「末広がりのいい会社をつくる 人も社会も幸せになる年輪経営」塚越 寛
2019/07/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
一人でも幸せな人を増やすこと
60年間、増収増益の会社などありえるのでしょうか?あります。寒天商品製造の「伊那食品工業」です。60年前、倒産寸前の「伊那食品工業」に社長として派遣された塚越さんは人も金も設備もなかったから、すべて自分でやったという。自分で設備を改良、倉庫を作り、営業し、商品開発しました。そうした姿を見て協力する社員も増えてきたのです。人を雇えなかったから今いる人にやる気になってもらうしか方法がなかったというのです。
塚越社長は会社経営の目的を「一人でも幸せな人を増やすこと」と定義しています。社員を幸せにすることを通じて、世の中に貢献していくというのが、会社の方針なのです。利益があるから社員に給料を払えるのであり、そのために会社は成長しなくてはなりません。会社が成長することで、社会にも貢献できるのです。そのために毎日きちんと掃除や朝礼をおこないます。いつでも気持ちのよいあいさつをする「規律」と「けじめ」で、社員にイキイキと仕事をしてもらって、会社を成長させるのです。社員全員が本当にやる気をもって働くようになったら、生産性は二~三倍に向上したという。
・人材不足だった初期のころ・・・日中は仕事をし、勤務時間を過ぎた夕方から、設備の改良や建物の修繕をおこないました・・・私のようすを見ていた社員が、少しづつ、協力してくれるようになりました・・・大がかりな設備の入れ替えも、自分たちでやり遂げました(p68)
たえず成長しつづけること
経営が安定してからも塚越社長は事業を、急拡大させることはありませんでした。夜勤で設備効率を高めることもしない。家族と過ごす時間を奪ってはならないから夜勤はやらないのです。大手スーパーからの販売依頼も断る。価格だけで仕入先を変えません。仮に仕入先に対して値引きを要求したり、安いという理由だけで仕入先を変更したりする行為は、会社の敵をつくることになるだけなのです。
これらの判断は、成長を急ぐのではなく会社に関わる人達の幸せを最大化するために、ゆっくりと成長していくという経営判断だったというのです。塚越社長はこうした方針を「年輪経営」と表現しています。大切なのは、「他社よりも大きく成長する」ことではなく、「たえず成長しつづける」ことなのです。そして「会社の成長」とは、「社員一人ひとりの人間的成長」によって自然に達成されるものなのです。
・会社には終わりがありません。ですから、成長を急ぐのではなく、働く人が幸せを感じるような会社をつくって、永続させていくことが肝要なのです(p95)
みなさんの命日はどこですか
塚越さんは優しい経営者のように見えますが、社員に掃除や挨拶を徹底させるなど厳しい面もあります。また、新入社員研修では、「100年カレンダー」を見せながら「みなさんの命日はどこですか」と問いかけ、生きる意味を考えてもらっています。
こうしたすべての取り組みや会社の方針が、この会社で一生懸命働くことが、自分たちと関わる人たちの幸せにつながるという理解が得られているのでしょう。経営判断の難しさ、大切さに気付かされる一冊でした。経営に失敗は許されないのです。塚越さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・年ごとに異なる行動指針を掲げています。これも理念の実現に向けた手段です。「どんなことにもひと工夫」「もっといい方法はないか」「みんなが経営者感覚を!」など、日々の社員の仕事ぶりや社会の動向から私が課題と感じたことを、翌年の行動指針としています(p58)
・追い風に乗って急成長し、巨大企業になってしまうと、技術革新などによって時代が代わり、ブームが去ったときに、その変化に対応することが非常に難しくなるのです(p113)
・経営とは、いわば「時代適応業」です。経営者が時代の変化を見誤れば、優れた人材がいても、すばらしい技術を開発しても、会社は生き残ることができません(p173)
▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★★(91点)
目次
まえがき あらためて、中小企業のあり方を考える
第1章 「いい会社」をめざして―会社経営の目的
第2章 年輪経営でみんなハッピー―「いい会社」の使命
第3章 遠きをはかる経営―永続のための絶えざる種まき
第4章 「忘己利他」こそ、人生のあるべき姿―幸せに向かう生き方
あとがき ぶれずに理念を伝えつづけた六〇年
著者経歴
塚越 寛(つかこし ひろし)・・・1937年生まれ。21歳で社長代行として赤字会社の伊那食品工業の建て直しに尽力する。83年社長に就任。05年会長に就任。伊那食品工業は47年間連続の増収増益を達成している。
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