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「佐藤一斎「言志四録」を読む」神渡 良平

2022/06/17公開 更新
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「佐藤一斎「言志四録」を読む」神渡 良平


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

 佐藤一斎とは江戸幕府の唯一の大学であった昌平坂(しょうへいざか)学問所のトップとなった儒学者で、今でいえば東京大学総長にあたる人です。佐藤一斎に学んだ人物としては佐久間象山、安積艮斎(あさかごんさい)、大橋訥庵(とつあん)、横井小楠(しょうなん)などがいるという。


 『言志四録』(げんししろく)とは、この佐藤一斎が後半生に書いた語録を集約したものであり、時代も幕末の混乱期であり、武士の精神的支柱とでも言えるものなのです。特に有名なのは、西郷隆盛が『言志四録』から101項目を抜き書きして、座右の書としていたということでしょう。江戸の無血開城、廃藩置県など内戦にもなりかねない決定を押し通せたのは、私心を捨てた西郷隆盛がいたからとも言わているのです。『言志四録』で貫かれているのは、自分の使命を知るということ。私心を捨て、天のために生きるということなのです。


・自ら欺(あざむ)かず。これを天に事(つか)えるという・・・人はごまかすことはできても、自分はごまかせない(p67)


 現代で言えば、「二度ない人生をどう生きるのか」という問いだと思いました。著者も38歳のときに脳梗塞で倒れ、右半身に麻痺が残り、寝たきり生活になってしまいました。著者はベッドの中で考え、本を読みました。そうした中で「論語」の中で「命を知らざれば、以て君子たること無きなり」という言葉と出会ったのです。


 著者は「自分の使命とは何だろう?」と考え続け、安岡 正篤(まさひろ)の高望みをせず、足下の一隅を照らそうと努力することが大切だよという言葉に衝撃を受けたという。多くの人は、三十歳くらいになって世の中が見えるようになると、本を読んだり人から影響されて、「自分はどう生きるのか?」と考えるようになるのでしょう。


・人生を失ってしまうような存亡の危機に立たされると、果たして私の人生はこれでよかったのかと、深刻に考え始める(p102)


 現代社会では、法律にひっかからず、金さえ儲かれば何をしても良いのだ、という風潮があるように思えます。確かにお金こそが資本主義のドライバーであるのですが、金はあくまで道具であり、金を超えたところに道があるというのも事実なのでしょう。


 人として今の時代に生まれた自分自身をどう活かしていくのか、という問いにどう答えるのか。それに対して自分がどう動いたかは、自分だけでなく「天」が知っているというのが『言志四録』の教えです。自分の欲に流されず、自分の「志」に従えということで、一種の宗教的とさえ言える内容だと思いました。


 神渡さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・人は誰でも次のことを反省し考察してみる必要がある。天はなぜ自分を生み出し、何の用をさせようとするのか(p53)


・ただのスクラップ係になるか、それとも日本一のスクラップ係になるか、決めるのは君だ(永野重雄)(p108)


・口先で諭そうとしても、人は決して服しない。自ら実践すれば、人はならってついてくる(p160)


・人間には善悪を判断できる本来の自分と、体に拘束された仮の自分とがある。このように自己が二つあることを認めて、仮の自分のために真の自分を駄目にしてはならない(p176)


・人の一生には順境もあれば、逆境もある。栄枯盛衰の理で、少しも怪しむに当たらない。逆境にあたってはやけくそを起こさず、順境にあっても怠け心を起こさない。ただ敬の一字をもって終始一貫するだけである(p46)


▼引用は、この本からです
「佐藤一斎「言志四録」を読む」神渡 良平
神渡 良平、致知出版社


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1章 『言志四録』に鍛えられた人々
第2章 志を養う
第3章 自己を鍛える
第4章 人生、二度なし!
第5章 運命を切り拓く



著者経歴

 神渡良平(かみわたり りょうへい)・・・昭和23(1948)年、鹿児島県生まれ。九州大学医学部中退後、さまざまな職業を経る。38歳のとき、脳梗塞で倒れ右半身不随に陥り、闘病生活の中で、「人生は一回しかない」ことを骨の髄まで知らされる。懸命なリハビリによって社会復帰できたが、そのときの「貴重な人生を取りこぼさないためにはどうしたらいいか」という問題意識が、作家となった現在、重低音のように全作品を流れている。日本文芸家協会会員


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