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【書評】「心。人生を意のままにする力」 稲盛 和夫

2026/08/13公開 更新
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「心。人生を意のままにする力」 稲盛 和夫


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー


「利己」から「利他」の心へ

京セラを創業し、破綻したJALを再生した故稲盛和夫氏が、「人生で起こってくるあらゆる出来事は、自らの心が引き寄せたものだ」と伝える一冊です。


稲盛氏が会社員時代、会社に不平不満ばかり唱えていたときは何事もうまくいかなかったのに、前向きに仕事に没頭し出したとたん、人生の流れが追い風に変わったという。


その後、稲盛氏は「自らの技術を世に問うため」に京セラ創業しますが、直後に若手社員が昇給を含めた要求書を突きつけてきました。稲盛氏は考え抜いた末に、「全従業員の幸福」を京セラのミッションに決めたのです。


稲盛氏は、この時、会社経営の目的が「利己」から「利他」に変わっていなければ、京セラが大きく発展することはなかったであろうと振り返っているのです。


もっとも崇高で美しい心・・それは、他者を思いやるやさしい心、ときに自らを犠牲にしても他のために尽くそうと願う心です・・仏教の言葉で「利他」といいます(p19)

企業経営にはフィロソフィが重要

稲盛氏が経営破綻した日本航空の会長に就任した際、経営幹部を集めて一ヶ月で集中的に勉強会をするという計画を立てました。


社内には会社の存亡の危機に、幹部全員が集まって週に何日も悠長に勉強会をすることに大きな抵抗があったにもかかわらず、稲盛氏は実行したのです。


勉強会で稲盛氏は、「仕事に打ち込む」「感謝の気持ち」「謙虚で素直な心をもつ」といったフィロソフィを説きました。「なぜこのような子どもじみたことを、いまさら学ばなければならないのか」と反発する幹部が少なからずいたという。


そうした人に稲盛氏は、「みなさんが幼稚といい、当たり前という、これらの考え方を、みなさんは知識としてもっているかもしれませんが、けっして身についてはいないし、実践もできていません。それが会社を破綻に追い込んだ元凶なのです」と伝えたのです。


稲盛氏は、スポーツを例に、技量がぬきんでいるからといって人格のともなわない人をキャプテンに就けたら、そのチームは統一性や一体感を欠いて、決して強い集団にはなりえないと書いています。


つまり、当時の日本航空の経営幹部は頭は良いかもしれないが、人格が伴っておらず、そのために会社の統一性や一体感を欠いて日本航空は経営破綻したと指摘しているのです。


日本航空の会長に就任した際、私はすべての従業員に向けて、次のような言葉を紹介しました。「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」・・・中村天風の言葉で、かつて成長を続けていた京セラにおいて掲げたスローガンでもあります(p24)

苦難は成功への門、不満は地獄への門

著者は仏教の考え方を引用し、「怒り」「欲望」「愚痴」が、心を濁らせ、惑わせるとしています。私たちは、うまくいかないと怒り、現状に不平不満をもらしがちです。


京セラを創業した稲盛氏の初めての注文は、松下電器産業グループからでした。しかし、その注文は品質・価格ともに実に厳しいものだったという。同業者のなかには「下請けいじめに等しい」と、いつも不平不満をこぼしている人もいたというのです。


しかし、稲盛氏は無理難題のような注文でも、注文をし続けてくれる松下さんのためならばと、厳しい価格をそのまま受け入れ、採算のとれるように知恵を絞り、努力を重ねたという。その結果、京セラがアメリカへ進出したとき、京セラの製品は品質・価格の両面で、ライバル企業を凌駕していたのです。


京セラは新しいセラミック製品を次々に生み出していきましたが、そのほとんどが未知の領域のものでしたが、ほとんど開発を成功したという。稲盛氏は、その秘訣、「あきらめない」ことというのです。


つまり、その製品開発が絶壁に見えたとしても、瞬時に「乗り越えられる」と自分にいい聞かせて、一歩を踏み出せるかどうかが勝負であると。「自分なら登っていけるはずだ!」と思えるかどうか。わずかその一歩の差が、運命を大きく変えてしまうというのです。


苦難に見舞われようとも、自らの運命、境遇を素直に受け止め、耐え忍びながらも明るく懸命に努力を重ねる。そういう人の人生は大きく拓けていきます(p36)

心を高める・魂を磨く

稲盛氏は、心を磨き、人格を高めるために私たちにできることは、「利己の心」をできるかぎり小さくし、「利他の心」をできるだけ大きくすることだといいます。


そして、よいときも悪いときも感謝の思いで受け止める。稲盛氏は自分に災難が起こったときには、業が消えたと「喜ぶ」べきことだと、人生の師に学んだという。


また「利己の心」をもつ人が現れたら、かかわりをもたずに離れることが重要だという。相手に反応して、相手を批判するようなことをすると、同じレベルにまで落ちていってしまうというのです。


レベルの高いお話でした。稲盛さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・人生の目的とは、まず一つに心を高めること。いいかれば魂を磨くことにほかなりません(p29)


・何をいうかよりも、だれがいうかのほうが大切で、立派だと思われていない者が立派なことを説いたところでまったく説得力はありません(p171)


・動機とは、いわば物事を進めるときの「土台」ともいうべきもので、揺るぎない強固な土台があれば、そこには立派な建物を建てることができる(p67)


・強い意思を抱き、そして明るい希望を心に抱きながら、絶え間ない一歩を確実に進んでいく。すると、まったく八方ふさがりに見えた道でも、山を登っていて一気に視界が開けるように、それまで抱いていた悩みや疑問が一瞬のうちに氷解することがあります(p124)


▼引用は、この本からです
「心。人生を意のままにする力」 稲盛 和夫
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稲盛 和夫 (著)、サンマーク出版


【私の評価】★★★★★(90点)


目次


第1章 人生の礎を築く。
第2章 善なる動機をもつ。
第3章 強き心で成し遂げる。
第4章 正しきを貫く。
第5章 美しき心根を育てる。


著者経歴


稲盛和夫(いなもり かずお)・・・1932年、鹿児島生まれ。鹿児島大学工学部卒業。1959年、京都セラミック株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、1997年より名誉会長。また、1984年に第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。2010年には日本航空会長に就任。代表取締役会長、名誉会長を経て、2015年より名誉顧問。1984年には稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。


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