「社員の力で最高のチームをつくる1分間エンパワーメント」ケン・ブランチャード
2022/01/31公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(89点)
要約と感想レビュー
ブランチャードさんの1分間シリーズの中から今回はエンパワーメントです。エンパワーメントとは日本語で、社員のやる気という感覚でしょうか。この本では社員に情報を与え、社員に判断させることによって、社員が改善や仕事のやり方を変革していく組織を目指すものとなっています。日本の会社では基本的にボトムアップが多いと思いますが、情報を幹部だけで限定したり、人事の関係から自部門のことばかり考えるタコつぼ組織になっているところもあるように感じます。
この本にあるように情報を公開して、部門の壁を破って活動するクロスファンクショナルチームを動かしていくためにはどうしてもトップの決断、リーダーシップが必要になるのだと思うのです。ただし、情報と権限を移譲されたチームは最初のうちは猜疑心から自らのパワーを発揮しなかったり、経験不足から失敗することもあります。エンパワーには時間がかかるし、うまくいったら褒めて伸ばしてやる必要があるということです。
・エンパワーメントとは、『社員がもっているパワーを解き放ち、それを会社の課題や成果を達成させるために発揮させること』(p30)
星野リゾートでは、この本の内容を活用して、顧客満足度調査結果を社員に公開したら、「料理がまずい」と評価された板長が、目の色を変えて料理を改善していったという。顧客満足度の数字がどんどんよくなっていくのをみんなで褒め合って星野リゾートのサービスはどんどん良くなっていきました。
ところが、改善が進んでいくと、今度はサービスをもっと良くするために設備を買い換えたい、新しい備品を買いたいという声が出てきたというのです。お金をかければ、確かに顧客満足度は高くなりますが、会社の利益は減ってしまいます。そこで、星野リゾートでは、会社の会計データを社員に公開することにしたのです。するとその収益率の低さにショックを受けたのかサービスの質を落とさずにコスト削減する提案が出てくるようになりました。情報さえ与えれば社員は自ら考え、行動するわけです。
・社員がもっとも必要としている情報は、会社が置かれている状況についての情報です。利益は?・・・マーケットシェアは?生産性は?不具合や問題は発生していないか?(p55)
京セラのアメーバ会計を思い出しました。アメーバ会計でも同じように小さい組織単位で経営情報を共有して、小さい組織のリーダーに社長のように仕事をしてもらうことを目指しているのです。どれだけ経営情報を透明化できるのか、経営指標として何を基準とするのかが重要です。自分の仕事を通じた改善が数字として指標に現れなければ、やる気は出ないからです。ちなみに星野リゾートでは、顧客満足度調査の数字と利益を指標としているとのことです。
ダイエットでも体重や食べたものを記録するだけで、体重が減るといわれていますので、適切な情報と権限を与えれば人は自ら動き出す能力を持っているのでしょう。星野リゾート躍進の原動力となった名著だけあると思いました。ブランチャードさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・上司の新しい役割は・・・部下が才能とエネルギーを伸ばすことを助け、彼らが会社のゴール達成に向けて効果的に働けるように支援することです(p45)
・仕事を10個書き出す・・・部下が自分の仕事だと認識していることと、部下が当然やってくれると上司が期待していることとのあいだには、しばしば食い違いがあるのです(p79)
・継続的な改善と継続的なイノベーションを望んでいるのに、失敗を責めたりしたら、イノベーションの機運を摘み取ってしまいます(p132)
▼引用は、この本からです
ケン・ブランチャード, ジョン・P・カルロス,
アラン・ランドルフ、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(89点)
目次
1 どうすれば会社はよくなるのか
2 エンパワーメントの3つの鍵
3 3つの鍵を実践してみよう
4 成功はすぐそこにある
著者紹介
ケン・ブランチャード(Ken Blanchard)・・・ケン・ブランチャード社の共同創業者にしてCSO(最高精神責任者)、フェイスウォーク・リーダーシップ・センター会長。リーダーシップ養成教材「Situational Leadership(SL=状況対応リーダーシップ)」の共同開発者のひとりで、これは現在市販されている教材のなかでも最も実用性と効果の高いものとして、広く利用されている。コーネル大学で博士号を取得。現在も同大の講師、名誉理事を務める。W・エドワード・デミング、ピーター・ドラッカーなども受賞した権威ある国際経営協議会のマクフェリー賞を受賞するなど、数々の名誉を受けている。
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