「空海の風景(上巻)改版」司馬 遼太郎

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空海の風景〈上〉 (中公文庫)

【私の評価】★★★★☆(85点)


■高野山へ行ったので、弘法大師、
 空海を知らなくてはならないと
 手にした一冊です。


 これは小説なのでしょうか。
 司馬遼太郎が空海について徹底的に
 調べ、その人生を浮かび上がらせた
 調査報告書に思えました。


 空海は四国の讃岐国に生まれ、
 讃岐国の国学に学びました。
 そこで儒教と道教と仏教を
 比較する物語を書いています。


 現代でいえば、単純に自己啓発本を
 書くのではなく、わかりやすく
 小説形式で書いたということでしょうか。


 空海の天才性の一端が
 現れているように思います。


・空海の年少のころは修学生であった・・・
 わざわざ演劇的構成でもって『三教指帰』を
 書くことによって、かれが大学で学ばされて
 いる儒教と道教と仏教の三者の優劣を比較し、
 結論として仏教のほうが他の二者よりはるかに
 すぐれているということをひき出すのである(p58)


■空海は24歳で学びの場を離れ、
 放浪の旅に出ています。


 その放浪の7年間は記録がないものの
 31歳で唐に渡る前には
 漢語がペラペラで、漢人が驚くような
 文と書を書くことができた。


 日本における独学だけで
 漢語を完璧に仕上げるのは
 これもまた空海が天才と言われる
 所以なのでしょうか。


・この七年間のあいだにかれは山林において
 修行しつつも・・・諸寺を歩き、
 その経蔵に籠り、文字どおり
 万巻の経典を読んだらしい(p154)


■空海という天才は、通常20年間
 中国で学んで帰国するものを
 2年で帰国しています。


 それも真言密教の正統な後継者として
 認められたうえで、その体系全体を
 引き継いできたのです。


 これも空海の天才性、奇跡と言えますが、
 空海が日本においていかに学び切り、
 学問的に完成していたということ
 なのでしょうか。以下下巻に続く。


 司馬さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・この時代に、地方に国学という教育機関があり、
 中央に大学があった・・・
 教授は国博士とよばれた。一人いる・・・
 讃岐国では、「聖堂」と、
 俗によばれていた(p39)


・奈良朝以来、庶民にして耕作からのがれるべく
 勝手に頭を剃って山林に遊行し、私度僧になって
 里人に食を乞うという安易な暮らしをする者が多く、
 歴朝は官僧以外には認めずとして庶民の私度を
 禁止ずるのに躍起になってきた(p99)


・一沙門が空海に伝授してくれたのは、
 あるいはこの当時とすればきらびやかな
 科学としてであったにちがいない。
 つなり、ある真言を、ある場所へゆき、
 そこで一定の時間内に百万べん
 となえるというものである・・
 八万四千といわれる経文を意のままに
 暗誦できるようになる(p107)


・空海のほうは、「密教こそ仏教の完成した
 かたちである」として最澄の体系に対抗し、
 しかもその自信は終生ゆるがなかった(p128)


・おそらく人類がもった虚構のなかで、
 大日如来ほど思想的に完璧なものは
 他にないであろう。大日如来は無限なる
 宇宙ののすべてであるとともに、宇宙に
 存在するすべてのものに内在していると
 説かれるのである(p141)


・『大日経』七巻三十六章は、すでにインド僧の
 手で唐の長安にもたらされ、そこで漢訳されている。
 その漢訳が完成してわずか五年後の730年に
 日本につたわっていることをおもうと、
 当時の東アジアにおける交通の活発さに
 目をみはらざるをえない(p158)


・最澄の場合、天台教学を移入することは
 国家が公認している。その経費は国家もしくは
 それに準ずる存在から出たが、
 空海はそうではない・・・遣唐使船に
 乗るにあたってかれが自前で経費を調達し、
 その金で真言密教のぼう大な体系を経典、
 密具、法器もろとも持ちかえった(p222)


・空海が真言密教を確立してのち、
 四国に多数の寺をたてたのは、
 出発前に寄進してくれた諸豪族に対して
 そのような形で還元したということも
 想像できる(p223)


・空海は表面上、二十年ということで
 国家の給与もうけ、寄進もそのつもりで
 受けていた・・かれは二年で滞留をきりげた・・
 空海が長安において潤沢に金銀を費うことが
 できたのは二十年ぶんを二年でつかいきった
 ということでもあった(p227)


・長安が世界の都であることが・・・
 かれがのちにその思想をうちたてるにおいて、
 人間を人種で見ず、風俗で見ず、階級で見ず、
 単に人間という普遍性としてのみとらえたのは、
 この長安で感じた実感と無縁でないに相違ない(p327)


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