【書評】「プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」」野口 悠紀雄
2026/07/25公開 更新
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【私の評価】★☆☆☆☆(57点)
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要約と感想レビュー
金融緩和で日本が貧しくなった
2023年の本でタイトルどおり、「日本が貧しくなったのは、アベノミクスと大規模金融緩和が原因だ!」と主張する一冊です。
著者のロジックによると、円安が原因で日本の物価上昇率が3%を超え、賃金上昇率はそれに追いつかず、実質賃金は下落し、日本が貧しくなったというのです。「日本が貧しかった時代に舞い戻ってしまった、なんとにっくき円安だろう!」と著者は感情的に読者を煽っています。
直感的に著者の間違っている点が、2つ思い浮かびました。一つは円安は国家全体ではプラスになるという視点。また、賃金が上昇するのには時間がかかるのでタイムラグをまったく考慮していない点です。実際、2026年に実質賃金はプラスに転じているのです。
著者は大蔵省OBで、東京大学教授などを歴任しているので、こんな基本的なことがわからないはずがありません。わからないとすれば、大学教授として失格だし、わかっているとすればアベノミクスを叩きたいという財務省OBの本能がそうさせているのでしょうか。
なお、著者もバカではないので、円安によって上場企業が利益をあげたと書いています。ただし、好決算だったのは上場大企業だったことに注意が必要だとし、零細企業は原価高騰を転嫁できず、営業利益がマイナスになった企業が多いと書いています。やはり財務省OBとして財務省の主張を並べているだけなのでしょうか。
日本の貧しさが、さまざまなところで目につくようになった。アベノミクスと大規模金融緩和が行われたこの10年間の日本の凋落ぶりは、目を覆わんばかりだ(p3)
社会保障のため消費増税が必要
賃金停滞問題は30年近くにわたって続いており、日本は貧しくなった!とアベノミクスを叩いた後で、著者は社会保障のため消費増税が必要と主張しています。このままでは、厚生年金の積立金が2040年に底をつき、財政破綻するというのです。
そもそも厚生年金は保険ですので、収入と支出をバランスさせるような仕組みであり、収入が減れば支給も下がるのです。破綻するはずがないのに、財政破綻を主張するのは大学教授としていかがなものでしょうか。
日本は貧しくなった!と主張する一方で、「年金支給開始年齢引き上げが必要」と著者は主張しています。支給年齢が引き上げられれば、高齢者が貧しくなるのに、財務省の方針だけには賛成のようなのです。
著者は防衛費の増額や少子化対策についても、消費増税以外の財源探しを批判し、「消費税増税が封印されているので、おかしな財源探しが必要になる」と書いています。消費増税したことで消費が減少し、税収が減ったこともあるのに、「財源!財源!」と消費増税に固執するのは、何か腹にあるのでしょうか。
社会保障制度そのものの財政が問題になる。消費税の増税は、避けて通れない課題なのである。今回、増税を避けて財源を調達しても、一時的なことに過ぎない。それは、未来に対する責任を回避すること以外の何物でもない(p164)
日本がダメになった理由
著者は日本がダメになった理由を、日本の経済・社会の構造が世界の大きな変化に対応できなかったためだとし、デジタル化への転換を提案しています。さらに、日本の大学の質が低下し、円安で利益が上がるため、企業が技術開発を怠ったと批判しています。著者も大学教授でしたので、日本の大学の質の低下の一翼をになってきたのでしょう。
そもそも、日本経済が30年以上停滞したのは、財務省が不動産融資に関する総量規制でバブルを崩壊させ、その後も日本銀行に金融引き締めを継続させ、デフレの中で消費税率引き上げを続けてきたからでしょう。今必要なのは、国税庁と日本年金機構を統合して歳入庁を作るなど、財務省の構造を改革することでしょう。
著者が日本経済論の専門家とは思えませんでした。野口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・いま必要なのは、補助ではなく、産業構造と社会構造を改革することだ(p7)
・2022年の粗利益は、前年より。495%も増えた・・・給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった・・・労働者は「損をした」ことになる(p111)
・金融資産所得の課税強化に対しては、金融機関からの強い反対がある。だから、政治的に難しい(p163)
▼引用は、この本からです

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野口悠紀雄 (著)、朝日新聞出版
【私の評価】★☆☆☆☆(57点)
目次
第1章 気がつけば、「プア・ジャパン」
第2章 昔はこうでなかった
第3章 これから賃金は上がるのか?
第4章 増大する財政需要と政治家の無責任
第5章 デジタル化の遅れが日本の遅れの根本原因
第6章 高度人材を日本に確保できるか?
第7章 日本再生のエンジンは、デジタル人材
著者経歴
野口悠紀雄(のぐち ゆきお)・・・1940年、東京生まれ。1963年、東京大学工学部卒業。1964年、大蔵省入省。1972年、エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。
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