「打出小槌町一番地」城山 三郎

|

打出小槌町一番地 (新潮文庫)

【私の評価】★★★☆☆(76点)


■水処理の栗田工業が
 アメリカのベンチャー企業フラクタを
 子会社化したと聞いて手にした一冊です。


 栗田工業の創業者栗田春生さんは、
 日本軍で学んだタンクの洗浄の技術を活用して、
 戦後ボイラ洗浄薬品を売り出しました。


 その創業ドラマがこの本の
 『第二章 前途洋々』に書かれてある。


 この本によれば、栗田さんは
 軍隊組織のような規律経営で
 会社を大きくしましたが、
 やる気だけが先行してうまく
 経営できなかったようです。


 小説では強気の経営が行き詰まり、
 大企業に経営を譲渡し、
 ブラジルに隠棲しています。


 現実の栗田さんは
 脱税と粉飾決算で有罪となり、
 タイのバンコクに隠棲しました。


・「無理な売りこみは、いつかボロが出ます。
 それに、かつての大本営発表のように、
 誇大戦果が報告されてきます。
 売れそうなものを売れたといったり、
 代金を回収しきっていないのに、
 回収したといったり、そうなってくると、
 数字が全部おかしくなり、会社の実態が
 つかめなくなるじゃありませんか・・・」
 「くだらん因縁をつけるくらいなら、
 もう少し売れる車をつくったらどうだ」
 (前途洋々)(p161)


■この本には東京郊外の高級住宅街
 「打出小槌町一番地」に住む経営者の
 4つのドラマが書かれてあります。


 その特徴は、お金はあるが、
 その人生、家庭は必ずしも
 平和で豊かではないということです。


 ある人は仕事第一、家庭をないがしろにし、
 ある人は家庭を持たず、金儲けに執着し、
 ある人はオーナー企業で後継者育成に苦労する。


・農地解放で、小作だった父親に土地が入り、
 さらにその土地が、新潟市の膨張によって宅地化して、
 遺産相続のときには、ミヨ子にも思わぬ大金が入った・・
 弟妹たちは、その金をなしくずしにつかってしまったのに、
 ミヨ子はまず、そっくり銀行に預け、融資と合せて、
 土地買いの資金を引き出せるようにしておいた
 (老女颯爽)(p224)


■4つの短編小説は、
 戦後の仕事と家庭の風景を
 伝えているのだと思いました。


 そして現在は、
 ワークライフバランスなどと
 言っている。


 価値観が昔から
 だいぶ変わってきたんだなと
 実感しました。


 城山さん
 良い本をありがとうございました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・軍歌のリズムは、そうした異常で、
 かけがえのない青春のリズムである。
 そこには、痛いほどはりつめた生と死があった。
 その記憶の重さに比べれば、
 いまテレビを見ているのは、
 人間の形をしたぬけがらでしかない
 (前途洋々)(p122)


・こまめに動く・・ということが、
 彼女の生涯をかけての信条である
 (老女颯爽)(p220)


・成功の秘訣は、ちょっと主義だ・・・
 料金が近所と同じときは、
 サービスをちょっとだけよくする。
 サービスの内容が同じなら、
 料金をちょっとだけ安くする
 (老女颯爽)(p229)


・働くのも、らくの中。
 人間って、働くようにできてるのよ
 (老女颯爽)(p247)


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
blogranking.png


人気ブログランキングへ


打出小槌町一番地 (新潮文庫)
城山 三郎
新潮社
売り上げランキング: 107,770

【私の評価】★★★☆☆(76点)

[Amazonで購入する]

[楽天ブックスで購入する]



■目次

第一章 御曹司
第二章 前途洋々
第三章 老女颯爽
第四章 商法489条違反



にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ第3位
にほんブログ村




この続きは無料メールマガジン 「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』:1ヶ月30冊を超える情報をe-Mailで」でお読みいただけます。

無料メルマガ購読

>月別(2002年7月~)