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「知事失格 リニアを遅らせた川勝平太 「命の水」の嘘」小林一哉

2024/02/14公開 更新
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「知事失格 リニアを遅らせた川勝平太 「命の水」の嘘」小林一哉


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

静岡県の6人に1人が苦しみを味わう

JR東海のリニア新幹線が、静岡県の反対によって運転開始が遅れるというニュースを見て手にした一冊です。川勝知事が初めてリニア新幹線で大井川の水源問題を語ったのは、2018年の「日経ビジネス」誌上で「静岡県の6人に1人が塗炭の苦しみを味わうことになる。それを黙って見過ごすわけにはいかない」と語ったことからはじまります。


2021年の川勝知事の四期目となる静岡県知事選挙では、「今回の選挙はリニア問題が最大の争点だ。62万人の命の水を守るための選挙である」とし、選挙で勝利しているのです。川勝知事は、リニア工事によって大井川水系の水量が毎秒2トンの減少するので、工事中も工事後も全量戻すように要求しているのです。実際、大井川水系では渇水により取水制限することがあるという。


毎秒2トンの水量が減少するという。水道水として62万人が利用しているが、毎年のように水不足に悩まされ、昨年も渇水で90日近く取水制限した(p21)

命の水不足は嘘

ところが「62万人の命の水」がリニア工事によって足りなくなるというのは、全くの嘘であると著者は主張しています。まず、大井川流域には、大井川以外にも豊富な地下水源があり、水不足にはなっていないのです。その証拠に、榛南水道の老朽化から廃止して、大井川広域水道から供給する計画があります。大井川広域水道には余裕があるのです。


では、なぜ渇水になるのか?ついては、静岡県の「渇水」の基準は発電用のダムの水不足であり、大井川広域水道企業団へ水を供給している長島ダムが「渇水」になっていなくても「渇水」扱いになっているので、実際に水は不足していないというわけです。


ただし、大井川中流域は上流のダムと下流の水力発電所が導水管で結ばれているため、全く水が流れない「河原砂漠」となっています。これは、リニア工事とはまったく関係ありませんが、元々、大井川では中流域と下流域の対立の歴史があったのです。


静岡県の「渇水」とは、「既得水利権者」の水源地である発電用ダムの畑薙第一・井川ダム湖の水不足であり、「新規水利権者」の水源地である長島ダム湖が「渇水」状況で水不足の状態を指すわけではない(p40)

本心は静岡空港新駅設置

後半は、川勝知事の暴言批判や静岡県の著作権法違反を批判しており、リニア新幹線という論点から離れていきます。著者は静岡県がリニア工事に反対しているのは、大井川流域の首長が結束して静岡空港新駅設置をJR東海へ待望しているのだと推定しています。


すぐに嘘とわかるような理由でリニア新幹線に反対するのは、愚かなことです。静岡県は「静岡空港新駅を設置し、「のぞみ」が静岡駅で止まるようにしたらリニア工事を認める」と本音でJR東海に提案すべきではないでしょうか。川勝静岡県知事の手法は、中国共産党が無理やり理由をつけて輸出制限したり、反アメリカ軍基地で何でもありの沖縄県と似ている事例だと感じました。


著者は元新聞記者なのですから、できれば静岡県のリニアに反対している論点を一つひとつ論理的に解説し、矛盾点を明確にしていただくと、よりよい本になるのではないかと感じました。小林さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・静岡県から提示された47項目の課題・・・生態系保全のための「地下ダム」建設・・生物多様性専門部会で全く議論されなかった「地下ダム」を、静岡県は47項目の課題の一つに入れてしまった(p71)


・大井川氏類関係協議会を主催した難波氏は「現状では南アルプストンネル工事を認めることはできない」という見解をまとめた・・・工事中のトンネル湧水全量の戻し方について解決策が示されていない。水温を含む水質への影響、発生土の処理方法などの議論も十分に行われていない(p155)


▼引用は、この本からです
「知事失格 リニアを遅らせた川勝平太 「命の水」の嘘」小林一哉
小林一哉、飛鳥新社


【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

1章 川勝知事「命の水」の真っ赤な嘘
2章 静岡県庁のごまかし全内幕
3章 県庁ぐるみの著作権法違反事件
4章 川勝知事の暴言録
5章 国交省の愚かな"敗北"
6章 確執の根源 静岡空港新駅



著者経歴

小林一哉(こばやし かずや)・・・1954年静岡県生まれ。1978年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。政治部、文化部記者などを経て、2008年退社。現在、「静岡経済新聞」編集長、久能山東照宮博物館副館長、雑誌「静岡人」編集長


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