料、中学校の給食費が無料などを実現しました。その結果、2021年の合計特殊出生率(一生に一人の女性が産む子どもの数)が日本全体で1.30であるのに対し、明石市は1.65人となったという。


高齢の市民からは、「子育て層ばっかりにやさしくしやがって!」とクレームを受けたと告白していますが、日本は、子どもの教育に使う予算の割合が、海外の半分以下という認識があったようです。日本では、新しい取り組みが受け入れられづらいからこそ、判断力と責任感のあるリーダーが、政治を変え、新しい取り組みをしていかなくてはならないという信念があると感じました。


大切なのは、自分がどう思うかです・「一律」という考え方からの転換・・「これまで通り」からの転換(p217)

勤勉なのは元医者・元弁護士・二世・三世

明石市長になる前は衆議院議員でしたので、国会議員時代は毎朝8時から勉強会、9時から委員会、午後は本会議、毎日夜中の1時まで法案を作っていたという。7~8割が内閣立法、2~3割が議員立法ですが、それだけ働かないと議員立法はできないのです。


国会議員の評価としては、元お医者さんとか元弁護士の国会議員、また、意外にも二世・三世の国会議員に勤勉な人が多かったという。なぜなら、こういう人たちは、落選しても生活していけるから、国政だけに打ち込める環境にあったというのです。


それでも、志を持って政治家になった人は全体の2割程度で、他は政治家になることが目的になってしまっており、周囲にお金を持ってくる人も多いので、誘惑に負けない精神力も必要だという。


政治家という立場を利用してお金儲けをしたり、「有名になりたいから」という理由だけで選挙に出たりする人が多くて、本当の政治家がいない(p5)

かくすればかくなるもの

衆議院議員でしたので、よく国税と社会保険料の徴収一元化について、財務省は税金を上げたい、一方で、厚労省も、財源を増やしたいと日本陸軍と海軍のような対立関係にあることを指摘しています。問題は、両方とも自分の組織のことだけ考えて一体化に反対であり、国全体のことを考えない現状では変更は難しいのでしょう。


また、著者は、国と市区町村との間に都道府県があることで、大きなムダがあることを指摘し、「都道府県はいらない」と主張しています。これも既存の組織は不要とするのは抵抗が大きく難しい課題なのでしょう。


最後まで読んでみて、国会議員としてできないことを市長として実現しようとしてきたのだろうと感じました。そのために無理をして、職員と対立したわけです。職員と対立してでもやりたいことを実現するか、職員と良い関係を保ちゆっくり改善してくか、著者は前者を選んだのです。日本では改革者は殺されたり、左遷されたり、よく処遇されません。それがわかっていても、やろうとする気狂いのような使命感が著者を動かしたのだろうと推測しました。


「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」と詠んだ人がいましたが、こうした人を私は個人的に好きなので★4とします。泉さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・国と地方は、対等の立場である(p82)


・ほかのやり方はないか?・・今すぐに必要か?・・その金額で大丈夫か?(p121)


・コロナが大流行したとき、私は、1年で27回もの人事異動を行いました(p76)


▼引用は、この本からです
「10代からの政治塾 子どもも大人も学べる「日本の未来」の作り方」泉 房穂
泉 房穂 、KADOKAWA


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

1日目 そもそも政治って、何のためにあるの?
2日目 難しいけど、政治のしくみを見ていこう 
3日目 なぜみんな税金を払うことをイヤがるの?
4日目 政治家になるためにまずは選挙に出よう
5日目 政治家になるために必要な能力って?
6日目 みんなは日本をどんな国にしたい?



著者経歴

泉 房穂(いずみ ふさほ)・・・1963年、兵庫県明石市生まれ。東京大学教育学部卒業。NHKディレクター、弁護士を経て、2003年に衆議院議員となり、犯罪被害者等基本法や高齢者虐待防止法などの立法化を担当。2011年に明石市長に就任。特に少子化対策に力を入れた街づくりを行う。2023年4月、任期満了に伴い退任。


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