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「やってはいけない原発ゼロ」澤田哲生

2020/04/01本のソムリエ メルマガ登録
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「やってはいけない原発ゼロ」澤田哲生


【私の評価】★★★☆☆(78点)


内容と感想

 原子力は必要であるということを,エネルギーセキュリティ・リサイクル・気候変動の視点で主張する一冊です。私は原子力については中立ですが,デメリットとメリットを比較して考えるべきことなのでしょう。


 原子力を廃止したときのデメリットを考えてみましょう。そもそも原子力は,石油が禁輸された過去の経験から,エネルギー多様化のために導入されたものです。エネルギー源が一つ減ることになります。


 原子力を停止することで燃料輸入量は年2~4兆円増えたので,原子力を運転しないことで燃料費だけで消費税を1~2%増税したのと同じ電気料金上昇となります。(電気料金の10~20%上昇)


 さらに原子力を廃止するとすれば、原子力発電所建設に銀行から借りた資金を返済するために、電気料金で回収することになります。


・日本にとって第二次世界大戦は,石油を確保するための戦争でした・・・1941年8月には,日本に対して石油の全面禁輸が実施されました(p20)


 原子力を廃止したときのメリットはどうでしょうか。


 まず、放射線の恐怖がなくなります。事故により福島第一原子力のように都市がロックアウトされる恐怖がなくなります。


 ただ、この放射線への恐怖は,風評被害に似た構造のものです。見えない放射線の恐怖により都市への立ち入り制限されたり、過剰な除染が実施されたり,トリチウム放出ができない。


 もちろん放射線被ばく量は少ないに越したことはありませんが,国民感情にも配慮して、過剰に放射線を危険視し、規制されている部分もあるのです。


・2016年2月に,当時の丸山珠代環境大臣が"1ミリシーベルト"には科学的根拠がないという発言を公にし,・・結局,大臣は謝罪し,自らの発言を取り消すという結末になりました(p126)


 電力業界の課題について,原子力だけではなく再生可能エネルギーの誤解についても言及しています。


 太陽光と風力が30%程度で電力系統が維持できなくなる事実,再エネ導入で電気料金が1.5倍となり、CO2排出量が増えている欧州の現実など,もっと一般の人に知ってもらいたい論点もありました。原子力発電・再生可能エネルギーについては、事実の上に立った議論が必要だと思います。


 澤田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・原子炉の中では中性子が飛び交っていますので,重水素が中性子を取り込んで三重水素(トリチウム)になるのです。原子力発電所の場合,発生したトリチウムは管理して環境に放出されています(p165)


・太陽光と風力合わせて30%で電力システムは破綻・・・変動幅が大きくなるので,その分より多量のバックアップ電源(主に火力)が必要になります。しかも,それらバックアップ電源が実際に動いていない待機時間が増えます(p322)


・この25年余り,ドイツをはじめとするOECD諸国は,いわばがむしゃらに太陽光と風力発電の設備増強に努めてきました・・なんとOECD諸国から排出される二酸化炭素量は,過去25年間増え続けてきたのです(p324)


・再生可能エネルギーだけで電力を賄おうとすると・・莫大な容量の蓄電池が必要になってきます・・リチウムイオン電池の火災・・・NAS電池の火災(p311)


・史上最悪の化学工場事故がインドで起こりました。1984年のことです・・・ボパール市の市街地で大量の有毒ガスが漏れ出てしまう・・即死者は3000人以上発生したといわれています(p118)


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「やってはいけない原発ゼロ」澤田哲生
澤田哲生、エネルギーフォーラム


【私の評価】★★★☆☆(78点)


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目次

第1章 なぜ私は原子力をやり続けたほうが良いと思うのか SDGsから見る
第2章 小泉さんの著書『原発ゼロ、やればできる』のどこがおかしいのか
第3章 安全性は格段に向上したのか?
第4章 原子力事故のみが最悪なのか?
第5章 LNT仮説は科学的に見て正しいのか?
低線量放射線被ばくの影響のパラダイムシフト
第6章 トリチウム処理水問題
地球が誕生した時からトリチウムはどこにでもある
第7章 日本に核のごみの最終処分場は本当にないのか?
第8章 水力発電は日本を救えるのか?
竹村公太郎著「水力発電が日本を救う」への反論
第9章 小泉さんの「原発ゼロ」の背景とねらい
第10章 世界はすでに脱・脱原発に向かっている
中国は第4世代の原子力開発で先陣を切る勢い
第11章 太陽光発電や風力発電のかかえる大問題
第12章 クリーン電力100%市場は原子力なしでは成立しない
第13章 エントロピーそしてエネルギー収支比


著者紹介

 澤田哲生(さわだ てつお)・・・1957年、兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員をへて現在、東京工業大学原子炉工学研究所助教。専門は原子核工学。原子力立地地域の住民や都市の消費者の絆を紡ぐ『つーるdeアトム』を主宰。


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