【書評】「億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド」田中渓
2025/09/19公開 更新
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
ゴールドマン・サックスで出世する方法
ゴールドマン・サックス証券のマネージング・ディレクター(部長クラス)となり、投資部門の日本共同統括まで出世した著者の仕事術を教えてもらいましょう。
ゴールドマン・サックス時代に入社して数年は、月曜日から金曜日までデスクの下の寝袋で寝ていたという。著者の上司からの信頼を獲得する方法は、圧倒的なスピードで、量を重ねることです。質は、結果としてついてくるという。
スピードでいえば、資料を作成するなら、期限の1割くらいの時間で、骨子をつくって上司に提出します。3割の時間で、半分くらいのもの、期限に半分くらいの時間で8割のものを提出するようにしていたという。
また、頼まれてもいないのに毎回、上司との打ち合わせのメモを作成して上司に送ること。頼まれてもいないのに、上司との顧客訪問では、事前に顧客の財務情報や中期経営計画、ニュースリリースなどを紙1枚にまとめて渡すこと。
このように上司のニーズを先読みし、情報提供することで、上司の信頼を勝ち取り、結果して出世してきたのです。
とにかく圧倒的なスピードで、死ぬほど量を重ねる。質は、結果としてついてくるもの(p57)
著者の毎日のルーティン
著者は自分に必要なタスクを習慣とするエキスパートだと思いました。毎日、〇時に〇分必ず〇〇すると決めたら、スケジュールに書き込んで予定をブロックし、必ず実行するというのです。
著者の毎日のルーティンは、朝3時45分に起床して、その日の予定を把握し、メールにざっと目を通すこと。そして、そのまま「25km走る」か「60km自転車に乗る」か「7000m泳ぐ」かいずれかのトライアスロンの練習を行います。
すると不思議なことに、走り終わった頃には、その日1日にすべき仕事の段取りがすべて頭の中でまとまっているという。
午前中はそれをアウトプットし、午後は人に会ったり、報告を受けたりというインプットの時間にするのです。これら習慣術は、めちゃくちゃ忙しいゴールドマン・サックス時代に確立したようです。
例えば、打ち合わせは特定の日に寄せて、作業だけの日を作る。そして、資料をつくるときは携帯の電源を切る。
クライアントの訪問に行く移動中は、英語の勉強をするため、必ず移動にタクシーを使い、30分間、オンライン英会話をする。現在でも、毎日、語学学習のアプリを20分やるという。
「電車に乗ったら、英語アプリ」「家事をするときに、ニュースポッドキャスト」「朝起きてからすぐ、15分間動画を見ながらヨガ」」など、毎日の生活のなかで必ずおこなうアクションに絡めて条件反射で行動(p178)
富裕層の特長
富裕層としては、金融エリート系とベンチャー経営者系を紹介しています。
金融エリート系の富裕層は、投資銀行や戦略コンサル会社を渡り歩き、完全成果報酬型のファンドへ転職し、富裕層の仲間入りしたパターン。
ベンチャー経営者系は、自分で事業を立ち上げ、運営、売却などして財産を作った人です。いずれも億を稼ぐには、億を稼ぐ可能性のある行動をしていくことが必須となります。
例えば、金融エリート系なら、MBA取得の募集枠があったら手を挙げる。ベンチャー経営者系なら知人が起業して誘われたら、参加してみるなどです。
つまり、大きく成功したいなら、失敗のリスクを引き受けて挑戦するしかないのです。挑戦さえすれば成功の可能性が生まれ、しかも挑戦すれば経験値は自分の中に残るのです。
お金持ちにお金が集まるといわれるように、お金を使って自分のレベルを上げると、人脈のレベルも上がってきて、チャンスも増えていくのです。
90%の確率で100万円儲かるけれど、10%の確率で500万円損します・・この投資の期待値は・・40万円とプラスになるので、理論的にはやるべきものです。ところが、多くの人は・・投資をしない選択をします(p137)
当たり前のことを当たり前にやり切る
その他お金の知恵としては当たり前の内容ばかりでしたが、成功するには、「どこかの本に書いてあるような、当たり前のことを当たり前に、でも圧倒的にやり切っているだけ」と断言しているところが素晴らしいと感じました。
また、お金を持っていれば立派なわけでも、偉いわけでもなく、単にお金の悩みから解放され、人生の選択肢が増え、精神的にも豊かな選択ができる環境が整うのです。
現在の著者は、人生の満足度を上げるものにお金をかけているという。それは、好きなコンサートへの参加だったり、トライアスロンレースに出るための旅費や道具だったり、美味しい食事やお酒にだったりするのです。
盛り盛りに出し切った内容でした。田中さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・多くの富裕層はセミナーには行きません。興味のあることは、まずは自分で広く浅く調べ、その後深堀し、それでもさらに深堀りしたい場合は、人脈を駆使して直接聞いてしまいます・・その分野に関する本を2~3冊読みます(p216)
・富裕層・・必ずしもお金を増やすための投資ではありません。社会への還元を目的とした投資や・・お金が循環する過程でモノが動き、雇用が創出されてヒトが動く・・誰かにチャンスを与えるために資本提供する(p149)
・「人間関係」の不安を解消するには、「所属するコミュニティを複数持っておく」こと(p269)
▼引用は、この本からです

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田中渓 (著)、徳間書店
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
Chapter1 年収1億円以上「富裕層の思考」
Chapter2 富裕層だけが知っている「お金の哲学」
Chapter3 お金がお金を生む「お金の使い方」
Chapter4 とんでもなく稼ぐ人の「時間の使い方」
Chapter5 普通の人でも実践できる「億稼ぐ人の生活習慣」
Chapter6 一生お金に困らない人の「人間関係の築き方」
著者経歴
田中渓(たなか けい)・・・1982年 横浜出身。上智大学 理工学部物理学科卒業。同大学院に進学し、外資系の世界を目指し始め急遽渡米。大学院中退後53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券に2007年に新卒入社。間もなくリーマンショックでボーナスゼロ、大幅減給、在籍部署の9割人員削減のどん底を経験。投資部門で500件以上の投資案件に携わり、60件以上の投資案件を実行。投資規模は投資金額ベースで約4000億円を超える。マネージング・ディレクターに就任し、投資部門の日本共同統括を務め、2024年に同社を退社。在籍17年間で20ヵ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと交流をする中で、富裕層の哲学や思考、習慣などに触れ、その生態系を学ぶ。退社後は少数精鋭の投資会社にて勤務。同社の不動産投資の責任者を務める。
ゴールドマン・サックス関連書籍
「億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド」田中渓
「きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」」田内学
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