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「敗れざる者」神渡 良平

2013/09/24公開 更新
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敗れざる者


【私の評価】★★★☆☆(74点)


要約と感想レビュー

 ダスキンの創業者 鈴木清一の物語です。すべてのはじまりは、一燈園という新興宗教との出会いからはじまります。一燈園では、「修行のために、お便所の掃除をさせてください」と、一週間、個別訪問をするのです。


 ほとんどの家は迷惑がりますが、中には便所掃除をしれたかわりに、食事や宿泊を許してくれる家もあるのです。この経験が、お役に立てば、こっちも恵まれるという清一の確固たる仕事観を作ったようです。


・訪問販売を心の底から「喜びのタネまき」と捉えることができるようになったのだ。もちろん「喜びのタネまき」という言葉はダスキンの前身であるサニクリーンを立ち上げたときからスローガンとして掲げてはいた。(p288)


 その後、ワックスを売る商売や、靴クリームを売る商売をはじめたときも、利益は二の次。人のお役に立つことだけを目的として、事業を行いました。これは宗教的な確信を持った「祈りの経営」とでもいうべきものでしょう。その商売は、大きくなっていくのです。


 金を儲けようとすると儲からない。お役に立とうとすると発展するという世の中の真理に、鈴木清一は気づいたのです。


・世の中には儲けようと体を張ってがんばっても、欲では儲からない世界があることを知りました。私はこの会社を、儲けたとしても決して欲張らない会社にしたいと思います。この会社が少しでも世の中のお役に立つのでしたら、どうぞ発展させてください。(p135)


 そうした中、清一はアメリカのジョンソン社と資本提携を行います。鈴木清一が60%、ジョンソン社※が40%。しかし、人を疑わない清一は、その後の増資話にもイエス、イエスを連発し、結果して鈴木清一の持ち株比率は低下し、清一は経営権を失うことになりました。会社はジョンソン社に支配されることになったのです。


 自分の会社を失った清一は、そのままでは終わりませんでした。ダストコントロール事業、ダスキン事業に乗り出すのです。ダスキンでは「祈りの経営」を標榜し、お役に立つ喜びを経営理念として発展していくのです。


・清一が後に「祈りの経営」の基本理念「ダスキン悲願」の中にいれることになる「商いを通じて人と仲良くなり」は、このときすでに萌芽が見られ、「働くことが楽しみであり、利益は喜びの取引から生まれますように」をモットーにセールスしていたのだ(p57)


 訪問販売とフランチャイズのダスキンは、一つ間違えれば、押し売りやネットワークビジネスと同じものになってしまうような仕組みです。ダスキンを発展させたのは、創業者である清一が「人と人のつながりが喜びを作る」と真剣に取り組んでいただからでしょう。


 すべてを捨てた創業者の想いが、事業を大きくしたように感じました。神渡さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・新しい会社のモットーは『喜びのタネをまこう!』としました。愚かな私どもでございますが、いのちをかけて精進したいと存じますから、どうぞお光の力でもってお護りください(p14)


神に生かされているのだと思うと、一日一日が尊く、いま生きて力いっぱい仕事をすることがうれしくてならないのだ。朝は5時半に起床して、教会に朝参りする・・(p56)


・自利も利他もひとつの行為の両側面なのであって、本来ひとつなんだ。これを商いに置き換えると、自分も儲かり、相手も儲かることではないか!(p117)


・仕事の第一は人間をつくることであり、働くことが楽しみであり、利益は喜びの取引から生まれる(p150)


仕事をしながら魂を磨くんです。単調な仕事はじき飽きがきて、こんな仕事は誰でもできるとあほらしくなるもんですが、単調な仕事を無心にやれるようになればなかなかのもんです(p92)


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【私の評価】★★★☆☆(74点)



目次

第1章 敗れざる者の日本武道館大会
第2章 母のそよ風
第3章 青春の彷徨
第4章 『懺悔の生活』に導かれて
第5章 托鉢という修行
第6章 拝み合う会社
第7章 商業界ゼミナールと盟友・西端行雄
第8章 庇を貸して母屋を取られる
第9章 天香の諭し
第10章 隆盛するダスキン
第11章 花開くミスタードーナツ
第12章 不死鳥のごとく


著者経歴

 神渡 良平(かみわたり りょうへい)・・・1948年鹿児島県生まれ。九州大学医学部中退後、新聞記者、雑誌記者を経て独立。38歳の時、脳梗塞で倒れ、右半身不随に陥る。闘病生活の中で、「人生は一回しかない」ことを知り、、先人の知恵の大切さに気づく。懸命なリハビリによって社会復帰し、作家となり、一度しかない人生をどう生きるべきかを書き続ける。


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