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「打出小槌町一番地」城山 三郎

2019/02/20公開 更新
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打出小槌町一番地 (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(76点)


要約と感想レビュー

■水処理の栗田工業が
 アメリカのベンチャー企業フラクタを
 子会社化したと聞いて手にした一冊です。


 栗田工業の創業者栗田春生さんは、
 日本軍で学んだタンクの洗浄の技術を活用して、
 戦後ボイラ洗浄薬品を売り出しました。


 その創業ドラマがこの本の
 『第二章 前途洋々』に書かれてある。


 この本によれば、栗田さんは
 軍隊組織のような規律経営で
 会社を大きくしましたが、
 やる気だけが先行してうまく
 経営できなかったようです。


 小説では強気の経営が行き詰まり、
 大企業に経営を譲渡し、
 ブラジルに隠棲しています。


 現実の栗田さんは
 脱税と粉飾決算で有罪となり、
 タイのバンコクに隠棲しました。


・「無理な売りこみは、いつかボロが出ます。それに、かつての大本営発表のように、誇大戦果が報告されてきます。売れそうなものを売れたといったり、代金を回収しきっていないのに、回収したといったり、そうなってくると、数字が全部おかしくなり、会社の実態がつかめなくなるじゃありませんか・・・」「くだらん因縁をつけるくらいなら、もう少し売れる車をつくったらどうだ」(前途洋々)(p161)


■この本には東京郊外の高級住宅街
 「打出小槌町一番地」に住む経営者の
 4つのドラマが書かれてあります。


 その特徴は、お金はあるが、
 その人生、家庭は必ずしも
 平和で豊かではないということです。


 ある人は仕事第一、家庭をないがしろにし、
 ある人は家庭を持たず、金儲けに執着し、
 ある人はオーナー企業で後継者育成に苦労する。


・農地解放で、小作だった父親に土地が入り、さらにその土地が、新潟市の膨張によって宅地化して、遺産相続のときには、ミヨ子にも思わぬ大金が入った・・弟妹たちは、その金をなしくずしにつかってしまったのに、ミヨ子はまず、そっくり銀行に預け、融資と合せて、土地買いの資金を引き出せるようにしておいた(老女颯爽)(p224)


■4つの短編小説は、
 戦後の仕事と家庭の風景を
 伝えているのだと思いました。


 そして現在は、
 ワークライフバランスなどと
 言っている。


 価値観が昔から
 だいぶ変わってきたんだなと
 実感しました。


 城山さん
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・軍歌のリズムは、そうした異常で、かけがえのない青春のリズムである。そこには、痛いほどはりつめた生と死があった。その記憶の重さに比べれば、いまテレビを見ているのは、人間の形をしたぬけがらでしかない(前途洋々)(p122)


・こまめに動く・・ということが、彼女の生涯をかけての信条である(老女颯爽)(p220)


・成功の秘訣は、ちょっと主義だ・・・料金が近所と同じときは、サービスをちょっとだけよくする。サービスの内容が同じなら、料金をちょっとだけ安くする(老女颯爽)(p229)


・働くのも、らくの中。人間って、働くようにできてるのよ(老女颯爽)(p247)


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【私の評価】★★★☆☆(76点)



目次

第一章 御曹司
第二章 前途洋々
第三章 老女颯爽
第四章 商法489条違反


著者経歴

 城山三郎(しろやま 三郎)・・・(1927-2007)名古屋生れ。本名、杉浦 英一(すぎうら えいいち)。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。一橋大学を卒業後、愛知学芸大に奉職し、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』で文学界新人賞を、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受賞し、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』の他、『男子の本懐』『官僚たちの夏』『秀吉と武吉』『もう、きみには頼まない』『指揮官たちの特攻』等。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞。


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